sさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

アル中女の肖像(1979年製作の映画)

4.5

ファスビンダーがこの世で最も美しい映画の一つに挙げていたので。
頻出するガラスと鏡のモチーフ、唐突に始まるバンド演奏、ドレスの色の変遷(赤→黄色→銀色)など、最後には銀色のドレスを纏った彼女自身が鏡の
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ベロニカ・フォスのあこがれ(1982年製作の映画)

4.5

西ドイツ版サンセット大通り。戦前ドイツに取り残された、過去の栄光に縋る忘れ去られた大女優ヴェロニカ・フォスの、悲惨な半生、破滅まで。
手前のものをぼかしたり、部屋、車のガラス越しなどカメラワークが終始
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

マサトが母親を取り戻すことは宮崎駿自身が母親を取り戻すこと。そしてマサトが母親を同じ世界へと連れては行かずに在るべき場所へと送り届けることは、宮崎駿が母親へ別れを告げることだという風に受け取った。あと>>続きを読む

激流(1994年製作の映画)

4.0

夫が小さい頃お父さんにすすめられて一緒に観たという映画を一緒に観た。終始スリリングでサスペンス的要素が散りばめられていて久しぶりに目が離せない感じの映画を観た気がする。相変わらずケヴィン・ベーコンの悪>>続きを読む

調子の狂った子供たち(1964年製作の映画)

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家出をする14歳の男女、パスカルとクリスティアーヌ。両親に妊娠したことを伝えるには?という作文の解答例を読んで笑い合う二人のあどけなさが可愛い。盗んだ2CVに乗ってどこまでも行けそうな勢いがありながら>>続きを読む

涙の塩(2020年製作の映画)

3.5

優柔不断で都合良く甘え、先の未来を考えずに結婚や妊娠という重要な局面から目を背け、さらには性的な交わりとジュテームの囁きで女の機嫌を取れると思っている奴は地獄へお願いしますという話。最低な話でも最後ま>>続きを読む

ナック(1965年製作の映画)

3.5

VHSにて。そもそも真面目に分析して観るものではないし、受賞について真剣に議論する必要もない。ドリフみたいな面白いコメディという認識で、ただそのswingin' londonをの上っ面を楽しめればいい>>続きを読む

ダメージ(1992年製作の映画)

3.5

ファム・ファタルとしてのジュリエット・ビノシュ。過度に完全性を求める完全主義者ほど美への感度も強く、その度合いを超えたものに出会ってしまった時にはもうなす術などない。単純にタガが外れたとかそういう理性>>続きを読む

絞殺のブルース(1980年製作の映画)

4.0

弱冠20歳にしてエール映画祭でグランプリを受賞し、1983年に「ボーイ・ミーツ・ガール」で長編デビューするのに繋がる重要作品を今更ながら。この後のカラックス三部作の主要なテーマとなっていく無気力な若者>>続きを読む

おなかすいた、寒い(1984年製作の映画)

3.5

とにかくいつもお腹が空いていて煙草を吸いたいマリア・デ・メディロスと、欲望に迷いなし、とにかく恋がしたいパスカル・サルキン。金がないしお腹が減ったしでレストランに入るや否や歌唱を始める二人。退店を引き>>続きを読む

ワンダーウォール(1968年製作の映画)

3.5

VHSにて。出だしからジョージ・ハリスン味満載なサウンド。ジョージ×ジェーン・バーキンのサイケビデオとして割り切って観るのが良さそう。

青春残酷物語(1960年製作の映画)

3.5

刹那的なものに惹かれ欲望のままに破滅へと向かう生き方しかできない青春時代の汚くて美わしいもの全て。社会や大人に糾弾される若者たち、革命としてのセックス、暴力。何にでもエネルギーが蔓延っていた時代。表面>>続きを読む

部屋(1972年製作の映画)

3.5

音も台詞も一切なし。360°のパノラマ撮影。起きててもごろ寝してても常にカメラに目線をくれるアケルマン。何周かした時には「この部屋こんな感じだろうな」を思い描けてしまう感じ。監視系ストーカーになった気>>続きを読む

破局(1961年製作の映画)

4.0

エテックス×カリエールによるお洒落系ドリフ。だんだんエテックスが志村に見えてくる。こんだけうまくいかないこと続きで怒りも相当煮え滾っているであろう所、引き出しからピストルが見えた時はアケルマンの『街を>>続きを読む

幸福な結婚記念日(1962年製作の映画)

4.0

またまたエテックス×カリエール。タクシーに縁がないおじさんに同情したのも束の間、買ったばかりの花束を自分の尻で踏み付けてしまうやいなや顔面にシェービングクリームが直撃したりと不運に見舞われるエテックス>>続きを読む

ウラジミールとローザ(1970年製作の映画)

3.5

court(法廷)とcoat(テニスコート)、妻A・ヴィアゼムスキーが「シカゴ8」の一員に扮していたり、当時の裁判を茶番劇のように徹底的に皮肉ってポップに風刺。テニスをする二組のカップルの中央で政治論>>続きを読む

メーヌ・オセアン(1985年製作の映画)

4.0

島に集まった個々人たちが横一列に並ぶシーンがあって、その絵面の意味わからなさとチグハグさで笑ってしまった。どう考えても謎メンツすぎるし、好きじゃないけど今泉力哉作品に見られるような群像劇(特に『サッド>>続きを読む

うみべの女の子(2021年製作の映画)

3.5

浅野いにおはまさに中学生の頃ヴィレヴァンですべて買い集めるほどハマっていたけれどそれ以降の作品は全く追いかけていなかったので『うみべの女の子』は読んだことがなかった。
中学生の恋愛こそ最も生々しく尊い
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君が世界のはじまり(2020年製作の映画)

3.5

相米慎二『台風クラブ』×岡崎京子『リバーズ・エッジ』×長久允『そうして私たちはプールに金魚を、』な感じ。一番好きなシーンは継母と車内で激しいキスを交わす伊尾を純が偶然目にするシーンを経て、誰もいない薄>>続きを読む

小カオス(1967年製作の映画)

4.0

強盗した金をどう使うかの各々の回答が小学生レベルのふざけ具合で最高。ファスビンダーに至っては「I'm going to the movies!」と即答。あのニヒルな笑みが憎たらしく可愛い。そこから間髪>>続きを読む

都会の放浪者(1966年製作の映画)

4.0

「あなたのバスルームを貸して欲しい」
「なぜ?」
「自殺したいんだ」
「素敵ね」

都会を彷徨う宿なしの浮浪者が道端で拳銃を拾い、何度も自殺を試みるも踏ん切りがつかぬまま時が流れ、ベンチで休憩したのも
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不安が不安(1975年製作の映画)

4.0

ファスビンダーのテレビ映画。フラン・レボウィッツ『嫌いのものは嫌い』のような潔さすらある捻くれたタイトルが良。ストーリーが分かりやすく仕立て上げられたテレビドラマだからこそ、字幕なしで観れたみたいな良>>続きを読む

嵐が丘(1986年製作の映画)

3.5

エミリー・ブロンテ原作。いつか蒲田のアダルトビデオ屋で買ったVHSにて視聴。ファビエンヌ・バーブの儚げな眼差し、その無防備さにグッときてしまう。彼女がビリヤード台の上に身体を横たえるあの完璧にキマった>>続きを読む

北の橋(1981年製作の映画)

4.5

リヴェット版『ドンキ・ホーテ』。危うく『セリーヌとジュリーは舟でゆく』を超えてしまいそうになる面白さ。パリの街の地図と符号する双六のマスに従って進められる謎解きファンタジーサスペンス。冒頭15分くらい>>続きを読む

パリはわれらのもの(1961年製作の映画)

4.0

リヴェットの長編デビュー作。トリュフォー『大人は判ってくれない』でアントワーヌが両親と一緒にと観に行った映画でもある。巨大な闇の陰謀の影で支配されるパリと、パリを支配する何か。「パリはわれらのもの…?>>続きを読む

真夜中モラトリアム(2017年製作の映画)

3.5

仲が良かったはずなのにあの頃とは違う絶妙な距離感、よくわかる。個人的にはオカダ推し。