archさんの映画レビュー・感想・評価 - 59ページ目

白痴(1951年製作の映画)

2.9

あまり上手くいっている作品とは言えない。
2時間43分という長尺で描かれる痴情のもつれ。しかし、そこには大恋愛という青臭い趣きや「私はロランス」のような個としての成長や別れを描けている訳ではなく、ただ
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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

3.6

死者は時間ではなく、空間に囚われる。

喪失の物語を生者の視点でもなく、死者(風貌は生きている人)の視点でもなく、黙する死者として本作は描いている。
それはゴーストのようなほとんど生きてる時と変わらな
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トロール・ハンター(2010年製作の映画)

3.4

POV形式で実際にトロールが存在しているかのように迫真のリアリティで撮っているのが面白い。
ドキュメンタリーであるあるな登場人物達や仕草、普通のフィクション映画にはない余白や緩急が見事で、かなりクオリ
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リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)

4.8

リチャード・ジュエル、劇場以来の鑑賞だがその時と評価は一切異なり最高に楽しめた。前回は余韻のない退屈な映画という印象だったが、汲み取りきれなかった要素に気づけたのだろう。
一人の男が1つの事件を通して
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スパイの妻(2020年製作の映画)

3.4

初黒沢清作品でした。第二次世界大戦の不安定な情勢の中で何を信じるのか、何をすべきなのかという誰もがその立場で考えなければならないその疑問を問いかけてくる作品。
スパイという言葉から連想させるような国v
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鉄男 TETSUO(1989年製作の映画)

5.0

そこら辺のCG映画では絶対に越えられない実物故の狂気を内包した本作はストップモーションムービーの金字塔であり、未だこれ以上に「これでも喰らえ」と殴り掛かってくるようなジャンル作品はない。繊細さを要する>>続きを読む

宮本から君へ(2019年製作の映画)

4.9

本気だって言うのは簡単で、俺の子だって言うのも簡単で、愛してるって言うのも簡単で、殺すって言うのも簡単で、なんだって言うだけなら簡単なそんな腑抜けた世界が人生だ。じゃあなんでそんな世界で宮本はあんなに>>続きを読む

羅生門(1950年製作の映画)

4.4

人の善性を描くことを貫いてきた黒澤明は珍しく前作「醜聞」では弱い人間という立場から正しくある人間の尊さを描いた。そして今回、遂に黒澤明の作品は羽化し、人の持つ悪性を強烈なコントラストで描いて見せた。>>続きを読む

ロボコップ(1987年製作の映画)

3.3

ポール・ヴァーホーヴェン作品のブラックなコミカルさとクセの強いバイオレンス描写がここぞとばかりに反映された作品。
フランケンシュタインのように死者の蘇生が本作の肝になっているが、この監督はそこに非人間
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醜聞(スキャンダル)(1950年製作の映画)

4.5

マスコミの醜悪さを描いた作品で50年代でこのテーマを描く慧眼を褒めるべきか、マスコミの本質は未だ変わらないことを悲しむべきか。黒澤明映画は善悪がはっきりしていて、それは映画は常に正しいものを描くべきで>>続きを読む

ドニー・ダーコ2(2009年製作の映画)

2.5

ドニー・ダーコのモチーフを散りばめより複雑に淡白に1と同じことをやっただけ。典型的な1の劣化版でした。
最初、「テルマ&ルイーズ」が始まんのか!とワクワクしたがそんなことも無く、まぁ残念なところが目立
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大砂塵(1954年製作の映画)

3.3

女同士の舌戦やパワーバランスを中心にその周りで錯綜する男達という形の異色な西部劇であったことは間違いない。
自らの築き上げた者を守ろうする女と感情のままにそれを脅かす女の争い。西部劇の世界において男同
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異端の鳥(2019年製作の映画)

4.9

色を塗られた鳥は群れに戻ると異分子として迫害され殺されてしまう。それが異端の鳥、Painted Birdである。

ホロコーストから逃れ疎開した少年が"普通の人々"に迫害され、人の悪意や野蛮に晒されて
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TENET テネット(2020年製作の映画)

4.7

4回観た ただそれでも分からんところは本当に分からない。でも最後に心に残る感情は最高の一言なのでもうおっけーなんでしょう。

キンダガートン・コップ(1990年製作の映画)

3.2

シュワちゃんが捜査の一環で幼稚園の保父になる物語。
教師経験のない人間が先生になるシリーズという意味では「スクールオブロック」なんかを思い出しましたが、つまり異種職業の交錯でユーモアと痛快で独自な視点
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ホテル・ルワンダ(2004年製作の映画)

4.2

私たちの上に太陽が戻るのはいつなのだろう。誰が取り戻してくれるのだろう。

そんな歌詞が痛烈にささる。この世のものとは思えない惨劇の数々、されどこれは現実なのだ。

主人公ポールはフツ族側、支配層側に
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バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー(1984年製作の映画)

2.7

レディープレイヤーワン繋がりで鑑賞。
はっきりいって作品としてはつまらない。アクションも出来るし、頭もよく研究者達とバンドも組んでなんでも出来る天才"バカルー・バンザイ"という設定やとんでもSF設定は
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メイキング・オブ・モータウン(2019年製作の映画)

3.9

正直モータウンについては事前知識はほとんどない状態であったが、本作を通して感じたのは如何に先進的な仕組みでスターを生み出してきたのかと才能たちが戯れた奇跡の場所であったということだ。
聴けば知ってる曲
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ようこそ映画音響の世界へ(2019年製作の映画)

4.2

映画は観るだけではなく、聴くものでもあることを実感する時間でした。
確かに思い当たる節はある。音楽や台詞、環境音にSE、どれでも好きなワンシーンの要素に必ず関わってくる。そんな当たり前のことを本作を通
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フェアウェル(2019年製作の映画)

3.9

癌の見つかった祖母の元に家族が集まる。主人公ビリーも久しぶりの中国へ。しかし、誰もが祖母に死期が近づいたことを伝えようとしない。それは中国でのしきたりだったのだ。

本作はアメリカ(西洋)と中国(東洋
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リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ(2019年製作の映画)

3.5

オアシスのリアム・ギャラガーではなく、一人の男として、父として、弟として、音楽に生きる人間としての姿を捉える。ドキュメンタリーの作り方としては"再生"をテーマに、オアシス解散から現在までをかなり美談と>>続きを読む

いつだってやめられる 7人の危ない教授たち(2014年製作の映画)

2.5

本作は「ブレイキング・バッド」のようなドラッグ物であったり、「オーシャンズ」のようなケイパー物であったりと比較されているが、どちらにもなりきれておらず、自分には「ハングオーバー」のようなドラッグコメデ>>続きを読む

野良犬(1949年製作の映画)

4.1

三船×志村×黒澤明の第三弾。日本のフィルム・ノワールや刑事サスペンスの始まりの作品であるらしい。
随所に光る演出センスに脱帽しながらも、純粋なフィルム・ノワールとしての陰鬱な空気感に痺れる。中でもラス
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デモリションマン(1993年製作の映画)

4.0

スタローン主演の近未来SF。今作はなんと言ってもその近未来世界の設定がいい。
安全と平和を追求した世界は伊藤計劃の「ハーモニー」の残念版のようで、ピザハット、シュワルツコフ大統領、バーチャルSEXなど
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トータル・リコール(1990年製作の映画)

4.8

これは夢なのか、現実なのか。何を信じて生きるのかお前が決めろ!
久しぶりに鑑賞したが、これぞセンスオブワンダーだ!という作品で、新鮮に見れるのが凄すぎる。挙げたらキリがないがなんと言っても、おばさんの
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静かなる決闘(1949年製作の映画)

3.5

野戦病院で不幸にも梅毒に感染してしまった青年医師の物語。
当時の"梅毒"の認識が窺い知れる本作、医者としての責任、男としての葛藤等主人公に多くの不幸が降りかかり、その中でも挫けず正しくあろうとした男の
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ファーゴ(1996年製作の映画)

4.0

「この映画は実話である」なんて虚言から始まる本作、ただそんな虚言にも重要な役割があります。
それは本作の性質をずばり的確に示す役割です。本作はなんと言ってもそのダウナーな空気感にブラックユーモアが混ざ
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ランド・オブ・ザ・デッド(2005年製作の映画)

2.5

ゾンビを通して社会問題にアプローチする、その姿勢や試みは見事にハマってはいましたが、エンタメ作品として話の面白さは凡作でした。
今回はゾンビパンデミックによる世紀末で、覇権主義的な制度によって成立した
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ゴーストワールド(2001年製作の映画)

3.3

この物語は青春映画にジャンル分けされるが、卒業した瞬間から描かれるのがかなり変わっているように思う。
モラトリアムから出て、目標もなく現実を生きる。絶対に変わらないだろうレベッカとイニードの友情にすら
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The Witch/魔女(2018年製作の映画)

4.3

前半はかなりきつい場面が多かったが、それらを払拭するド級な後半。
後半のタネ明かしで一気に作品の雰囲気が変わる訳だが、そこまでの下りで腑に落ちない部分がかなり多くある。その辺はほとんど彼女が"最強"だ
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酔いどれ天使(1948年製作の映画)

3.6

ここからが黒澤明のやりたかった映画が始まったといわれた1本。
黒澤明と三船敏郎、志村喬の三人コンビが初めて揃った作品で黒澤特有の無償の愛を持つ医者"酔いどれ天使"と戦後日本の暗部を象徴する"ヤクザ"の
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華氏451(1966年製作の映画)

3.8

消防士達の仕事が火を消すことではなく、焚書を行うことになった近未来ディストピア。
かなり馬鹿げた設定と世界観だがナチスで同じように思想統一が行われていたのだからフィクションだと馬鹿にできない恐怖がある
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2300年未来への旅(1976年製作の映画)

3.8

ディストピア映画である本作は現実における人口爆発の問題に対する一つの解決策を提示しています。ただその方法はあまりに恐ろしく30歳で"転生"という形で殺すというものであった。生と死をシステムによって管理>>続きを読む

マティアス&マキシム(2019年製作の映画)

4.5

本作はドランの原点回帰的なテーマである"家族"と"恋愛"の要素に加え、これまでとは違う友人達という集団での関係を強く押し出した作品である。
友情の中に芽生えた愛情や新たな新天地への旅立ちは少年以上大人
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映像研には手を出すな!(2020年製作の映画)

1.1

英勉は何でもかんでもコメディーにしちゃうんだから本作とのそもそも噛み合わせが悪いのだろうな、最低で開始5分で劇場を出たくなったのは久しぶりです。

創作賛歌のメッセージや日本の誇るアニメ文化の素晴らし
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