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醜聞(スキャンダル)のarchのレビュー・感想・評価

醜聞(スキャンダル)(1950年製作の映画)
4.5
マスコミの醜悪さを描いた作品で50年代でこのテーマを描く慧眼を褒めるべきか、マスコミの本質は未だ変わらないことを悲しむべきか。黒澤明映画は善悪がはっきりしていて、それは映画は常に正しいものを描くべきであるという責任感から来るものである。その作品の中で本作は"弱き者"というものに焦点を当てた作品になっている。黒澤明にとって"弱さ"とは悪では無い。乗り越えるべき壁であり、人は強く変われるという希望の眼差しが故なのだ。
本作の弱さそのものであり、実際の主人公であるのは志村喬演じる弁護士である。法廷劇の体裁はあるもののあまりに杜撰な裁判展開であるため、そういった点で評価は出来ないがそもそも"舞台の小道具"として使用されている印象だ。
そんな中で志村喬演じる弁護士は常に良心の呵責や己の無力さと闘う。その様子は決して勇ましいものではなく、うじうじと内省するかのようである。そんな状況に終始イライラさせられる点が正直あったが、その裏側には志村喬の強い存在感があったのは間違いない。

それでも最後に"星"となる。この物語はマスコミという悪を断罪する物語でありながら、弱き男が良心に従い正しい行い生まれ変わるという物語である。実際細部は雑な気もするがダイレクトなメッセージにまたもや心打たれた。
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