efnさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

夕陽のガンマン(1965年製作の映画)

3.6

 モンタージュによる効率化が過ぎる、とか思うこともあるがペキンパーが息の根を止めつつあったジャンルでこれほど純度の高い「西部劇」が産まれたこと自体が奇跡なわけで、そこは褒めるべきだし、そのような前提で>>続きを読む

夕陽のギャングたち(1971年製作の映画)

3.6

 メキシコ革命家の死刑囚選別からIRA時代の裏切り者につなぐやつだけは良かった。レオーネが顔の力を信じてるのはわかるけど、ちょっとはスクリーンサイズを考えて画面を設計してほしい。
 史劇で政治にも片足
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戦争のはらわた(1977年製作の映画)

4.0

 でっち上げの戦功で勲章を貰おうとする将校と泥と血にまみれながら鉄十字を受勲する一平卒、慰問会用の肉をかっさる将校とサラダに群がる負傷兵。対立軸はハッキリしているが、戦地の薄汚れた画面が二つを結びつけ>>続きを読む

ヒトラー暗殺、13分の誤算(2015年製作の映画)

3.6

 絞首刑長回しと自白剤を盛られて不倫と拷問の記憶をマッチカットでつないでるやつは良かった。今どきフーパーみたいに死に際の人間を痙攣させたがる人がいるんだーって素直に感心してしまった。拷問中の撮影にやた>>続きを読む

ヒトラー 〜最期の12日間〜(2004年製作の映画)

4.0

 第三帝国のお葬式。止まない砲声、着弾しない砲弾、追い詰められ書類を焼き捨てる役人、踊り狂う妻たち、責任を擦り付け合う重臣。ベルリン市街が炎上し、瓦礫の山と化しているのを尻目に帝国の主人たちは総統地下>>続きを読む

パリよ、永遠に(2014年製作の映画)

3.0

 人道に目覚めるのはいいけど映画を撮ってるってことを忘れないでほしい。ブリキの太鼓でラインを越えてまで旦那に不倫を見せつけた意気込みはどこいった。というかパリで独仏の高官が言い合いしてるのにヴェルサイ>>続きを読む

シャトーブリアンからの手紙(2012年製作の映画)

3.7

 フランスの副知事が背を向けている向こう側で転向者と独軍将校が処刑組の選別してるやつだけは良かった。(あからさまなダッチはちょっと)
 それ以外は何だかな。執行者が脱落するとか実行前に囚人が義足を外す
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パリの灯は遠く(1976年製作の映画)

3.9

 主観だけで送る側を送る側にしてしまうすごさ。きっかけは新聞の誤配、警察側の証拠もそれだけ。しかし、それはクラインをユダヤ人に認定する契機にはならない。すべては同人クラインの痕跡をたどり、視線を同化し>>続きを読む

地下室のメロディー(1963年製作の映画)

4.0

 海岸線を逆走するとかプールやバーで女を口説いているところまで呆れるくらい洒落てる。計画書から海岸線、見立ての菓子箱からエレベーターへのマッチカットも小綺麗。構図で見せてはいないけど、シネスコの見世物>>続きを読む

現金に手を出すな(1954年製作の映画)

3.6

 金の不始末部下の不始末女の不始末、ギャングの日常系映画。
 何かあったらとりあえず酒飲むか煙草吸うかのどちらかで、その脈絡のなさ、その格好のつけなさいが良い。相棒とラスク食ってワイン飲んでパジャマ出
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陽は昇る(1939年製作の映画)

4.0

 彼女から貰った愛の証は間男の狩猟の証、それを知ったあとでは一緒に映り、目線を交わした鏡の思い出も撮り合った二枚の写真も上滑りする。自殺後に慟哭のように鳴り響く目覚まし時計と催涙弾の涙がひたすら哀しい>>続きを読む

霧の波止場(1938年製作の映画)

4.0

 霧にはじまり硝煙で終わる詩的リアリズム。案内人は車で引きかけた犬で運命の女はトレンチ型のレインコート姿。フランスが舞台のはずなのに、画面は常に湿気ていてジメッとしている。淡い感じがたまらない。
 マ
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犯罪河岸(1947年製作の映画)

3.5

 夫婦は喧嘩ばかりするし警察は自白強要に誘導尋問とやりたい放題。だけど誰もが職務の前に産まれと育ちに対する劣等感をもっていて、その人間臭さが強引な警察と庶民を結びつけている。社会が回らなければ革命すれ>>続きを読む

密告(1943年製作の映画)

3.9

 ある時は聖堂の天井から舞い落ち、時には葬列をかき分けるように機能する手紙。本来、読み書きのためにあるはずのものが大衆を混乱させるためだけに機能する面白さがある。
 冒頭に墓地から門をくぐって教会にパ
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鬼火(1963年製作の映画)

4.0

 アルコール依存、その曖昧さから逃れるための自殺、終わりの前に一瞬でもいいから物事をはっきりさせたくてパリの友人たちを訪ね歩く。ある者は考古学者として成功し、ある者は絶望しながらも画家として、あるいは>>続きを読む

死刑台のエレベーター(1958年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

 本命の殺人を終えたのにどういうわけかエレベーターに取り残されて、うだうだやっているうちに残してきた車が別件の犯罪を膨らませていく、という話であらすじからしてコーエン兄弟か?みたいな雰囲気があるのだが>>続きを読む

ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972年製作の映画)

4.1

 レストランに入れば葬儀が執り行われ、カフェに入れば怪談を聞かされた挙げ句に飯は品切れ。ようやく食卓に吸われたかと思えば、それは夢でガーッと書割が割れたかと思うと観客たちがブルジョアを笑っている。主題>>続きを読む

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)

3.8

 声が空間に吸い込まれるという声、会話をやめようという会話、近づくなと警告を与え合うカップル、背理の連続が螺旋と曲線で溢れたゴシック建築の中で披露される。記憶喪失の女が男の語りに誘われて何かを思い出す>>続きを読む

いぬ(1963年製作の映画)

3.8

 雨に、血に溺れるトレンチコート。陰影といい濡れた布の感触といい、よくこんな美しく撮れるな。

シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

2.5

 フィクションを必要としていない人間に向けたコンテンツでリアルに帰れ、とか言っても意味ないと思うんだよね。金かけてそれをやっても嫌味にしかならない。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007年製作の映画)

3.7

 これだけ目まぐるしいショットの嵐でも発砲からひと呼吸置いて爆炎が巻き上がるとか、瓦が宙に浮くなんてフレームが見えてしまうのだからただただ圧倒されてしまう。観客から見てそれがわかるのだから、描く側が何>>続きを読む

書を捨てよ町へ出よう(1971年製作の映画)

3.9

 戦犯にして無職の父、嘘つき構っての祖母、兎気狂いの妹、地獄のような家庭を抜け出し大学のサッカー部に潜り込むがそこはマッチョの世界でーーーみたいな筋。アングラ演劇に言ってもしょうがないことなのだけれど>>続きを読む

お引越し(1993年製作の映画)

4.2

 離婚を受け入れることがそのまま成長(脱中心化)に継いだ脚本、それをしっかりサスペンスに仕立てる画面の密度、隙がなさ過ぎる。
 三角形の机の端々で、あるいは一切目線を合わせずビールを注ぐ夫婦、廊下で男
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スクリーム(1996年製作の映画)

3.5

 ルールを主題にするのならそれを意識した構成にすればいいし、パロディをやりたければ台詞に組み込めばいいのにどちらもできてないからメタ作品としてどうなのという感じはする。あと編集が好きではない。エルム街>>続きを読む

エルム街の悪夢(1984年製作の映画)

3.7

 場面転換うまい。朗読の授業で生徒全員がぴったり照明を向いているのに、ヒロインの視線だけが外れて廊下にスタスタ歩いていくやつとか流れがいい。もちろんカットを切ってはいるけど、いきなり異界に行く雰囲気じ>>続きを読む

13日の金曜日・完結編(1984年製作の映画)

3.6

 二階から投げ落とす&飛び降りる動作が良い。車のルーフがべこーって凹むと人間が意外とデカいことがわかる。望遠で微妙に圧縮かけているところをみると、スタッフも乗り気だったんだろうなぁ。

13日の金曜日PART3(1982年製作の映画)

3.7

 ホッケーマスクを被ってキャラクターを立て、ハンモック下から串刺しにしたりと健闘はしているが、ナードの演出には遠く及ばない。日中にスタスタと歩いてきてナイフを突き立てるとか水中に引きずりこもうとする演>>続きを読む

13日の金曜日PART2(1981年製作の映画)

3.6

 倫理的にあれだというのはわかってるけど、車椅子が階段をドタタタタターって駆け下りる光景は画になる。締めのフレームを一枚絵にしているのも良い。カットを割ってるのだけどちょっと不服。
 あとジェイソンの
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デビルズリジェクト〜マーダーライドショー2〜(2005年製作の映画)

3.9

 手持ち風35mm風即ちトビーフーパー風殺人劇ではじめて最後までそれで通しているのがまずすごいし、フーパーからの借用からして特定層にしか受けないのに、それをロードムービーもといニューアメリカンシネマと>>続きを読む

マーダー・ライド・ショー(2003年製作の映画)

3.9

 悪魔のいけにえをミュージカルにする、までの発想はまぁわからないでもないが、そこに強化人間を押し込んでいくあたり狂気というか無垢な好奇心を感じる。調理場で半魚人の恐怖のポスターを貼ってしまうあたり、ロ>>続きを読む

サスペリア(1977年製作の映画)

3.8

 目が、目が痛い。赤、青、黄色で照明や壁を色分けする作家は珍しくないけど、ここまで執着している人は珍しい。青い部屋の向こうに赤い空間、黄色い部屋の向こうに青い空間、ドアを開けた瞬間に向こうから刺す光が>>続きを読む

サスペリア PART2 完全版(1975年製作の映画)

3.8

 赤色の使い方が狂人のそれ。なんで血と劇場の装飾やネクタイが同じ色調なんだ。最後の車に引きずられたりエレベーターにネックレスを挟み込むやつも死を自動化している感じでいい。

呪いの館(1966年製作の映画)

3.6

 メリッサがかわいいから怖さよりもそっちに目がいってしまった。視線で相手のナイフを首に誘導すやつ好き。
 セットや照明に凝っているのはわかるけど、色合いがベタでどうしても貧乏臭く感じてしまう。階級が違
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CURE キュア(1997年製作の映画)

4.1

 繰り返される質問によって引き伸ばされた時間が殺意に着地する。お前は誰だ、嫌な思いはしていないか、殺したいやつは誰だ。
 本来、台詞によって説明されるであろうこれらの質問は長回しで撮影されることで観客
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カリスマ(1999年製作の映画)

4.1

 ロングテイクを分断するように突然倒れる木はCUREの殺人そのもの。今回は森を経由して人間の業を暴くという構造もあってより終末に近づいてる。
 というかこれマタンゴだよね...やや表象的ではあるけれど
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DOOR III(1996年製作の映画)

3.8

 暗闇とかベールからヌッと幽霊が現れる瞬間に遠近がバグってるのが怖い。歩き方や照明の角度を変えるだけで、オフィスや洋館を異化できるものなんだな。
 主筋はだいたいスピーシーズ。車が行き交うなかで道路の
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