カツマさんの映画レビュー・感想・評価 - 10ページ目

ポゼッサー(2020年製作の映画)

3.9

意識の底に沈殿する殺意。それは混濁するかのように曖昧で、もう表と裏の境目すら無くなっている。支配する者、される者、その関係性が崩れた時、この物語の本当の扉が不気味な音を立てて開き出す。制御できない本能>>続きを読む

ノクターン(2020年製作の映画)

4.0

悪魔と悪夢。どちらかが幻、どちらかが真実。墜落するように追走し、巣食う魔獣の目覚めを誘う。越えられない壁、どうしようもなく立ち塞がる現実。狂気のように舞い踊り、才能という名の果実をもぎる。それは禁断の>>続きを読む

スノーピアサー(2013年製作の映画)

3.9

宿命への道。それは人である以上、運命のごとく逃れられない寂寞とした現実。貧富の差、格差社会、それらを鉄道の列車に擬体化し、扉を開けるほどに増す地獄絵図の輪郭。それは終わりなき輪廻のように虚しくて、哀し>>続きを読む

レベッカ(2020年製作の映画)

3.6

存在しないはずの影。それはドス黒く変色し、全てを燃やす焔と化した。見えぬ瞳、一人歩きする残像。それらを振り払うにはあまりにも彼女は無垢で、汚れることを知らなかった。どこまでも怨念に追い詰められて、真実>>続きを読む

30年後の同窓会(2017年製作の映画)

3.9

その死の意味を教えてほしい。例え、英雄と呼ばれても、残された者たちの想いは哀しみの地平に暮れて、目の前で夕陽のように横たわる。戻らない人、変えられない過去、それらは消え去ることもなく、ただ人生という年>>続きを読む

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)

3.9

悪夢の夜は明けたのではなかったか。英雄ともてはやされた男に待っていた予期せぬ災厄。潜むのは憶測、先入観、扇動。それは濁流に呑み込まれつつあった者の、孤独ではない闘いの記録。英雄としての証明、彼を糾弾す>>続きを読む

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

4.0

抜け殻の法廷。それは道徳の在り処など木っ端微塵に打ち砕く、各々の正義が裁定される場所。どんなに理不尽な言葉が降り注いでも、どんなに汚い所業が堂々と行われていたとしても、そこに立つ者たちの信念が折れるこ>>続きを読む

凱里ブルース(2015年製作の映画)

3.8

静けさは詩情のように。滔々と語る言葉の一つ一つ、それらは懐古的に染み渡り、時計の針を知らぬ場所へと連れていく。列車の距離はどこまでも遡り、孤独な男の心を惑わせる。そのブルースは不器用に奏でられて、虚空>>続きを読む

MEMORIES(1995年製作の映画)

3.8

記憶の回廊、時をも超越するブラックホール。それは次元を越えるエンドレス、朽ち果てて人の心は戯れる。宇宙に彷徨える魂の残滓、そこに咲くラフレシア。ミニマルがマキシマムに、混乱が混乱を呼ぶ愚かなる人々の輪>>続きを読む

異端の鳥(2019年製作の映画)

4.9

地獄のような現実。人の心は蝕まれ、バタバタと倒れるように狂気の渦へと堕落する。ある時代の世は不条理に満ちていて、死んだ方がマシなのではと思えるほどに人間は欲望に忠実な生き物となる。どこかに出口はあるは>>続きを読む

鵞鳥湖の夜(2019年製作の映画)

4.5

その銃弾はネオンの海へと沈んでいった。明日なき逃走、墜落する水辺。永遠のような夜の帳に魅せられて、謎めいた美女の視線に彷徨える。それはノワール。暗色は濃い黒で塗りつぶされて、鮮血のような蛍光色のネオン>>続きを読む

The Witch/魔女(2018年製作の映画)

4.0

もう平穏な日常には戻れない。打ち破られた青春の日々、過去から迫り来る病魔のような悪鬼。彼女にはもう戦う以外の選択肢は残されてはいないのか。育ての親の寝顔も、やかましい親友の悪態も、全てが懐かしい想い出>>続きを読む

ラスト・クリスマス(2019年製作の映画)

3.9

会いたい時にあなたはいない。二人で過ごしたほんの少しの想い出は、夢のように街角にポツンと佇む。クリスマスの街灯も、煌びやかな飾り付けも、灰色に燻んだまんま、あなたの影だけが哀しみのようにそこにいる。も>>続きを読む

フェアウェル(2019年製作の映画)

4.4

正解などない答え。だとしたら、その答えは優しいものであってほしい。どんなに別れが辛くても、譲れない文化の違いがあったとしても、愛する人には笑顔のままでいてほしい。これは大好きな人にサヨナラするための物>>続きを読む

スノーマン 雪闇の殺人鬼(2017年製作の映画)

3.6

吹雪の中に掻き消されたものとは何か。血塗られた犯人の足跡か、暗躍する黒幕の影か。それとも、過去からやってきた亡霊なのか。いや、この映画は物語すらもその雪闇の底へと堕ちていき、我々の視界を樹氷のように凍>>続きを読む

ゲット・デュークト !(2019年製作の映画)

3.6

何事も考え過ぎはよろしくない。キャラクターたちがウサギの糞を食べてぶっ飛んでいても、フォークの突端を強力な武器だとのさばっていても、野菜のDJネームを持つラッパーが下ネタをマシンガンラップしていても、>>続きを読む

マティアス&マキシム(2019年製作の映画)

3.8

刹那、イナズマのように駆け抜ける。恋心は身体全体を駆け巡り、もう抗えないほどに激しい電流となって身も心も焦がしてしまう。たった一つのキス、運命的な場面。もう戻れない、情念に身を委ねる以外には、もうその>>続きを読む

エノーラ・ホームズの事件簿(2020年製作の映画)

3.7

まるで大スケールの二次創作、なのにその世界観に恋してしまう。実はいた?シャーロック・ホームズの妹、エノーラ視点のサイドストーリーがついに映画化へと漕ぎ着け、世界に向けて配信された。堅物の長男、天才的な>>続きを読む

#生きている(2020年製作の映画)

3.8

生存への最善を探れ。従来のゾンビ映画で登場人物がどんな行動を取ってきたか、まずは振り返ってみよう。ある時は逃げ延び仲間と共に食料を調達しながら進んでいく。またある時は何人かで籠城し、救助を待つまで戦っ>>続きを読む

TENET テネット(2020年製作の映画)

4.8

絡みゆく時空の輪舞曲、ほつれるほどに微睡んでいく定めの路線。それは何本もの軸を走らせ、遡り、そして進めていくことによって起こる、同時多発的な時間のゲリラ。速すぎる謎の連射に苛まれ、実像はフラッシュバッ>>続きを読む

悪魔はいつもそこに(2020年製作の映画)

4.2

暴力と殺意の輪廻。それは愚かしいほどに世の中の道理であって、止むことのない死のメトロノーム。いくら神に祈っても、背中には常に悪魔の影が立ち、輪廻に堕ちていく人間たちを嘲笑うように刈り取っていく。もはや>>続きを読む

ゲティ家の身代金(2017年製作の映画)

3.9

常人の感覚などすでにない。全ての事象は換金されて、人の命すらもその秤の上に抱かれる。愛してやまない孫の身代金の相場とは?そう、彼の中では秘密ルートで手に入れた絵画よりも安かった。だが、そこに常人の感覚>>続きを読む

mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

4.0

その日、その時。きっと人生を変えたかもしれない出来事を覚えているだろうか。子供の頃の記憶は鮮明だったり、曖昧だったり、思い通りにその姿を残してはくれない。だけれども、一瞬のフラッシュバックのように思い>>続きを読む

CURED キュアード(2017年製作の映画)

4.2

殺意に駆られ続けた病魔。治癒しただけでは終わらない地獄。人類が分類することをやめられないこの世の中、それをゾンビ映画という殻でコーティングしたところで、現実感が薄れるはずもなかった。意識の中で確実に分>>続きを読む

見えない目撃者(2019年製作の映画)

3.8

ホワイトアウトした景色。その先に映る凶行の影。それは恐るべき犯罪の匂い、掴めそうで掴めない掌から零れ落ちそうな非業な叫び。ほつれた糸を拾い集め縫い上げて、彼女の元警察官としての嗅覚が猟奇殺人事件の輪郭>>続きを読む

もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)

3.7

思考は迷宮のように迷い込む。人生だってそう。流れ行く時の中で、人は反芻するかのようにその終着駅への道筋を辿る。そこにはいくつかの分岐点があって、惑いがあって、結果としての死が待っている。その宿命への道>>続きを読む

アルカトラズからの脱出(1979年製作の映画)

3.8

島の上で孤立した、絶海の孤島に浮かぶ難攻不落の大監獄。それこそがかの有名なアルカトラズ、何人もの罪人たちが脱獄しようと企てるも、その度に立ちはだかってきた最強最悪の絶壁だ。ただ、そんな伝説に染みをつけ>>続きを読む

リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ(2019年製作の映画)

4.0

俺はロックンロールスターだ、そう豪語して憚らない男。この世で最もその呼称が似合ってしまう男、誰もがそこにカリスマを見出だし、追いかけた、その稀代のシンガーの名は元オアシスのヴォーカリスト、リアム・ギャ>>続きを読む

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!(2007年製作の映画)

4.0

溢れ出る疾走感!やり過ぎてしまうオタク魂!小さな町には不釣り合いなほどに炸裂するアクション&サスペンスの連続に、町も人も縦横無尽にスパークしては大爆発!なんてったってコメディ、なんてったって『ショーン>>続きを読む

未知との遭遇(1977年製作の映画)

3.8

人類はいまだにその謎を解き明かせてはいない。UFOは存在しているのか?宇宙人は実在しているのか?都市伝説のように噂だけが一人歩きし、まるでタブーのようにその禁断の果実がもがれることはない。しかし、未知>>続きを読む

HOUSE ハウス(1977年製作の映画)

3.9

そして誰もいなくなった?それとも妖怪映画ばりのゲテモノ作品?いやいや、これは日本映画を代表する正統たるカルト映画の金字塔にして、ジャパニーズホラーの原点とも言える作品だ。消える女子高生、人間を食べる家>>続きを読む

プロジェクト・パワー(2020年製作の映画)

3.9

生か死か、それとも手に入れた超パワーで目の前の敵を粉砕するのか。その薬は諸刃の剣。下手を打てば自分自身が爆散し、運が良ければ超人戦士に変身できる。そんなギャンブルでしかない薬を巡り、次々と襲い来る死出>>続きを読む

人間の証明(1977年製作の映画)

3.8

撃つべきではなかった凶弾。それは因果応報のごとく跳ね返り、やがては自らの背中に突き刺さる。人間とはこんなにも何かを隠し、過去に縛られてしまうものなのか。全てを悟ったかのような麦わら帽子が美しい景色の隙>>続きを読む

ハニーボーイ(2019年製作の映画)

4.0

ただ、愛してほしいだけだった。記憶の底で蠢くのは、いつだって道化師の面影から逃げられなかった父の姿。泣き化粧の人生はどうしようもなく不器用で、息子への愛も屈折したままどこか遠いところへ放り出されたかの>>続きを読む

目撃者 闇の中の瞳(2017年製作の映画)

4.0

ページをめくると嘘がパラパラと落ちてくる。そのたびに真実は塗り潰されて、悲劇の輪廻は溶け合うように堕ちていく。誰が嘘をついていて、誰が狂気を宿しているのか。関係者たちの思惑は錯綜し、己がために正義を禊>>続きを読む

40歳の童貞男(2005年製作の映画)

3.8

40歳だとか、童貞だとか、まるで崖から飛び降りるような決死のダイブに聞こえるけれど、まだまだスタートラインを切るには遅くなんてない。だが、彼にとってはバンジージャンプのような大冒険!足をすくませている>>続きを読む