カツマ

リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズのカツマのレビュー・感想・評価

4.0
俺はロックンロールスターだ、そう豪語して憚らない男。この世で最もその呼称が似合ってしまう男、誰もがそこにカリスマを見出だし、追いかけた、その稀代のシンガーの名は元オアシスのヴォーカリスト、リアム・ギャラガー。オアシス解散後、彼は悩み、迷った。そして今、彼は再びロックンロールスターとして舞い戻る。もうオアシスのヴォーカリスト、ではない。彼は一人のアーティストとなって兄とは違う道を行く。

2009年7月、フジロック。あの日のオアシスの姿を今でも鮮明に思い出すことができる。兄弟の間に走るピリピリとした空気。そんな危うい二人のアンバランスさがギリギリに保たれていた刹那、その数ヶ月後にオアシスは空中分解を迎えた。この物語はその解散後のリアム・ギャラガーの心情を描いた赤裸々なドキュメンタリーである。ビーディー・アイでの挫折、逃避、そしてソロとしての復活。リアムは何を考え、誰に支えられ、そしてステージへと舞い戻ることができたのか。今のリアム・ギャラガーの姿を映し出す、真のモンタージュとしての記録がここにはあった。

〜あらすじ〜

1990年代から世界的なロックバンドとして無敵の勢いを誇っていたオアシスとギャラガー兄弟。だが、2009年のパリ公演。リアムとノエルの大喧嘩によってバンドはついに崩壊。バンドの中心であるノエルの脱退、つまりは解散の道へと突き進む。その後、リアムはノエルの抜けたオアシスのメンバーと共にビーディー・アイを結成し、2枚のアルバムを残すも、兄ノエルほどの成功は掴めず、プライベートでのゴタゴタも災いし、ビーディー・アイもまた解散へと追い込まれていった。
はじめての挫折を経験したリアムの心は音楽から一度は離れてしまうも、恋人のデビーの支え、友人たちのアドバイスから勇気を得て、再びソングライティングへと打ち込むようになる。そんな彼が次に目指すのはソロとしての姿。そして、復活を印象づけるためのアルバムのリリースだった。

〜見どころと感想〜

今作は人間リアム・ギャラガーに迫ったドキュメントであり、40代の半ばを迎えた彼が迎えた円熟の途上をカメラに切実に収めてみせている。かつてのリアムといえば傲慢で暴言が多く、いつだって不敵な印象を持つ、永遠のジャイアニズムの体現者のようでもあった。だが、今作から紐解かれるのはそんな彼の中にある優しさ、暖かさ、そして、あまりにも剥き出しの繊細さと弱さであった。そんな人間らしさが彼を皆から愛されるロックンロールスターにしている、それをこのドキュメンタリーは教えてくれていた。

時系列順に進むストーリーは、ソロ活動に忙しい現在のリアムの姿にまで辿り着く。そこにはリアムの子供たち、バンドメンバー、長兄のポールらの言葉が吹き込まれ、登場人物としては元オアシスのメンバーやクリス・マーティンとのやり取りもチラリと覗かせる。そして、もちろん兄ノエルへの想いも・・。リアムはそんな一つ一つの感情に真摯に向き合うようになり、成熟した大人となったことが、彼に新たな推進力を生み出していくことになる。

ノエルは天才だと思う。しかし、リアムはきっとそうではないだろう。だけれども、そこにある彼の人間としての温もりが、彼をロックスターとして大きなステージの上で歌わせるのだ。彼はノエルに頼らずに自立する道を進み、そして自らの栄光を掴むために生きていく。いつかまたオアシスというバンドのセンターで彼の姿を見たいという想いもあるけれど、今の彼はもうオアシスというバンドにいなくても、ロックンロールスターであり続けることができる。兄の背中を追うだけではない、彼だけの光を掴みにリアムはこれからも突き進んでいく。

〜あとがき〜

意外にもオアシスの曲は使われておらず、ほとんどがリアムのソロ、またはビーディー・アイからの選曲でした。ビーチ・ハウスの曲が流れてきた時には流石にビックリしましたが、このドキュメンタリーが『オアシスのリアム』では無くて、『ソロのアーティストとしてのリアム』へと焦点を合わせていることが如実に分かる選曲だったかなと思います。

リアムは来年のレディングフェスのヘッドライナーとしてすでにブッキングされていますが、来年まだまだその活動は活発化していきそうな予感も。延期になったスーパー・ソニックにもブッキングされていただけに、来年の来日にも大いに期待がかかりますね。