カツマさんの映画レビュー・感想・評価 - 13ページ目

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)

3.9

あまりにも純粋な狂気。妄想へと真っ直ぐ向かう無邪気な光線、それは人生を喜劇に見せるには十分なほど現実から乖離していた。信じる場所に向けて突き進む、なんて勇猛果敢な言葉は似合わない。一夜の王になるためな>>続きを読む

エスター(2009年製作の映画)

4.0

裏表がある、というレベルじゃない。天使と悪魔が同居する無垢な微笑み。その甘い匂いに誘われて、アリ地獄のような狂気はヒタヒタと忍び寄る。壊れていく日常、狂いゆく愛の形。一人の少女が巻き起こす災難の嵐は果>>続きを読む

悪魔を見た(2010年製作の映画)

3.8

目には目を、歯には歯を、そして殺戮にはそれ以上の地獄を。それは修羅堕ちした男による完全なる復讐。悪魔のような人間に報復するには自らが悪魔になるしかなかった。悲劇の発端が捻れ、拗れ、螺旋を描き、やがて最>>続きを読む

魂のゆくえ(2017年製作の映画)

3.9

考えれば考えるほど迷い込む。神の所在、愛の居場所。分からない、出口のない迷宮が四方八方から語りかけ、魂は彷徨うように負の遺産を抱え込む。それでも尚、光と呼べるものがあったなら、彼はその光を掴みにいくべ>>続きを読む

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)

4.4

そのステップは歴史の光と影をタップする。一瞬だけ瞬いたスポットライト、夢のように駆け抜けた日々。それは刹那、フラッシュバックのように永遠となり、悲劇に塗り潰された儚き記憶へと変わる。ただ踊りたい、例え>>続きを読む

ローマンという名の男 信念の行方(2017年製作の映画)

3.9

人は弱く、信念を貫くことは難しい。共に目指した仲間も、実現するための資金も、彼の手元にはもういない。彼は独り。もうそれは頑固な主張でしかなかった。だが、真に失ってはならなかったのは動かしがたいその心そ>>続きを読む

ウィッカーマン(1973年製作の映画)

4.3

信仰とは盲信の果てに見る蜃気楼のようなものなのか。隔絶された島、不可思議が跋扈するそこはかとない違和感。この映画の中身はカルト信仰の異様さを描いているようにも見える。が、それはキリスト教への冷徹なアン>>続きを読む

REVENGE リベンジ(2017年製作の映画)

3.7

燃え盛る業火。燃やし尽くした復讐の炎は不気味な色を帯び、一人の女性を修羅の鬼へと変貌させる。そのリベンジ、容赦なし。いや、そもそも容赦など不要であった。果てなき荒野を監獄にして、狩る者と狩られる者が入>>続きを読む

ふたりの女王 メアリーとエリザベス(2018年製作の映画)

3.8

史実という名の悲劇がズッシリとのしかかってくる。どんな綺麗事も通じない、歴史に刻印されたある女性の運命。彼女の名はメアリー。イギリスの正統なる血筋の源泉であり、女王として歴史にその名を刻んだ人物だ。だ>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.7

それは夢か幻か、それとも救済の果てに見える蜃気楼のような祝祭なのか。全てが白色の混合色へと染まりきり、明けない夜が永遠のようなダンスを踊る。もうあどけない日常には戻れない。どこまで行っても追いかけてく>>続きを読む

THE UPSIDE 最強のふたり/人生の動かし方(2017年製作の映画)

4.0

灰色の日常に光が射した。暗澹とした停滞に呑み込まれていた日々が、今はもう遠い過去のように過ぎていく。きっと人生はパズルみたいにハマるべきピースを探し求めていて、それがハマったことによって、愛するための>>続きを読む

ザ・レポート(2019年製作の映画)

3.8

一つの物語をまた別の断片から見てみると、全く新しい物語が生まれている。それは対象が大きければ大きいほど、その副産物としての傷跡を大きくし、教訓としての側面を色濃く覗かせる。9.11でのあまりに大き過ぎ>>続きを読む

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

4.5

地獄のような道を駆け抜ける。亡骸は沈み、銃弾が掠め、壊れていくだけの荒野の泥が死の床を弾く。もはやそれは修羅の道。綱渡りのような伝令が、炸裂音の合間を閃光のごとく走りに走る、息が苦しくなるほどの没入体>>続きを読む

名もなき生涯(2019年製作の映画)

3.8

美しい景色は幸福な過去を置いてきぼりにして去っていく。もう神はいない、見えない、そんな時代。暗澹たる闇の濃霧を掻き分けるように生きた名もなき生涯が、現代にこうして一大叙事詩として蘇る。信仰とは、信念と>>続きを読む

ザ・コミューン(2016年製作の映画)

4.4

人間とは、愛とは、そんなに強いものじゃない。乗り越えられると思っても、環境の変化、時間の経過、それら全てが津波のように押し寄せて、平和だった日常すらも壊れてしまう。こんなはずじゃなかったと思った頃には>>続きを読む

デンマークの息子(2019年製作の映画)

3.9

復讐という名の傷痕は永遠のように負のスパイラルを刻む。それは人類の歴史であり、悲劇は今もなお上書きされる怨恨の途上に過ぎない。選民思想、移民問題、そして過激派によるテロリズム。それらは別々のようでいて>>続きを読む

ロード・オブ・カオス(2018年製作の映画)

4.2

カオスは増殖する、カオスは蔓延する、そしてカオスは狂気となって人の心を蝕む。混沌に狂気を上乗せし、いつ終わるとも知れぬ暗黒の儀式が輪廻のごとく転生する。人の世とは思えぬほどの話だが、真実とは想像を逸す>>続きを読む

アンカット・ダイヤモンド(2019年製作の映画)

3.9

不穏なほどに揺さぶられる。まるで微振動が永続的に脳漿をガクガクと忙しなく叩くかのように。それはもはや狂気のように破滅的、でもやめることもできずに求めれば求めるほどに枯渇する。どうしようもなくマネーゲー>>続きを読む

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)

3.9

美しかった思い出は悲しいほどに色褪せていく。写真の中だけの笑顔、順調だと思えた未来。それらは全て、ほんの些細な過ちから崩れ落ちるかのように瓦解した。あの日々は帰ってこない、だとしても、また再び戻れる日>>続きを読む

9人の翻訳家 囚われたベストセラー(2019年製作の映画)

4.0

閉じ込められた謎、それはミステリの中に潜むミステリ。クローズドサークル、絞り込まれた容疑者、与えられた謎の中で暗躍する犯人の影。真実を追えば追うほどに迷い込む、例えその答えが伏線として分かりやすく残さ>>続きを読む

イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり(2019年製作の映画)

3.8

大地と宇宙の狭間、いつも見えている空を未踏の領域へと変貌させる見果てぬ開拓地。そこにはロマンがあり、ドラマがあり、そして直進しなくてはならない道があった。そう、それは今では当たり前となった気象予報とい>>続きを読む

ザ・バニシング-消失-(1988年製作の映画)

3.7

それは音もなく霧のように消えていた。いつのまにか、気付かないほどにジワジワと。消失はこの映画のカルト臭とリンクして、得体の知れない影法師としての謎を劇中に落とし込む。狂気は潜り、周りからはそこに見えな>>続きを読む

バンブルビー(2018年製作の映画)

3.9

交わらないはずの時空が交差する。80sロックとエンターテイメントの融合、青春映画とロボット映画のコラボレーション!まるで映画そのものが思春期の停滞感からの脱却のようで、どこを切ってもザ・スミスの繊細な>>続きを読む

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)

4.7

いつまでもそばにいてほしかった。信じていたから、少年は少年のままでいられると、どこかできっと信じていたから。でも、悲しいほどに世界は変わってく、少年の信じていたものが音を立てて壊れてく。それでも生きて>>続きを読む

ゴーストバスターズ(1984年製作の映画)

3.8

ザ・アメリカ!ザ・80s!単純明快、誰もが愉快になれる仲間たち、それがゴーストバスターズ!幼い頃に見た記憶ではハリウッド映画といえばこれだった。そして、ウェス・アンダーソン作品前のビル・マーレイといえ>>続きを読む

美しい星(2017年製作の映画)

3.7

世界は、地球はいつか終わるのか、いや、違う。終わるのは地球ではなく、そこで暮らす人類。そう、自ら破滅へと向かう人類を俯瞰的に描くにはもはや宇宙人の視点を借りなくてはならなかった。三島由紀夫は今作の執筆>>続きを読む

失くした体(2019年製作の映画)

3.9

失われた夢の残骸。それはスタスタと当てのない旅をしながら、いつしか虹のような景色へと変わる。 変えられない過去、なりたかった自分。それらは全て凍りついた肢体となった。でも、だからこそ、その狭間を、変わ>>続きを読む

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)

4.3

その一瞬に全てを賭ける。限りなく風になり、空気と一体化し、音速のソニックブームと化す。前人未到の領域へと踏み込んで伝説となった男。彼の光り輝いた痕跡とその歴史をエンタメ性たっぷりに描き出した魂の逸話が>>続きを読む

ルディ・レイ・ムーア(2019年製作の映画)

4.0

夢追い人はやり過ぎなくらいがちょうどいい!リミッターなんて鼻から皆無、ブレーキがぶっ壊れてたって気にしない!映画を作るという夢に向かって猪突猛進一直線に突っ走る、破天荒な男による一世一代の大勝負はフィ>>続きを読む

スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団(2010年製作の映画)

3.9

もしディープ過ぎるオタクが映画監督になったなら。少年時代の趣味の世界も妄想もみんな具現化しようとするはずだ。そんな夢を叶えた男の名はエドガー・ライト。格闘ゲームとロールプレイングゲームを恋愛対戦シチュ>>続きを読む

パージ:アナーキー(2014年製作の映画)

3.8

このシリーズにはヒーローなんて存在しない。殺るか、殺られるか。略奪するか、それとも淘汰されるのか。極端な強者と弱者の図式が現代社会にけたたましいほどの警鐘を鳴らす、パージシリーズの2作目!前作とは異な>>続きを読む

ヒックとドラゴン2(2014年製作の映画)

4.2

青年は痛みと共に立ち上がる。出会いと別れが交錯し、迷える者の道を照らす、ヒックとドラゴンの2作目!まさかの再会、迫り来る巨大な敵、それら全てがヒックに一人の大人としての階段を登らせ、確かな成長の足跡を>>続きを読む

サマー・オブ・84(2017年製作の映画)

3.8

永遠のように長い夏休み。それはやり過ぎた自由研究、副作用を起こしてしまう魅惑的なドラッグ。好奇心に誘われる、厨二病スレスレの田舎町の冒険、それは次第に推理小説の中からその手を伸ばし、少年たちの細い首を>>続きを読む

幸福なラザロ(2018年製作の映画)

4.3

灰色の中にある一点の曇りもない透明。それはもはや色のない光、照らすことを求められない無為な照明。幸せとは何か。そんな言葉が彷徨いながら、涙のように暮れていく。善き人の目に映る現代社会の底を直視させなが>>続きを読む

ヒックとドラゴン(2010年製作の映画)

4.0

全ての概念を変えることだって不可能じゃない。落ちこぼれでもいい、どんなにお前はダメだと言われたっていい、その心の中にただ一つの勇気だけを灯せたら、誰だって人生という物語の主人公になることができる。この>>続きを読む

ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!(2018年製作の映画)

4.3

年の瀬に直腸をガクガク揺さぶるとんでもない快作(怪作?)が登場!元気が出ない人、今年どうにもどん詰まりで便秘みたいな一年だった人、年末の忘年会で吐☆物の海に溺れた人、メタル好きでも好きでなくてもいい!>>続きを読む