かなごろうさんの映画レビュー・感想・評価

かなごろう

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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.2

控えめに言っても素晴らしい映画だった。生きていくことは一方でなにかを失いつづけることであって、その困難さと、しかしそれでも生きていくしかないことの苦しさ。そして、その孤独は同じような誰かと分かりあえる>>続きを読む

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

3.5

クリントイーストウッドにしてはライトだったのかなあと思う。
しかしいろんなことが安直にうまくいくけど、それは監督の今の年齢こその優しさのような気になるからクリントイーストウッドはすごいなあ。

古き良
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17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)

3.8

10代の女の子の生きていく困難さが、淡々とした展開のなかに苦しいほどに映しとられる。
大きな感情もストーリーのうねりも言葉もほぼない中で、まさに彼女たちの瞳に映る世界がどんなに大きくて絶対的なのか、自
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

3.9

かなりの高評価で期待して観ましたが、観て後悔させない映画です。

聴力障害を軸にしたじんと考えさせる作品なのかなあと思っていたけども、どこまでも爽やか。
逆にそのテーマは掘り下げ過ぎず、この主人公の年
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キングスマン:ファースト・エージェント(2020年製作の映画)

3.9

コリンファースじゃないキングスマンかあとは思っていたけれど、映像のスケールの大きさと、あとやっぱりこのアクションには2時間以上の作品なのに目が離せなかった。

戦争批判はキングスマンで描かなくてもいい
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アナザーラウンド(2020年製作の映画)

3.7

職場の人に教えてもらって観たデンマーク映画。なんといってもマッツミケルセンの映画なんだよなあと納得。素敵です。

きっとアルコールでなにかが解決することなんてなくて、だからこそ我々はアルコールになぐさ
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娼年(2018年製作の映画)

3.4

想像していたよりはいいと思えた。
リョウのうまくいきすぎるところ、女性たちの心を救いすぎるところ、そしてなにより優しいところが、良さでもあり安易でもある石田衣良の物語だなあという感じ。

セックスが性
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ワンダーウォール 劇場版(2019年製作の映画)

3.5

若い人間の思う正義と、現実の壁と、非情な大人たち。そう書けば典型的な青春のストーリーなのだけど、近衛寮の存続を中心に据えて、実直に撮った作品だった気がする。

正義では現実と戦えない。きっと学生たちは
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アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)

3.9

女性同士の激しい性愛を、大胆でありながらとても美しく映し出した作品。

この映画ではじめてレアセドゥを見たのだけど、役にはまったアンニュイさと中性的な魅力を表現しきっていて魅了された。
印象的な青い髪
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命みじかし、恋せよ乙女(2019年製作の映画)

3.0

観ているのがとてもつらかった。ちぐはぐな映像とまとまりのないストーリー、救いのなさ。体感的にとても長く感じた。

でも、最後まで見ると不思議と腑に落ちる部分もあった。ばらばらだった人物たちと過去と亡霊
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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

4.0

幸福という言葉しか当てはまらないような素敵な作品だった。
もちろん、苦悩もジェンダー差別も悲しみも死もたくさんあるのだけど、4人の姉妹の結びつきがどのシーンを観ていても明確に根底にあって、それが彼女た
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マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)

3.6

東野圭吾原作だけあって、構成の上手さとエンターテイメント性に長けた映画。

繰り広げられる展開に2時間ちょっとまったく飽きずに観られました。
訳ありのお客たちのエピソードはわりと単調で、ストーリーにも
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小さな恋のメロディ(1971年製作の映画)

3.7

とにかく子どもたちが元気いっぱい。美しい映像のなかで、この子どもたちの溌溂としたエネルギーと、秘められたたくさんの可能性、小さな体いっぱいの希望。
子どもというのはこんなふうに過ごすべきなのだよなと思
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Red(2020年製作の映画)

3.3

島本理生らしい物語と展開だなあと思いながら鑑賞。一貫して女としてあることの葛藤が描かれる。

男性からの理想像に苦しくなる塔子だけど、その理想から解放させるのも、男性との関係性なのだよなあ。押しつけら
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夜明け(2019年製作の映画)

3.4

柳楽優弥と小林薫の力量で成り立った作品。暗い空気のなか、それこそが人物たちの夜であって、ラストシーンはタイトルのようにいくのかと思ったけれど、はっきりはさせなかった。

行き場のない青年を受け入れてい
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世界中がアイ・ラヴ・ユー(1996年製作の映画)

3.9

冒頭からウディアレン全開です。そしてミュージカル。キュートだけど皮肉、シュールだけど肯定。魔法のような映像と音楽。大好きです。

奔放で自由で常識じゃなく自分の理念で生きていく人物たちが起こすドタバタ
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歩いても 歩いても(2007年製作の映画)

3.7

ひとつひとつのカットをものすごく丁寧に撮っていて、それがなんでもない時間を印象的にした作品。

家族だったとしても、あるいはだからこそ、愛情と表裏一体のものがあって、それぞれのキャストが見事に演じてい
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セトウツミ(2016年製作の映画)

3.9

菅田くん池松くんコンビが最高。脚本も演出も上手いのだろうけど、それを二人がかたちにし切っている。

河原で喋るだけの時間つぶしを映像にしてるだけなのだけど、そのときいた人と飽きもせずゆるやかに繋がって
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ラブ・アゲイン(2011年製作の映画)

3.8

終始とても楽しんで観られるキュートなラブコメ。誰かを好きになる気持ちを肯定できるのが、こういう映画のほんとうの良さだよなあと思いながら観てました。

誰もに一度はこんなどうしようもない気持ちや時期が必
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ザ・ピーナッツバター・ファルコン(2019年製作の映画)

3.9

優しくて笑えて、大切にしたくなる映画だった。
ザックの純粋な心がいろんな人を巻き込んで、それぞれの生き方を見つめ直させる。

悲しさも残酷さもあるけれど、映画の空気感は暗くも否定的でもなくて、ザックと
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初恋のきた道(1999年製作の映画)

4.0

チャンツィーが可愛いだけの映画かと思っていたけど、とてもよかった。
父親の死を据えて、人が生きていることの喜びや尊さや美しさを、素朴な村の素朴な映像で、しかしドラマチックに映し出す。

この小さな村で
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起終点駅 ターミナル(2015年製作の映画)

3.6

釧路ロケで、何度か訪れた釧路の地を懐かしみながら観た。
桜木紫乃原作らしい、潔い女の生き様を描いた作品だったけど、本田翼にもう少し強さがほしかった。それに比べて前半しか出演しない尾野真千子の貫禄はさす
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竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

3.6

映画館での鑑賞。話題作で歌と映像が気になっていて、きっとDVDでは観ない作品だろうと思って映画館で観てきました。

設定が複雑で、物語もつじつまを合わせた感じがした。ベルの歌声と、広大な映像と、美女と
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翔んで埼玉(2018年製作の映画)

3.8

話題作すぎて逆に敬遠していたけど、予想以上に面白かった。
くだらないようでいてあまりにも本気。

地元愛ってとか、今の首都圏のとか、語ろうとすればいろいろあるかもしれないけれども、この映画に関しては「
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花とアリス(2004年製作の映画)

3.9

映像、音楽、関係性、感情の細部、すべてが美しい。とてもイノセンスで、悲しくて、繊細。

この年齢の微妙な心理を、鈴木杏と蒼井優のこの時しか引き出し得ない演技を切り取っている。
他愛なく過ごしているよう
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ジュディ 虹の彼方に(2019年製作の映画)

3.8

レネーセルウィガー、オスカー納得の演技。

最初は自分勝手に見えるジュディが、どれだけ苦しんできてどれだけ傷ついて、それでも幸せに手を伸ばして生きてきたか。
どんなに惨めに見えても、ジュディはボロボロ
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ナタリー(2011年製作の映画)

3.6

不思議と見入ってしまう作品だった。人が哀しみから再生していく物語を、ひとつずつ丁寧に映しとっていた印象。

新しく関係していく人間に、葛藤だけではなく傷つけるような言葉や態度をとってしまうこともきちん
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シェフ 三ツ星フードトラック始めました(2014年製作の映画)

3.9

カールが手際良く作る料理たちのように、軽快な音楽とともにリズムよく展開される映画。そのテンポの良さでまったく見飽きなく、とても面白かった。

悲しみは微塵もなくて、出てくる人物たちも物語もからりと気持
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グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇(2019年製作の映画)

3.2

キャスティングはいいのにすごく残念な作品だった。
喜劇と言っても筋立ての無理をすべてゆるせるわけじゃないのだよなあと思う。

ただ、作り手が太宰に陶酔しすぎていないのは逆にいいのかなとも。
個人的に私
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リトル・ダンサー(2000年製作の映画)

3.9

とても良質で、じっくり観られたのがいい作品だった。

環境はとてもマイナスなのに、音楽とともに軽快にすすんでいく前半はあっという間。無邪気だけど健気すぎない子どもたちも、手を差し伸べるけど甘くない先生
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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ(2007年製作の映画)

3.6

完璧なエンタメ作品。佐藤江梨子演じる澄伽をはじめ、巻き込まれる人間たちもどこまでも悲愴感なのだけど、それをとても滑稽に描き切っていること。それがすごく作品として正解だなあと思う。

自分しか大切じゃな
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昼下りの情事(1957年製作の映画)

3.7

もちろんオードリーヘップバーンは最高に可愛いのだけど、彼女の作品は当然のことながらオードリーがその可愛さを100%演技としても体現してるのがすごいんだよね。

だからどの作品のオードリーも可愛いけど、
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生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)

3.7

さすが本谷有希子原作という感じ。常軌を逸している寧子が、それでもどこか世界の核を捉えている感じがして、否定できなかった。

途中まで寧子のバイトもうまくいき、受け入れられていく過程を描いた作品なのかと
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ダンサー そして私たちは踊った(2019年製作の映画)

3.8

なんの事前知識もなく観たけども、とても意図を明確にした作品だと思った。

人物たちの視線や、不安にさせるカメラワークや指先や関係性が、映画として挑んだテーマをむき出しにする。

揺らぐ感情や欲望が、全
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俺物語!!(2015年製作の映画)

3.5

原作どおりにやってくれました鈴木亮平さん。渾身の猛男でした。坂口健太郎くんも永野芽郁ちゃんもいい配役でとてもフレッシュ。

思わず笑ってちょっとぎゅっとなってなんだかんだ感動してしまうのは、主要3人が
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ラストレター(2020年製作の映画)

3.7

岩井俊二監督らしい美しい映像と美しい音楽。ストーリーは複雑なのだけど、それを理解しやすくあざやかに映し出す。

とても清涼な空気感のなかに、それでも生のもつ痛みをこわれるくらい無垢な映像で撮っているの
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