kaoruiさんの映画レビュー・感想・評価 - 15ページ目

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モスキート(2020年製作の映画)

2.0



アフリカの大平原で少年が迷子になるお話。
少年の面構えがよい。誇り高き軍隊の一員として意気込むが、暗黒大地に放り出され、その絶望的な奥深さと荒涼に、狂信的な皮は剥ぎ取られ埋没していく。彷徨いながら
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ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)

2.5

森田君の怪演が素晴らしい。
アバンタイトルの出し方も格好良い。

森田君にまつわる種明かし的シーンは要らなかったように思う。理不尽な暴力の理由が明かされるにつれ正体不明の怖さが薄まっていく。ラストの甘
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パヴァロッティ 太陽のテノール(2019年製作の映画)

3.5

天真爛漫で無邪気で太陽なようなパヴァロッティの生き様を、ハワードが衒いと邪気無く紡ぐ。実におおらかな生命賛歌である。

プライベートなハンディカム映像から始まり、再度登場した時それは失意の底の映像であ
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朝が来る(2020年製作の映画)

4.5

一綴りの物語は、監督の描追い求めて来たモチーフ達により時空を越え連なっていく。
都会の高層マンションの窓に吹き込む風、奈良の深い森に高く吹き荒ぶ風、広島の小島の塩の香りをたっぷり含んだ風、風は時空を越
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魂は屈しない(2019年製作の映画)

2.5

人道的でモラルを纏った計算づくのミスリードの導入から一転、怒涛の展開の連続に度肝を抜かれる。
編集が大胆で、必要最小限の情報を提示するや否や一見乱暴に繋いでいくのだが、
口をあんぐり開けたままぐいぐい
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GO(2001年製作の映画)

2.5

ナーラタージュや窮鼠で描かれた浮遊するような人物描写は影を潜め(時系列ではこちらが最初だが)、韓国人と日本女性の恋の描写もやや類型的になっている。
役者の魅力を引き出すことを監督の仕事と考えると、窪塚
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浅田家!(2020年製作の映画)

3.5

コメディ・タッチの前半が抜群に良い。
スカのビートに乗せて軽快に進む。
津の海のシーンがどれも素晴らしく、突堤にだらしなく寝転がるニノを斜めに捉えるショットは、撮るものが見つからず漂うニノの心情を活写
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TENET テネット(2020年製作の映画)

4.5

冒頭のオーケストラのチューニングからの爆音に度肝を抜かれる。金属質な重低音が画面を支配する。重量感、密度感たっぷりの絵の連続に圧倒される。ノーラン作品で随一の濃密な絵だ。
空港独特の無機質で近未来的な
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窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)

2.0

ナーラタージュでどこか心ににひっかかるものがあったので、行定作品鑑賞。
煮え切らない主人公と、なぜか主人公に執着する直情人物というモチーフは変わらず、今作はさらに主人公への共感を拒絶するかのような演出
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ペイン・アンド・グローリー(2019年製作の映画)

4.0

アルモドバル監督一流のただの赤では済まない赤を満喫しに行ったら、破壊力満点のペネロペのハミチチと、爺さん2人のディープキスのおまけが付いてくる作品。

映画がフェイクの編み上げで成立する芸術であること
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その手に触れるまで(2019年製作の映画)

3.5

音楽もカタルシスも封印し、息を飲むような手持ちカメラでひたすら少年を追うダルデンヌ兄弟らしいヒリヒリした絵の連続で、ドキュメンタリーを観ているような感覚になる。
モンスターと化してしまった少年の内面に
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コリーニ事件(2019年製作の映画)

4.0

冒頭の殺害シーケンスからグッと引き込まれる。ホテルの床に引き摺るような血塗れの足跡、ホテルの従業員の顔のアップで何が起きたのかを物語る。そしてモゴモゴ呟くコリーニ、フランコ・ネロ!
ゾクゾクするような
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思い、思われ、ふり、ふられ(2020年製作の映画)

2.5

この監督の作品は初めて観たけれど、まず音響の良さに驚いた。基本ミニマルでアンビエントなピアノで構成されているんだけれど、音の粒立ちを感じとれるくらい気持ちよく響く。若手俳優陣の声も張りがあって小気味良>>続きを読む

(2020年製作の映画)

3.5

平成を大きく描くおおらかな作品で、瀬々監督らしい丁寧な仕事だ。一方で期待される作家性は封印し、大きくうねる物語をうねりをそのままにフィルムに収める。
主人公達を取り巻く人々の慎ましい佇まいが好ましく、
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百円の恋(2014年製作の映画)

3.5


肉体改造系俳優にはそれほど凄みを感じない。代表格であるデニーロも、すごい俳優であることに疑う余地はないけれど、こと肉体改造に関しては、どうしても曲芸に見えてしまう。チャーチルを演じたゲイリーオールド
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ナラタージュ(2017年製作の映画)

2.0

どの作品にも一定に流れるリズムがある。それは編集やカットから生まれ、あるいは被写体の運動から醸し出されるものであり、いわば監督のタッチから産まれるビートであると言っても良いのだけれど、今作はそのビート>>続きを読む

ストレイヤーズ・クロニクル(2015年製作の映画)

2.0

糸への期待感から、瀬々さんの未見作品を配信で鑑賞。企画モンなんだけど、やっぱり面白いなー。深度の深い絵は名人芸で、構図の的確さと合わせて、絵を見ているだけでわくわくする。
主人公チームはワタル君が抜け
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リップヴァンウィンクルの花嫁(2016年製作の映画)

4.0

岩井俊二を誤解してたかもしれない。
端正で綺麗な絵ばかり撮る人と思ってたけど、今作はどうだ。カルトといって良いほどカオスで、カオスが訪れるまでカメラを止めない。この尺になるのは必然である。
Cocco
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アルプススタンドのはしの方(2020年製作の映画)

3.5

蒸せるような夏の一日の青春の一ページを切り取った小品ながら、爽やかで甘酸っぱい佳作。
西本さん演じるキャラが秀逸で、ファールボールが当たると死ぬ、とか園田君のことワリと好き、とか微笑ましい。
終盤、主
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アヒルと鴨のコインロッカー(2006年製作の映画)

2.0

前半に物語があり、後半別の視点の答え合わせがある構成で、似た構成のカメラを止めるな!はかなり楽しかったけれど、今作は前半部分の伏線感がかなり気になった。ここ、試験に出ますよー大事ですよー的な。
もちろ
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WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

3.5

ヒップホップ では既存のレコードからリズムやフレーズを引き出し、他の楽曲やリズムマシーンと融合させる。この創作過程をビートを作る、と呼ぶ。基準はドープかどうか。脳内ドーパミンが分泌されるかどうか。至っ>>続きを読む

透明人間(2019年製作の映画)

3.5

面白かった!前半のサスペンスの抑制の効いた演出から一転、屋根裏からぶちまけたペンキで一瞬垣間みせる透明人間の集合体恐怖症的なグロい造形のショッキングなこと。
後半一転、病んで目が行ってしまってるだろう
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夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)

4.5

夜、京都の木屋町辺りをぶらぶらすると大阪や神戸とは全然違う雰囲気を味わえる。
大阪はおっちゃんのかおりで、京都のそれは学生の香りとでもいうのだろうか。酔って持て余したエネルギーを発散させる大学生が多い
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MOTHER マザー(2020年製作の映画)

4.0

巻頭、坂道を自転車でスピード感いっぱいに駆け下りる長澤まさみが息子の傷をベロッと舐める。
躍動感と生命感あふれるシーンで、息子と母親の関係が唯の共依存ではないことを確信させる。
対称的にやる気のない時
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在りし日の歌(2019年製作の映画)

4.0

長く生きていると身を引き裂かれるくらい辛い出来事が何度か訪れる。重さの違いこそあれ、それは誰にでも訪れ避けることはできない。僕のささやかな人生においても何度かある。
主人公夫婦には子供の死という身を引
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一度も撃ってません(2020年製作の映画)

2.5

半世界がかなり良かったので、期待しての観賞。前半、コメディともハードボイルドともつかない同窓会的閉じた世界観にしんどくなったけれど、後半澁川龍彦&ホンモノ(?)のヒットマン登場で俄然面白くなった。
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マネーボール(2011年製作の映画)

2.0

ブラピ出演作にハズレなし。今作も水準を軽く超えてくるのだが、マネーボールたるシーンは冒頭の会議室でのジョナ・ヒルとの絡みのみで、試合の場面では地味に出塁して得点を重ねるシーンはほとんど見られない。待っ>>続きを読む

泥の河(1981年製作の映画)

3.0

田村高廣の流暢で心こもってしたたかな京都弁を愛でる作品。そして加賀まマリコの美しいこと!
火をつけられた蟹が船縁を走る幻想描写やお化け鯉が船の後を追いかけるのをどのように映像化するか固唾を呑んだけど、
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スクール・オブ・ロック(2003年製作の映画)

3.0

リンクレイターの魅力はこの無責任さやな。
教室で授業中にバンド練習してばれへん、とかスティービーニックス一発で手なづけたりとか、ありえへんやろ!の連発ながら、そやせどスティービーニックスならまぁあるか
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ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ(2018年製作の映画)

5.0

若手監督の才気がイマジネーションが溢れこぼれてイビツだけれど大好きだ。
雨漏りの水の音に所在なげに佇み、トンネルの中謎の女を軽トラで追う。暗闇の中の緑が目に焼き付く。久しぶりに画面に釘付けになった。そ
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娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)

3.5

痛み、怒り、喪失の悲しみ。
カメラに向かって、撮ってくれ、そして、現実を世界に訴えてくれと泣き叫ぶ。目の前に繰り広げられる惨状を固唾を飲んで撮り続ける監督の息吹がこちらにも伝わってくる。現実の絵から放
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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

4.0

作中作品が柔らかい暖かい色で彩られ、現実が冴えた寒色で彫りこまれる。行きつ戻りする時間軸が死線を彷徨うベスの二つのシーンで交錯する。ありふれた演出なら、現実時間がここで一体になるのだが、今作、一瞬の交>>続きを読む

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)

4.0

巻頭のフランス国民が一つになって凱旋に集うワールドカップの熱狂を描く。黒人が、白人が、ムスリムが一体になり爆竹の煙が興奮を煽る幸福な絵である。
興奮が徐々に日常に溶けていき、日常が始まる。そうして新任
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ぶどうのなみだ(2014年製作の映画)

3.0

小説は処女作に作家自身のモチーフが凝縮されると言われるけれど、三島監督の処女作であるしあわせのパンにもぎっしり詰まっていた。
今作は監督のモチーフをさらに高い次元に昇華させていた。驚くべきは世界レベル
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しあわせのパン(2011年製作の映画)

4.5

月からパン屋を挟んで湖に至る縦の構図をどっしりカメラを据えて、セリフも絵も無駄を排してシンプルにオーソドックスに丁寧に丁寧に捉える。
そうして特筆すべきは音。パンをさくっと切る音、ちぎる音、薪のはぜる
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阪急電車 片道15分の奇跡(2011年製作の映画)

1.0


愛する母校のある甲東園。通うために7年間乗り続けた阪急電車、結婚して二児をもうけ、そうして被災して転勤になるまで住み続けた門戸厄神。友達と何度も飲み明かした西宮北口、仁川。思い出しても胸に熱いものが
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