kaoruiさんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

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カモン カモン(2021年製作の映画)

2.0

ウディ君の清らかな瞳、ギャビー(フィールドドリームスからこんなに素敵に)ホフマンの目尻の皺、インタビューされる子供たちは皆自分が恥ずかしくなるくらいお手本のような受け答えだ。そんな優しい優しいマイクミ>>続きを読む

PASSION(2008年製作の映画)

4.0

まず驚愕するのは教室でのシーケンス。屹立する内側と外側。自信の及ぶのは内側で生徒達の内側には決して踏み込めない事実が如実に現れ慄然とする。
大好きなのは河井青葉と岡部君の早朝のシーン。港湾に聳える煙突
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山の焚火(1985年製作の映画)

4.5

凄いものを観た。
山の斜面にへばりつき生きる家族が縦の構図の中運動する。天井の隙間から降りてきたり顔を出したり、農作機を崖から落としたり、双眼鏡で麓を俯瞰したり、見上げるとヘリコプターが牛を吊り下げて
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アネット(2021年製作の映画)

4.0

ホーリーモータースを情緒的に凝縮した作品で僕は大大大好き。スパークスのロックオペラを映画のフレームに収めつつ、そのまたオペラの中でアダムドライバーの劇中劇があったりの超多重構造を乗り越えるとその先には>>続きを読む

ベルファスト(2021年製作の映画)

4.0

覗き込むようにスーッとカメラが降りていくとモノクロの街がある。そこには夕暮れに向けて声掛け合う人熱と晩ごはんの匂いが充満している街の暮らしがある。
いいなーと思う間もなく北アイルランドの現実が雪崩れ込
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ふたつの部屋、ふたりの暮らし(2019年製作の映画)

2.5

薄暗い廊下をドアスコープ越しに覗いたり、バスに隠れて息を潜めたり、バルバラスコバの顔がいきなりアップになったり、その顔がかなりやばかったり、カーテンを開けたら一緒に寝ていたり、ガラスがいきなり割れたり>>続きを読む

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)

3.0

見世物小屋の描写はデルトロの真骨頂のグロテスクで濃密な空気感で彩る前半から一転、良質のファムファタールなサスペンスに切り替わる。これが予想外に教科書のような出来映えで職人監督の手際の良さなのだ。
そし
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The Hand of God(2021年製作の映画)

3.5

故郷を舞台に、ソレンティーノの迸るイマジネーションに目が釘付けになる。
巻頭の船から島を俯瞰する長回しにまずやられるが、オールドミスの恋人を一目見ようと親戚中が集い猥雑に会話するシーンがなんとも魅力的
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さがす(2022年製作の映画)

1.5

きつい作品だった。
不治の病とはいえ愛する人を快楽殺人者の手に委ねるシチュエーションを撮ってしまう製作陣のメンタリティに心が閉じてしまった。
ネガティブな感想でどうもすみません。
作品に向き合う以前の
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ストレイ 犬が見た世界(2020年製作の映画)

3.5

地面を這うカメラが人々の営み人々を断片的にスナップする。背景音として収録されて偶発的に脈略なく繋ぐのだが、国を失った子供達の行き場のない絶望をひと繋ぎに浮き彫りにする。
突然群衆の中で交尾を始めツッコ
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ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)

2.0

繊細で無邪気なんだけど、相手の気持ちに共感することが出来ない哀しさを抱きながら、背筋が凍るほど邪悪な主人公を怪優ケイレブが文字通り怪演する。
フェイクなしに悲劇への道を、主人公自身も誰か止めてくれと願
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THE BATMAN-ザ・バットマンー(2022年製作の映画)

3.5

傷を負い打ち負かされ目を上げることさえできず鬱々と暗闇を彷徨うパティストン。
闇が闇を征するドス黒い暗闇の黒雲の中サーチライトに照らされ浮かび上がる紋章だけがよすがだが、濁った目を向ける。
抜け道を見
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余命10年(2022年製作の映画)

3.5

小松菜奈がとにかく魅力的で、映画の醍醐味は対象(人物であったり場所であったり)をいかに魅力的に撮るかだと僕は思うので、そういう意味では良作だと思う。
藤井作品特有なんだけど方向感覚、時間感覚をやや見失
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ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん(2015年製作の映画)

1.5

つっけんどんな様で優しい酒場のおかみさん、漢気のある武骨な船長、世を拗ねたその弟、ヤンチャな若者、信じて前に進む主人公。まるで宮崎作品ではないか。
絵は北欧独特の省略の美学で彩られていてシンプルでとて
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ゴヤの名画と優しい泥棒(2020年製作の映画)

4.0

笑って泣いて、法廷シーンではドキドキしてホロリと涙する。映画の粋が詰まった良作だ。
刑務所の入り口の手前に石碑が置かれ向こうからジムブロードベントが出所してくる絵を二度対照させる。一度目は反骨のロンド
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ファーゴ(1996年製作の映画)

4.0

靄と雪の境目で蠢く悪意をロジャー・ディーキンスが見事にフィルムに定着させている。
悪人達が足を取られジタバタと足掻く中、満を持してお腹を抱えたマクドーマンドが登場し、素朴に等身大に昼ごはんを職場で旦那
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マローナの素晴らしき旅/マロナの幻想的な物語り(2019年製作の映画)

4.0

息子レコメンドを一緒に鑑賞。
いい作品だ。どこで止めても素晴らしい色彩とデッサンでずっと観ていたくなる。特に最初に登場する曲芸師の描写に目を見張る。柔らかくて温かく、眠る時に縦縞がスルスル解けていくの
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階段の先には踊り場がある(2022年製作の映画)

1.0

言の葉をぶつけても暖簾に手押しの男性陣の愚かさ、言の葉を発する女性陣の覚悟を表現する手法はホンサンスの影響があるのかもしれない。けれどあまりに口の減らない男たちに最後はさすがに辟易してしまった。今の若>>続きを読む

ブラインドスポッティング(2018年製作の映画)

3.5

ブラックパンサーの街、オークランド。
タワーオブパワーが体現する白人と黒人の坩堝の土地での三日間の出来事を熱量たっぷりに描く。
セリフにラップのフローとポエトリーが混じり、絵のリズムとシンクロしてドラ
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ドリームプラン(2021年製作の映画)

2.0

純粋な息子が怒るだろなーと思いながら観終わって、こんなんドリームプランちゃうやん!とやはりご立腹だった。邦題と予告編が完全にミスリードでしょ。
あかんお父ちゃんをあかんままに描いてるので、こいつあかん
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ロスト・ドーター(2021年製作の映画)

3.5

避暑地の孤独なひとときを過ごすオリヴィアが良い。そこに不粋な一族や若者たちが現れ、セミが枕元で死んでいたり、松ぼっくりに直撃されたり、人形の体内から腐った水やムカデが出てきたり、不穏な空気が漂いはじめ>>続きを読む

ファーザー(2020年製作の映画)

3.5

ホプキンスがどんどん混沌としていく様がホラー演出でかなりこわい。調子が良い時は粋なお爺さんなんだけど、オリヴィアコールマンの表情から、あーこれは違うんだーと思わせる。
ホラー要素に加えサスペンスとして
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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

4.0

物書き達のタイプライターから生み出される小宇宙をアンダーソン節全開で具現化し至福の絵と字幕に映し出される文字のセッションに観ている僕もアップアップしながらも幸せな時間を過ごした。
最終章が抜群で物書き
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ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

4.0

映画の神に愛されたスピルバーグ渾身の大きな大きな作品だ。巻頭からワクワクが止まらない。
赤茶け埃の舞う消えゆくストリートを若者たちの肉体が躍動する様をダイナミックに捉える。たった1日の出来事である。若
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リング・ワンダリング(2021年製作の映画)

3.5

しっかりした色彩設計と構図の上に俳優たちがゆったりどっしりと運動する。現実と幻想の境目も常套手段で逃げない。カットバックしてもしっかりいるし、背負った背中にずっといるし、手の温もりもずっとある。光の加>>続きを読む

ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ(2021年製作の映画)

2.5

楽屋で皆がラリってるシーンで、混沌としながら彼女の幼少期を彷徨う長回しが濃密で凄い映像表現だ。このシーンを挟んだビリーホリデー楽団のツアーから物語は転がりだし、自ら終止符を打ってしまう。愛で埋められる>>続きを読む

ゴーストバスターズ/アフターライフ(2021年製作の映画)

2.5

過去2作はバカバカしくて緩いノリが売りで実はあまり肌に合わなかったんだけど、不覚にも?泣いてしまった。舞台をニューヨークから忘れられた田舎町に移し、お爺ちゃんと孫の物語を中心に、親子の絆、友人の絆が描>>続きを読む

THE RESCUE 奇跡を起こした者たち/ザ・レスキュー タイ洞窟救出の奇跡(2021年製作の映画)

2.0

喘息持ちで閉所恐怖症の僕にはとんでもなく苦しい作品で、救出シーンでは息を止めすぎて窒息するところだった。それくらいの臨場感。
潜水士たちがみなオタクで社会に適合していない輩ばかりなんだけど、そんな彼ら
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クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

4.0

なんと豊かな作品であることか。
車と並んで走る黒い馬の群れ、昼寝を覚ます食卓で鳴く雄鶏(まさにクライマッチョ)。
警察や組織から追われる身であるに関わらず、隠れた街に緩やかにたゆとうように時間が流れる
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アンネ・フランクと旅する日記(2021年製作の映画)

2.0

なかなか盛りだくさんで呑み込む前に次々に新たな絵やテーマが飛び込んでくる感じでアップアップしながらの鑑賞。
けれど確かに伝わった。
アンネフランクの悲劇は決して過去の話しではない、今現在世界中で起きて
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パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

4.0

マッチョを極めホモソーシャルの頂点に君臨するカンバーバッチ。女性的なもの、たおやかなものに毒づく。ソーシャルに溶け込みきれない弟は兄の唾棄するものに目を止め愛でる。対照的な二人の狭間で病んでいくキルス>>続きを読む

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

4.5

またひとつ大好きな作品に出会えた。家族が一つになり抱擁するシーンに向けて誠実に絵を積み重ねる。決して派手ではなく丁寧に丁寧に編み上げていく末に辿り着く至福の絵。観ている間中優しい涙が流れ続けた。
うち
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ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

2.0

マークライランス演じるCEOのスティーブジョブスとティムクックを足して2で割ったようなヌメっとしたキャラが最高だ。
異相俳優ロンパールマンの登場で作品がはち切れるかと期待したけど意外と全体わきまえた作
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ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)

1.5

アダムドライバーがガガの家業を手伝うことになり事務所で絡み合うシーンまでが滅法面白く、以降リドリー節は封印され破滅に向かうグッチ家を淡々と追う。
パチーノがダメな息子や弟に辟易する構図はゴッドファーザ
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ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ(2020年製作の映画)

2.0

場所が音楽を作る。
部屋の残響だったり、録音機材だったり、楽器の鳴りだったり、周りの自然だったり、積み重ねられた伝説だったり、パブだったりする。ストーンローゼスとオアシスやシャーラタンズのアルバムに共
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ライダーズ・オブ・ジャスティス(2020年製作の映画)

2.5

因果という仏教用語がある。
一つ一つはシンプルなんだけどいくつか組み合わさると曼荼羅のように複雑になり人智では計り知れない絵図になる。
一人の暴力などでは報われない、どこか東洋思想にも通ずる大きな絵の
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