スエさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

スエ

スエ

映画(397)
ドラマ(0)
アニメ(0)

流浪の月(2022年製作の映画)

3.6

期待通りの構図と色調、不穏な美しさでした。湖面や夕暮れ時の鳥の群れなど、偶然かじっくり粘って捉えたのか、そういう丁寧さは好ましいです。川辺の広瀬すずは今までで一番美しい。

寄るべのない者たちが肩を寄
>>続きを読む

パブリック 図書館の奇跡(2018年製作の映画)

4.0

率直に、静かに感動しました。公共のための仕事=困難な状況にいる人も分け隔てなく、幸福追求の手助けをする仕事、私もその精神をもって働きたいと思う。

図書館員の主人公とホームレスたちには明確な一線があっ
>>続きを読む

パリ13区(2021年製作の映画)

3.6

『ベルファスト』『C'MON C'MON』に続いて、このひと月程で3本最新モノクロ映画を観たことに。どれも美しさに満足です。

自分にフィットするか、低めに心構えて臨んでしまうタイプの作品。難解さは無
>>続きを読む

アメリカン・スリープオーバー(2010年製作の映画)

3.6

80年代と90年代が混ざりあったような世界の散文的な群像劇。学年末でお泊まり会が同時多発。やってることが牧歌的で、なぜかロマンティック。

スーパーで見かけた見知らぬ女子を探し歩く男子。モスラっぽい映
>>続きを読む

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022年製作の映画)

3.8

こどもと吹替版。サム・ライミ節のちょっとベタホラー要素も楽しく。マーベル留年生なので初めてのキャラも多かったけど問題なく飲み込めたし、マルチバースの行き来も躓かず見れました。

スパイダーマン直後なの
>>続きを読む

37セカンズ(2019年製作の映画)

3.9

冒頭からとてもセンシティブな、見てはいけないものを見てしまった感覚。そこに自分の障碍者バイアスを見つけて「うーむ」と考えつつ、脱皮していく主人公と彼女の生存の鍵を握っている2人との関係がどうなるのかと>>続きを読む

スウィート17モンスター(2016年製作の映画)

3.6

17歳の崖っぷち。モンスターってことはなかろう。

唯一無二の親友が毛嫌いしてた陽キャの兄と恋仲になったことで、自らも恋愛(のようなもの)に七転八倒。周囲の男子やバカにしてた教師にも別の側面があり、兄
>>続きを読む

カモン カモン(2021年製作の映画)

3.9

私自身、長年ギスギスしている妹のところにジェシーくらいの甥っこがいるので、つい投影してしまいました。顔のパーツとか身体的な繋がりは感じるけれど、乗ってるOSが違うような、妙な存在・甥。2人きりで過ごす>>続きを読む

愛なのに(2021年製作の映画)

4.0

すっかり今泉力哉ファン。今回は30代結婚絡みでより生々しく(と言っても、あり得んプロットだけど)楽しみました。

ついニヤニヤ笑ってしまうやりとりがふんだん。今泉作品・城定作品はセリフと編集の間の取り
>>続きを読む

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(1997年製作の映画)

3.9

公開当時以来の再鑑賞。

年月を経たぶん、沁み入り方がかなり違いました。この25年で日本においても貧困や虐待についての解像度が上がりましたから。

ウィルが独りで生活しているシーンは無いし、過去につい
>>続きを読む

孤狼の血(2018年製作の映画)

3.7

アサヒスーパードライ発売の翌年、ヒットを受けて劇中何度もみんなが飲んでる。

公開時の推薦コメント「『アウトレイジ』に対する東映のアンサー」みたいなことを古舘伊知郎が書いていたけれど、本当に言い得て妙
>>続きを読む

愛がなんだ(2018年製作の映画)

3.6

20代後半のダラダラ恋愛、大した経験もない癖に懐かしく微笑ましいのは何故だろう。

山田さんとナカハラっち、マモちゃんと葉子さんが対称的に配置されていますが、それぞれ自分のことは上手く語れないのがもど
>>続きを読む

マイ・プレシャス・リスト(2016年製作の映画)

4.0

ちょっと邦題がキラキラしすぎではないかな?思考はネガティブな癖に、減らず口は切れ味鋭いという、好きなタイプの主人公。

簡単に「拗らせ女子」というけれど、12歳で母親と死別、高IQゆえ14歳での飛び級
>>続きを読む

アネット(2021年製作の映画)

3.4

アバンタイトルで華麗に5億点が出まして、ドキュメンタリーの『スパークス・ブラザーズ』への興味が俄然。

はなからクリアカットに感想が書けない作品だろうと挑んだけれど、難解すぎるってことはなかった。いわ
>>続きを読む

英雄の証明(2021年製作の映画)

3.9

アスガー・ファルハディは『セールスマン』に続いて2本目。うねるように状況が複雑化・厄介化していくのですが、言葉を信じる/疑う態度がかなりはっきり表出する人々で、これが神以外の人間同士は公平に是々非々っ>>続きを読む

ベルファスト(2021年製作の映画)

4.1

大人たちが北アイルランド紛争でギスギスしている最中でも、子供たちは初恋をしたり、従姉妹にそそのかされて万引きしたりしてたんだよなーと思いつつ、でも今ウクライナにそんな余裕はあるだろうかと想いはそちらに>>続きを読む

惡の華(2019年製作の映画)

3.1

思春期に濫用される広義の「変態」と、色々目覚めて整理された後の狭義の「変態」。また「クソムシ」の対称としての「変態」が、混ぜこぜに叫ばれ、喚かれ、前半はかなり白けて観てました。
結局のところ、変態とク
>>続きを読む

SING/シング:ネクストステージ(2021年製作の映画)

3.6

吹替で子連れ鑑賞。日本だったら百恵ちゃんを引っ張り出して…みたいな物語。初期メンの克服メニューがどうしても小ぶりに感じてしまったり、続編は難しいですね。
しかしやはりクライマックスの公演シーン、ダイナ
>>続きを読む

つぐみ(1990年製作の映画)

3.2

牧瀬里穂が大根でない作品を見た記憶はないのですが、それでも粗雑な物言いと、鋭く人を睨む表情は、上手くつぐみに成っていたと思います。原作に抱いていた垢抜けた印象は無く、文芸作品の趣きでした(原作の表題『>>続きを読む

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)

3.8

NHKの「多様性映画特集」で鑑賞。
70年代を舞台に、同性愛と性自認と障碍者と虐待と、多くの要素が重なった作品ですが、里親制度を一番クローズアップしていたのではないでしょうか。

アメリカは制度上日本
>>続きを読む

THE BATMAN-ザ・バットマンー(2022年製作の映画)

3.6

前半は「これバットマンである必要ある?」と思わないでもありませんでしたが、最終的にはブルース・ウェイン自身の物語になっていました。また、ポール・ダノが短い中で見せ場を作っていました

トランプ政権以降
>>続きを読む

よこがお(2019年製作の映画)

3.5

観客にしか見えていない三角関係がどのように展開し破綻するのか、不穏な空気の中でドキドキしながら観ました。
メディアスクラムの描写がややステレオタイプで一瞬冷めたけれど、離反していく周囲の人々の匿名性や
>>続きを読む

ドリーム(2016年製作の映画)

4.0

正統派でウェルメイド。でもストレートで前進的なメッセージが込められた名作だと思います。

劇中「先に宇宙に到達した者が宇宙のルールを決めるのだ」と高説を垂れる下りがあります。一方でこの映画で次々と黒人
>>続きを読む

アルプススタンドのはしの方(2020年製作の映画)

3.1

良い評価を沢山見聞きした上で、大事に見ようと時間を置きすぎたのか、期待が膨らみすぎたのか、感情のビッグウェーブは訪れないままでした。

高校野球について、私に固着している黒い記憶が、映画のエモーション
>>続きを読む

レザボア・ドッグス(1992年製作の映画)

3.8

2022.3.10再鑑賞

およそ20年ぶりの鑑賞でしょうか。もはや古典の風格を感じました(無論引用の集積であると承知の上で)。
久しぶりに見ると「さあ、ここで強盗のシーンが入るよな」と構えたところで
>>続きを読む

ぼくらの七日間戦争(1988年製作の映画)

3.1

2022.3.10何度目かの再鑑賞

突如こどもと鑑賞。公開当時、小学校高学年だった私は「中学校は恐ろしいところだ」と震えたものです。
令和のこどもにとっては「ヤバすぎてありえん」学校風景のようで、体
>>続きを読む

ロスト・ドーター(2021年製作の映画)

3.6

ひとり気ままな休暇のはずが、そこに現れた人々と小さな事件から、若い母だったころの禍根が蘇り、自らの発作的な行動で苦しむ物語。

現在の娘たちとの間に決定的な溝はないようですが、主人公の胸の中では深い後
>>続きを読む

バトル・オブ・ザ・セクシーズ(2017年製作の映画)

3.8

国際女性デーに鑑賞。
男性優位のテニス界に対して異議申し立てとしての試合をビリー・ジーン・キングが挑んだ、と勘違いしていました。私が見ても醜悪だと感じるストレートな男性至上主義者の戯言に、真剣勝負で返
>>続きを読む

ティーンスピリット(2018年製作の映画)

3.1

白馬とエル・ファニング!彼女の美しさは堪能できますが、お話はちょっと…テンションがクライマックスに向けて右下がりになってしまいました。

圧倒的な歌唱力や誰もが認める表現力、のようなものを信じていない
>>続きを読む

タリーと私の秘密の時間(2018年製作の映画)

3.6

3人目の出産を経て、疲弊しきった専業主婦と若く完璧でイケてるナイトシッター。2人で過ごす中で育まれるシスターフッド、のような話かと思いきや。

「理想の母親像」や「完璧な家事への規範意識」の内面化とい
>>続きを読む

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.1

やばいな。予想通り観た者同士で語り合いたくなる作品です。

いわゆる「濱口メソッド」がその演出手法の紹介のように入れ子になっているのは意外だったこと。またこの作品でも、手話の登場人物がいて、その佇まい
>>続きを読む

止められるか、俺たちを(2018年製作の映画)

3.0

若松プロについては、独立プロダクションの先駆けとして梁山泊的存在だったのは知ってる。その程度の丸腰で鑑賞。

一時期在籍していた女性助監督を中心に、当時のプロダクション内の映画制作や人間関係を描く。と
>>続きを読む

悪人伝(2018年製作の映画)

3.9

電話中に殴られてもびくともせず、車に轢かれても致命傷にならないマ・ドンソク!
そんなのを襲ってしまった全く運のない殺人鬼!(文字通り無差別に襲うことには誠実だった結果とも言えるか…)

連続殺人鬼を警
>>続きを読む

ミックステープ 伝えられずにいたこと(2021年製作の映画)

3.8

亡き両親の作ったミックステープを再現するのに、家にはCDもアナログレコードも無い。1999年、日本はMDが普及してたけれどアメリカでは全く売れずというのを知ってると「おおーカセットに一曲ずつダビングし>>続きを読む

フルートベール駅で(2013年製作の映画)

3.7

映画は実際の事件の目撃映像から始まります。冒頭から悲しい結末が待っていることを示して、ドキュメンタリー的カメラワークで緊張感を高めながら、事件当日の1日を追っていきます。

服役の過去があり、仕事も未
>>続きを読む

ゴーストバスターズ/アフターライフ(2021年製作の映画)

4.2

とても良かったです!メタ的な感想になってしまうけれど、オリジナルから続く世界線が現実の時間の流れと一致してるというのは、こんなに気持ちいいことかと感じました(我々はこの20年、続編やリブートを見せられ>>続きを読む