トラディショナルさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

トラディショナル

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市子(2023年製作の映画)

4.0

胸を打たれたり余韻に浸ったりはあまりしなかったが、緊張が緩まない演出で終始引き込まれ続けるエンターテインメント作品。

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)

4.5

先の戦争でなにが奪われたかではなく、戦争というものが普遍的に何を奪っていくかを心に訴えかける豊かなアニメーション表現。

泰明ちゃんのシーンで吹く風が美しくていちいち胸を打つ。ラスト10分くらい泣きっ
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ゲット・クレイジー(1983年製作の映画)

4.2

ハチャメチャさの中にも品がある。

クライマックスで蛍の光が流れるところ、可笑しくて幸せで儚くていっぱいいっぱいになった。

源氏物語(1987年製作の映画)

3.8

女が居る空間に、男が通うというあの時代の恋愛に対して、それぞれの寝床の装飾で女性の人物像を色づけするアプローチが原作を読んでいるよりわかり易くて良かった。

それぞれ大事なところの描写が日本的な美に満
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キャロル(2015年製作の映画)

4.3

窓越しで、または家の壁に隠れて盗み見ることで成立していたキャロルとテレーズのそれぞれ視線に、ドラマを通して色んな意味が乗っかり、開けた空間でひとつに重ねるラストシーンのカタルシスったらない。

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

4.2

昭和後期に資本主義と科学がもたらした「永遠」という非人間的で不健康な悪を、「桜は散るから美しい」という日本的な感性で打ち砕く。

正欲(2023年製作の映画)

4.0

窓ガラス割るところから共同生活はじめるところまでもっていく緩めかた、新垣結衣じゃなきゃできなかった。

水のイメージが画面に映ることで始めてその欲望たちに命が通い、映画になってやっと完成した感じ。

王国(あるいはその家について)(2018年製作の映画)

4.2

絵上手い人が線を重ねてスケッチするように、同じ言葉をもってして見えないものを形にしようとすることについてのドキュメンタリー。どれもぴったりではないけれど、どれもが少しずつ聖なる中心(=王国)をかすめて>>続きを読む

ナナメのろうか(2022年製作の映画)

4.3

映画って、たくさんの場面を繋いでひとつにつなげる芸術だと思ってたけど、逆にそのモンタージュによってひとつの空間を切り裂くこともできるんだなぁ。その不安を支える音の演出も冴えていた。

(2023年製作の映画)

4.1

さまざまな媒体で英雄伝として描かれてきた戦国時代を「いや、普通に人が人を殺しまくる頭おかしい時代だかんね?」と冷静に思い直させてくれる。

信長の品のなさを演技で余すことなく表現した加瀬亮もさながら、
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.5

設定と展開にはそりゃオリジナリティあるけども、脚本に関してはよくもまぁこんなにもどこかで聴いたセリフのやりとりだけで2時間分書けたもんだって凡庸さ。

敷島が乗り越えるべきはあの島でゴジラを前に"撃て
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それでも私は生きていく(2022年製作の映画)

3.8

「大人って大変……」をこれでもかと見せられてからの、子どもには絶対それを見せまいと振る舞うクリスマスのシーンでボロボロ泣いてしまった。

最初のキスシーンとか休日どうするの?から押し倒すシーンとかの、
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アダプション/ある母と娘の記録(1975年製作の映画)

4.1

レストランで二人食事するシーンの歪さと美しさがごちゃまぜになってどう見たらいいかわからない感じが良かった。

生活音が誇張されているかと思うくらいはっきりと聞こえてきてフェティシズムを感じた。

オープニング・ナイト(1978年製作の映画)

4.0

かたときも留まらず常に"何かが起こっている"のを見つめるしかできないまま流転に巻き込まれていく演劇的な体験ができる。

これから始まりますよ!とスタッフが階段の下から大声で伝えるショットがなぜか忘れら
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キリエのうた(2023年製作の映画)

3.5

3時間という長い尺が説明のためだけに使われていて時間の無駄。

歌を聴きたいのに音の演出がからっきしだった。「聞きたくないよ雑音ばかり」と歌ってるわりに劇中の雑音が全く耳に刺さらない。地震のところとか
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白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)

4.1

どこに連れて行かれるかわからない、切れ目のない感じがそれこそジャズのセッションみたいで楽しかった。

Totem(原題)(2023年製作の映画)

3.8

エリセ的な静謐で繊細な映画を期待していたから、話している人を手持ちで追い続けるだけのカメラワークは退屈だった。(ラストのラストで見たい画が出てきた。)

画はつまらないけど、パーティーでガヤガヤしてる
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ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY(2022年製作の映画)

3.8

TIFF2023期間中の屋外上映でやってて、なんとなくボーッと見ていた

ちょっと駆け足でドラマに入り込めなかったが、明らかな転落人生の最期を"一番輝いていたときの幻を見ながら死んでいった"と解釈する
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アンダーカレント(2023年製作の映画)

3.9

衣装、美術、芝居、音響、撮影が同じ方向を向いていて、まさに銭湯ののれんをくぐって出たときのようなやわらかい心地よさを感じた。そのなかで、人知れず湯を沸かす薪火のように燃えたぎる人間らしさが"底流する">>続きを読む

まなみ100%(2023年製作の映画)

4.0

本当に愛した人とはつながらない狡さをもっているから、逞しく図々しく生きていけるの。

ラストの桜の一枚絵が美しすぎる、

ノー・ホーム・ムーヴィー(2015年製作の映画)

4.2

こんなにも深くあたたかい情愛を描きながら、孤独に苛まれるショットがあちらこちらに挟まれるのがシャンタル・アケルマンの映画で、だから私は惹かれるのだと思った。

傑作かどうかはどうでもよくて、私の好きな
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街をぶっ飛ばせ(1968年製作の映画)

4.0

食べる(=生きる)ことと、ドアの隙間をテープで埋める(=死ぬ)こと、掃除することと散らかすことがそれぞれ並行して行われているのが面白かった。

アケルマン映画で見慣れたキッチンの感じ(構図のせいか道具
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故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)

3.7

手紙が書かれた時期と、見ている映像が撮られた時期とがずれているのが大事だと思った。まぁ、寝たけど。

メイ(2023年製作の映画)

3.9

上着と髪とで首が見えない着ぐるみみたいなルックのメイさんが可愛かった

適度に煙たがられながら最低限に人とのぬくもりにふれて自由に過ごすこんな老後が羨ましいと思った。

ラヴ・ストリームス(1983年製作の映画)

4.0

抑えがきいた演出で言葉のひとつひとつに重みがある。姉弟ともに、愛を説きながら他者に依存せずおのれに向き合っているところが良かった。

これから何度も見ていったとき、嫌いなとこはひとつも生まれず、好きな
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あの夏、いちばん静かな海。(1991年製作の映画)

4.1

若さも躍動も不在もすべて呑みこんでしまう圧倒的な海。それを見つめる人の視線とと水平線は必ず直交し、キャメラも徹底して2つのあいだを切り返していく。キタノブルーは海の青、人を包みこまない冷たい断絶の色。

11×14(1977年製作の映画)

4.1

皿洗いする母、時間をもて余す父、身体を拭く息子のカット、最後に誰もいなくなって音まで止んだときの気持ちよさが半端じゃなかった。

ここ数年イメフォに通って、ケリー・ライカート→『WANDA』→ジェーム
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ソゴビ(2002年製作の映画)

4.0

ワンカット2分30秒と決まっているが故、水を汲みに来たヘリが飛んでいった静かな水面を無造作に映し続けたり、かと思えば貨物列車が通り過ぎるまでは待てなかったりする。主観を取り除いて映すからこその、人間の>>続きを読む

さらば、わが愛/覇王別姫 4K(1993年製作の映画)

4.0

蝶衣と小樓の人生、中国の歴史、『覇王別姫』の劇、さまざまな物語が複雑に絡み合う壮大な絵巻物。大きなものに逆らうことができずに破滅していくアジア的な感性が悲劇的。

(小樓ただのおっさんすぎる……(笑)
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エリザベート 1878(2022年製作の映画)

3.7

"Corsage"に抑えつけられたように静かで厳かな画面からでもエリザベートのふつふつと湧き上がる内面が伝わってくる。

劇伴が良かった。

ソナチネ(1993年製作の映画)

4.4

死と隣あわせの遊びの儚くも眩しい時間。画面に映るもの以上に豊かな色んなものが混ざった感覚がずっと押し寄せてくる。「死ぬの怖がってると余計死にたくなっちゃう」みたいな、望む通りに行かない不気味な世界に翻>>続きを読む

特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト(2023年製作の映画)

4.2

終盤のつばめと久美子がマリンバを運ぶシーンにじっくり時間を割くなんてことをこの手のアニメがやってくれるなんて。その後のマリンバとユーフォニアムの演奏にそのつかずはなれずの距離感を取り入れてることも含め>>続きを読む

長江哀歌(ちょうこうエレジー)(2006年製作の映画)

3.8

胸につっかえるものがあったとき、煙を「吐く」男と、水を「飲む」女。

世界(2004年製作の映画)

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結構寝てしまったけど、絶対に良いということはわかった。どこかでもう一度会いたい。

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

3.7

島、ホテル、船……"閉じ込められる"ことによる演劇っぼさはウェスの1つの作家性で、現代から離れて"電波"を排除する映画的仕掛けは、他の作家も見倣ってほしい。でも出られないことによる焦りとか奮闘とか、そ>>続きを読む

ママと娼婦 4Kデジタルリマスター版(1973年製作の映画)

3.8

ヴェロニカが娼婦で、マリーがママでっていう単純な構図ではなく、それぞれに両面を背負わせているのだと思った。