大傑作。陰影のバランスが見事で、のっぺりとした未決囚収容所の空間に人物たちの衣服の皺が落とす影だけが黒く沈む。にこやかに差し入れの食べものを分け合う冒頭では、脱獄ものにあるまじき和気藹々とした雰囲気に>>続きを読む
片岡一郎氏の活弁つきで鑑賞。ラストの殺陣長回しが長く激しくて、阪妻がぶっ倒れるんじゃないかとハラハラしてた。けっこうな高さの塀の上から阪妻がスタントなしで飛び降りたり、転んだ役人が殺到する役人たちにボ>>続きを読む
ヴィクトル・シェストレム監督・主演。前半は漁師が戦争に巻き込まれ、捕虜になっている間に妻子を喪うという浦島説話の近代バージョン。後半は老いた漁師が自分を捕らえた英国軍人とその妻子をたまたま助けてしまい>>続きを読む
・お人好しの裏に隠れた家柄の悲しみ。階級史観、財産の多寡だけでは見えない地主の葛藤がある。GHQの農地開放で没落した福井の庄屋だった母方の実家を思い出した。
・家財の売り立てから逃げて芸者あげる場面で>>続きを読む
15年前に観た。アレン・ギンズバーグと一緒にHow does it feel?
かつての名古屋シネマテークで。歌、歌、歌の映画。バカバカしくて笑ってばかり。
「たけしがヤクザの頭をビール瓶でパーン!→渡嘉敷勝男がもう一人を拳で倒す」をなぜか2セットやる場面で爆笑した。カメラの動きもやばいし。
群像の構成、ショット、編集、ひとつとして無駄のない完璧な映画。傑作。
ジョン・フォード『三悪人』遠景の峩々たる山並や、スウー族の土地争奪で一斉に駆け出す無数の騎馬と馬車など迫力ある場面は多いが、ハンターの郎党たちが火をつけたワゴンを礼拝堂に突撃させるシーンの暴力性が目に>>続きを読む
風の映像だけで感動に打ち震えることはこの映画の後にも先にもないだろう。冒頭のナレーション字幕やラストのリリアン・ギッシュの台詞字幕が打ち出す西洋的な自然対人間の構図は白人大衆を納得させるための立前で、>>続きを読む
全裸でベッドの上に立ち、カメラに背を向けてじっとしている男性。まるでフランシス・ベーコンの絵画だが、絵画はフィクションたり得る一方で、彼はほんとうに全裸でそこに立っている。しばしの静寂、やがてタオルに>>続きを読む
リリアン・ギッシュの眼の饒舌なことよ! 彼女以上に眼で演技できる役者はいないのでは。そしてこんなコテコテのプロットに心を持っていかれまいと踏ん張っていたが、ラスト10秒足らずのロングショットに持ってい>>続きを読む
あほなのでオチわからなかった。筋に興味がないのでミステリ的な筋の複雑さを楽しめない。同じデンゼル・ワシントンのネゴシエーションものでもトニー・スコットの『サブウェイ123』は映画として圧倒的に楽しかっ>>続きを読む
1950年代後半中国共産党による百家争鳴と反右派闘争で右派と断定された人々が、ゴビ砂漠にある夾辺溝の再教育収容所に送り込まれる。1958-62年には旱魃と大躍進政策の失策とが重なって起きた全国的な飢饉>>続きを読む
美術市場で生きていく志のある美大生には最上の教材では。なんかよくわかんない絵を描いてるおじいちゃん的なポジションで映されるラリー・プーンズが、自己のスタイル本の破壊の果てにラストで映像越しに伝わる傑作>>続きを読む
これこそ「男同士の絆」の映画だ。女たちは(たとえどれほど人数が増えようとも!)どこまでも媒介物で、主人と召使の二者関係が等距離のままぐるぐる回転しつづける。ヘーゲルの「主人と奴隷の弁証法」ではないが、>>続きを読む
面白かったけど、言われるほどか? というのが正直な感想。剥製屋の漁網越しローアングルのアクションシーンとか、深く沈んだ黒などには撮影監督の腕が光る。けれども筋書がメロドラマと犯罪映画のどっちつかずで、>>続きを読む
本作を観ただけで判断してはいけないと思った。前作や、欲を言えば同時代の香港映画史における位置づけをしないと、この映画が面白いのかどうかわからない。注釈が必要。
そのうえで、スローモーションになってもま>>続きを読む
ビョークの曲はすばらしいがカトリーヌ・ドヌーヴも良い。それだけに救われている、しょうもない映画。
しょうもない作品ではあるが、2011年3月11日の地震のときに観ていたので記憶に残っている。場所はシネマスコーレで、揺れた瞬間は死んでいるはずのキツネが起き出しウィレム・デフォーに向かって人語を話すシ>>続きを読む
しょうもない映画ではあるが、鬱になったキルスティン・ダンストを姉のシャルロット・ゲンスブールが風呂に入れようとするも、拒否して泣き出すシーンだけは(鬱の症例として)印象に残っている。
ファスビンダーを見ていると、ドイツは16世紀ルネサンス(グリューネヴァルト、ホルバイン、etc.)から、キッチュとグロテスクの感性を失っていないことがわかる。この映画そのものが、病んで視神経が敏感にな>>続きを読む
傑作! 今となってはちょっと恥ずかしくなる過剰な演出(ジャズをBGMに目だけライトアップ。あと『瞼の母』で効果テキメンだった回転カメラも今回ばかりは少し滑ってる)とか少しご都合主義の筋書とかは些細な瑕>>続きを読む
筋は面白いのよ。緻密に計算されているであろう台詞の応酬も見事。でも筋が勝ってしまって、映像としての面白さを犠牲にしている(この感想は岸田國士の戯曲が原作と事前に知ってしまった先入見によるところが多分に>>続きを読む
盲人がケーキを突然ぐちゃぐちゃに握りつぶしたり、幽霊のような男がついてくるのが汚れたガラス越しに見えたりと、不条理に思えるショットはいずれものちになってその論理的な意味が開示されるのだが、それでも映像>>続きを読む
たしか4歳くらいに最初に観たエイリアン。気に入って何度も見返していた記憶がある。いま観るとフェミニズム映画として優秀(大野左紀子の批評を参照)。
1の静謐さとは異なる路線を選んだのはいいが、テーマパークのアトラクションみたいな安っぽさがどうしても滲み出る。エイリアンシリーズの方向性を決定づけてしまったように思う。