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死霊魂のmihiroのレビュー・感想・評価

死霊魂(2018年製作の映画)
5.0
1950年代後半中国共産党による百家争鳴と反右派闘争で右派と断定された人々が、ゴビ砂漠にある夾辺溝の再教育収容所に送り込まれる。1958-62年には旱魃と大躍進政策の失策とが重なって起きた全国的な飢饉もあり、夾辺溝では収容者が次々と餓死。その生存者へのインタビュー。
はじめは506分という長さに躊躇したが、観てみればまるで長さを感じず、生存者たちの語りにいつまでも引き込まれていた。小型カメラによる定点ショットがほとんどだが飽きない。話題の重複にさえ話者のこだわりがあるのかもしれず、そこを切らない編集に敬意を覚える。
思うに、ワン・ビンによるドキュメンタリーの異様な長さは、「今作限りで二度と発表できないのもしれない」という、中国政治と取材対象との間に挟まれた緊張感に由来するのかもしれない。常に監視の目が光る中国で細切れに作っていたら、手元にある人々の記録を出しきれない。アーカイブ=歴史への意志。
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