津次郎さんの映画レビュー・感想・評価 - 24ページ目

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(2017年製作の映画)

4.0

子供たちの恐怖=ITとはメタファーだと思う。
弟を失った、親に虐待された、いじめられたなど、子供時代に体験した逆境が、恐怖を形成している。
夏休み、子供達はITをやっつけて=克服して、ひとまわり成長す
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アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)

5.0

レビューするのが陳腐に思える。解釈するより感じる映画。これまで持っていた映画の定義をくつがえす体験でした。

はじめから終わりまで近いカメラがアデルの表情を追う。が、演技の気配がない。いつしか自分も映
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サンドラの週末(2014年製作の映画)

4.0

サンドラは週末の二日と一晩を費やして同僚16人の一軒一軒を廻る。
その姿を淡々と追うのがこの映画のすべて。
フランス語の原題からして「二日と一晩」であり、二日と一晩をかけて、ひたすら「私の復職のために
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アラバマ物語(1962年製作の映画)

5.0

To Kill a Mockingbirdはハーパーリーという人の小説ですが多くの人にとって映画アラバマ物語(1962)の原作であろうかと思います。人種差別と貧困が織り込まれたドラマで──IMDBでも>>続きを読む

エル ELLE(2016年製作の映画)

4.0

現代にH・G・ウェルズの透明人間を翻案するとなればエロネタになるのは免れない。
バーホーベン自身HollowMan(2000)を自虐的に振り返っていて「スタジオの奴隷になった気がした、空っぽな(Hol
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ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)

4.3

オギーの学校初日に先生が今月の格言を説く。
黒板には、
When given the choice between being right or being kind.
Choose kind.
と書
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ウインド・リバー(2017年製作の映画)

4.5

アベンジャーズのエイジオブウルトロンで、ホークアイのジェレミーレナーが、スカーレットウィッチのエリザベスオルセンを叱咤する場面がある。

ソコヴィアが宙に浮いている時で「わたしのせいで」と良心の呵責に
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最後の追跡(2016年製作の映画)

5.0

終始Happy Go Luckyでいながら、やる時はやる。酷薄なようでいて、じつは篤い。テキサスレンジャーのマーカスが、トゥルーグリットのシェリフ、コグバーンとピッタリ重なります。弄りまくっていた相棒>>続きを読む

万引き家族(2018年製作の映画)

5.0

この映画に冷評をつける人のレビューで多いのが、親が子どもに万引きさせるのは、いかんじゃないか、という倫理への非難です。
しかし、それは言うまでもないことかと思います。

滔滔と倫理を説かれ、ひょっとし
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ハッピー・デス・デイ(2017年製作の映画)

3.5

オマージュのままいくと思っていたが、あまりにそのままなので後半でカーターにGroundhog Dayをことを喋らせる。

主役のツリーはJessica Rotheという女優で、絶叫しつつコミカルなバラ
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ザ・フォーリナー/復讐者(2017年製作の映画)

4.0

ジャッキーチェンはアクションヒーローにこだわる俳優だと思います。どんなアクションスターでも老境に入ると、またそうでなくても、普通のドラマに出演しますが、ジャッキーは徹してアクション映画の主役をはります>>続きを読む

この世に私の居場所なんてない(2017年製作の映画)

3.8

Blue Ruinで見たトッチャンボーイな感じの俳優Macon Blairが監督している。imdbを見たらDirectorの欄がこれだけだった。だが映画には完成されたスタイルがある。

何か妙に共鳴す
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ウォールフラワー(2012年製作の映画)

5.0

イギリス勢がアメリカのチャートを席巻すると、ブリティッシュインヴェイジョンと呼ばれる。
何度かあるが、これは80年代の話。
映画でかかる、スミス、XTC、ニューオーダー、デキミラetcは、自分にもど真
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アースクエイクバード(2019年製作の映画)

3.0

変わった話である。
日本は、外国人が描いたややズレ感のある日本だが、むしろ妙味だった。

禎司には往年の日活のような艶があり、ルーシーとリリーにはヨーロッパとアメリカのような対比があった。

どこへ落
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バンブルビー(2018年製作の映画)

3.8

トランスフォーマーみたいな感じだが予備知識は全然ない。スタインフェルドに惹かれて見た。
蜂に見える黄色いロボットが恒星間戦争で追われ行き着いた先が地球である。残虐な追手を逃れ、フォルクスワーゲンの姿で
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下妻物語(2004年製作の映画)

5.0

翔んで埼玉は魔夜峰央の1983年の漫画である。
2020年現在、37年前ということになる。

あまり記憶していないが、その当時、東京人たちは、本気で近県、埼玉・茨城・千葉などをばかにしていた。かもしれ
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クリスマスに降る雪は(2019年製作の映画)

3.5

おしせまると、クリスマスものが出てくる。
かるくて、たのしい。

アメリカの上手なドラマを見ていて感じるのは公平さ。
白も黄も黒もぜんぶ揃って、かれらが、それぞれの外見のちがいをまったく気に留めず、コ
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ビフォア・アイ・フォール(2017年製作の映画)

3.3

人気女優の顔に一定の統一感を見ることがある。
エマワトソンとキーナンシプカは姉妹のようでもある。
クリステンスチュアートとテリーサパーマーは双子のようでもある。

ゾーイドゥイッチとジェシカローテは異
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恋はデジャ・ブ(1993年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

同じ一日が何度も繰り返される。映画人ならだれでも二の足を踏むプロットだと思う。
Happy Death Day(2017)は女性版かつホラー版だがオマージュとはいえ重圧に耐えきれず登場人物に「君の話は
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パドルトン(2019年製作の映画)

4.0

Mark Duplassは独立系映画にしばしば見る俳優で「クリープ」で名を馳せた。
POVホラー映画で2014年に初作、2017年に続編が撮られている。
クリープは後発なPOVでありながら、見せるアイ
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靴職人と魔法のミシン(2014年製作の映画)

3.8

アメリカの批評家たちはサンドラーに対して一定の追い風を持っている。目立ちたがりだし、癖っぽいし、なんとなく理由は呑める。結局この映画もトムマッカーシー唯一の汚点みたいに言われてしまった。

だけどわた
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ユ・ヨルの音楽アルバム(2019年製作の映画)

4.0

盛り上がって落ちる。また盛り上がって落ちる。でこぼこなシンデレラ曲線だけで引っ張る。ディティールはさらりとしている。悪い奴と縁の切れない男。まじめな女。その立ち位置は明解だけれど、事件はたいして描かな>>続きを読む

シャロウ・グレイブ(1994年製作の映画)

3.8

ケリーフォックスといえば初主演のエンジェルアットマイテーブルで既に大女優だった。この映画を見ると若い頃のアグレッシブな魅力がよくわかる。射るような碧眼をしている。威嚇してるわけじゃないのに威嚇できるキ>>続きを読む

ヤング≒アダルト(2011年製作の映画)

4.0

わたしの高校には卒業生ぜんたいのパーティーがある。300人くらいになるので、大味なことになる。おちついて話というより、名刺交換しまくるとか、お酌にまわるとか、ただ側にいる知友と話していることもできるが>>続きを読む

横道世之介(2013年製作の映画)

5.0

見たときは、それほど印象は強くなかったのだが、数年経って、じわじわと、あれはいい映画だった、と思い出した。
まるで、映画のなかの人たちがみんなして横道世之介のことを回想するように、この映画を思い出した
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アンダー・ユア・ベッド(2019年製作の映画)

3.8

氷菓を見たとき「おや」と思った。
この映画が原作の面白さに依存しているのは解る。
また、かの京アニの厖大な仕事をそのまま絵コンテにしているのも解る。
ただし、個人的に、映画は面白かった。
山崎賢人マイ
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氷菓(2017年製作の映画)

4.5

原作は読んでいません。

ちなみに私はこれを先に見ました。後になってアニメ版の氷菓も見ました。
とくにアニメ好きではありません。ただ宮崎駿や新海誠や押井守や細田守など著名なアニメーターのネームバリュー
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インビテーション/不吉な招待状(2015年製作の映画)

4.0

日常で、こいつ変だぞ、こりゃ何かおかしいぞ、って人や事がある。
それでも、なんとなく、多数派同調性バイアスや公衆意識が、それを日常のなかに納めようとする。
だいじょうぶっていう自分もいるし、ヤバいよっ
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二ツ星の料理人(2015年製作の映画)

3.3

エンタメニュースでキムタクの新ドラマとこれの類似性が指摘されていたので観た。確かに似てた。かつて失敗をやらかして敵も多くて傲慢な調理界の異端児が、水滸伝よろしく仲間を集めて三つ星を目指す。だいたい話も>>続きを読む

モンスター 変身する美女(2014年製作の映画)

4.0

妙に残っている映画。
イタリアを旅するアメリカ人。
金はないがきままなバックパッカー。
が、出会ったヨーロピアンな麗人。
恋に落ちる。

それらが順当に展開するので、そのあとにくる異形譚におどろく。
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恋のクリスマス大作戦(2004年製作の映画)

3.5

ベンアフレックというひとはまぬけな役のときかわいい。
長身を手持ちぶさたにしているときジミースチュアート的人の良さがにじみ出る。
この映画はおよそ十把一絡げにされるクリスマスジャンクだが、妙に残ってい
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世界にひとつのプレイブック(2012年製作の映画)

4.0

ジェニファーローレンスには素が感じられない。
じぶんを演出しちゃうタイプで顕示欲が強そう。
貞淑でなくスラッティー。
芯が太く、気が強く、上昇志向がある。
優柔不断ではないが、素直さに欠ける。

オス
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ジョー・ブラックをよろしく(1998年製作の映画)

3.2

かつて話題になったが終ぞ見ていなかった。
ミッドナイトランという映画が好きでマーティンブレストにウォルターヒルのような乾きやアクションを期待したが、これは濡れっぱなしのラブストーリーだった。
映画その
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潜水服は蝶の夢を見る(2007年製作の映画)

4.0

正直なところ、片眼球しか動かない四肢麻痺の患者にたいして、ここまで献身的なことに感心した。よく知らない世界だが、もっと素っ気ない待遇をされるような気がしたからだ。ましてあの方法で本を書かしめたことに驚>>続きを読む

ルディ・レイ・ムーア(2019年製作の映画)

5.0

ブラックスプロイテーションと言えば日本ではこまっしゃくれた映画愛好家が能書きをたれるカルトだが、この映画を観ると、かれの動機が切実で原始的なことがわかる。

カルトとは観衆が見いだすもの──である場合
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いま、輝くときに(2013年製作の映画)

4.0

マイルズテラーとシェイリーンウッドリーがブレイクした映画。すなわち、映画のなかでこれから世界に向かって羽ばたこうとする若い二人と、現実で役者として注目を浴びることが同時に起きている。それがこの映画の瑞>>続きを読む