Tomさんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

夜、鳥たちが啼く(2022年製作の映画)

3.9

孤独で不安なうまくいかない日々。窮屈な心の鳥籠に閉じ込められ,傷を舐め合い隙間を埋めて”だるまさんが転んだ”の様に振り返れば縮まっていく距離と解放感,互いが心に宿っていく感覚が心地良い。微かな陽の光と>>続きを読む

あのこと(2021年製作の映画)

3.8

中絶が違法だった時代のフランスで妊娠してしまった女子大生。妊娠による身体の変化過程とそれが齎す孤独や恐怖,精神的・肉体的苦痛を追体験。一瞬たりとも彼女から離れず目を逸させてくれないカメラとあまりの冷徹>>続きを読む

マスター 先生が来る!(2021年製作の映画)

3.8

ありとあらゆる中毒や依存症が蔓延る犯罪と争いの絶えない🇮🇳の底なし闇の問題を根から葉まで描きつつも役者の圧倒的な力でエンタメとして見事に昇華。"大将"と"宝"のWヴィジャイによる夢の対決だけでもお釣り>>続きを読む

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

3.3

被害者面して愛と恐怖を振り撒いてきた無自覚な男達。A.ガーランドの繊細な演出や色彩で世に蔓延る男性性の負の側面を突きつける。やまびこのように反響し続ける叫びは犠牲になってきた,これからも続く女性達の叫>>続きを読む

ザ・メニュー(2022年製作の映画)

3.2

何だこの口角が上下するかしないかの葛藤と気まずさは。今年一狂った変な映画だ。皆ヤバすぎて笑っちゃうけど笑えなくて。お口あんぐりって感じで監督の手の上で踊らされている気分。好きな作品では無いけど,アニャ>>続きを読む

Old Henry(原題)(2021年製作の映画)

3.7

昔ながらの漢臭くてカッコいい西部劇の良作。無音と銃声の緩急で緊張感を演出。撮影と音楽も素晴らしい。厳しくも不器用な父の愛が沁みる。地味な中盤から一転,実にヒストリカらしい嬉しいサプライズにマジか!!と>>続きを読む

やさしい人(2013年製作の映画)

3.4

ギヨームブラック監督作はただ話してるだけのシーンが本当に心地よくて楽しい。詩を聞いて喜ぶワンコも女性大好きパパも可愛すぎて愛おしいw排泄シーンでこんなに笑ったの初めて。とんでもない方向に走り始めて手の>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

3.3

新海誠が捉える日本の街並みと共に震災と真っ向から向き合う強い想いは受け取った。ただ詰め込み過ぎて世界観と設定,キャラの表情が乏しく気持ちも追いつかなかった。震災で心に傷を負った人へ向けたメッセージは傷>>続きを読む

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)

4.4

🇪🇸内戦の歴史に今を生きる人々を重ねて描く多様に変わる濃密な母性と愛の形。0か1かではない,複雑な心の内を何度も扉を開いては閉じて魅せていく。監督の色彩感覚や重さを保ちつつも軽やかな語り口,大胆な編集>>続きを読む

箪笥<たんす>(2003年製作の映画)

3.4

ミスリードが巧くフェアなサスペンスとして面白い。家族の闇と哀しみの底なし沼にどっぷり嵌った。違和感の蓄積と回収のタイミングが絶妙で観客を信じた最低限の説明と解釈の余地を残すラストもいい。精神病と幽霊が>>続きを読む

ナイトライド 時間は嗤う(2021年製作の映画)

3.6

麻薬ディーラーから足を洗おうと最後の賭けに出る長い夜。94分ワンカットは助手席に乗った様な緊張感。声と表情のみで感情を魅せ,画を持たせ,色んな相手と頭フル回転で通話し続ける役者の演技も素晴らしい。もし>>続きを読む

画家と泥棒(2020年製作の映画)

4.0

絵を盗まれた画家と盗んだ泥棒の奇跡のような不思議な共鳴。"見る,見られる"ことを通して互いの心,価値観に深くまで触れ,引き寄せられる生の感覚は複雑で実に新鮮。彼が絵を見た瞬間の反応…これぞドキュメンタ>>続きを読む

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)

1.8

試写にて。湿地で一人で孤独に生き抜く少女を通して差別や家族など社会問題を問う本作。ミステリーとしても法廷劇としても人間ドラマとしてもフックも弱く映画としても説明的だったり湿地での生活感が全く感じられず>>続きを読む

Arc アーク(2021年製作の映画)

3.0

不老不死という壮大なテーマに挑んだ事は素晴らしいし実際"死の存在が生を豊かにするのか"考えさせられた。だが決断の描写が弱く流されて先延ばししてるだけに見えた。ある意味人間らしいんだけども。石川慶にして>>続きを読む

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

3.8

戦争映画の原点に戻り圧倒的な現実味のある映像でシンプルに戦争の恐怖と無意味さを描く。戦争に命を懸ける価値など微塵もない。人の死の上の英雄なんて糞くらいだ。たかが上の名誉や意地如きで奪われていく命。今こ>>続きを読む

ウェンデルとワイルド(2022年製作の映画)

3.3

過去に縛られた少女が負の連鎖を断ち切る成長物語。物語的にかなり入り組んでいて整理されてない感は否めないがダークな世界観で織りなすストップモーションアニメーションが最高。随所にジョーダンピール味も感じる>>続きを読む

シスター 夏のわかれ道(2021年製作の映画)

3.6

自分か家族か。早くから自立し一生懸命積み上げたものが壊され誰も理解も助けてもくれない…。2人の気持ちが分かりすぎて,辛すぎて見てられないよ…。やり場無き怒りに震えながら"頑張れ"と心の中で叫び続けた。>>続きを読む

恋人はアンバー(2020年製作の映画)

3.8

ゲイとレズビアンが互いの性の問題を隠す為に恋人のふりをする物語。2人から見える生き辛い世界や憧れ,葛藤が丁寧に描かれていて良かった。家族と観客と一緒にこの愛おしい2人を応援したくなる。足掻いてもがいて>>続きを読む

犯罪都市 THE ROUNDUP(2022年製作の映画)

3.7

"市民を守る為に悪い奴らを捕まえたい"一心でチームで頑張る感じがやっぱり好き。彼らと対等に張り合う悪役側も魅力的。前作からヤリ過ぎな取り調べも笑いも痛快アクションも増し増しでニヤリ。ブラック職場ネタは>>続きを読む

ペルシャン・レッスン 戦場の教室(2020年製作の映画)

3.9

ナチスドイツの強制収容所でペルシャ人になりすまし死刑を免れたユダヤ人。将校に教える架空のペルシャ語。嘘がバレたら死。単語を一語一語覚えるていく中で収容所に入り亡くなっていくユダヤ人一人一人の顔と名前,>>続きを読む

スケアリーフレンド(2022年製作の映画)

2.3

PFFアワード2022準グランプリ作品。自転車で子供を轢く殺人鬼とそれを追うお人形と喋れる少女の物語。"変でもいいんだよ,心が篭ってれば"この台詞を体現したような作品。手作り感満載でお金がなくても手間>>続きを読む

水槽(2022年製作の映画)

1.5

図書館の本を勝手に千切る男女…。ミスミソウを彷彿とさせる赤と白を基調とした絵作りで,小説をそのまま映像化した様な台詞が印象的。何を言いたいのかは正直よく分からなかった。"分からないことは存在しないこと>>続きを読む

J005311(2022年製作の映画)

2.5

人生に絶望した男がひったくり男へ最期の願いで"ある場所は連れてって欲しい"と頼むが…。常に隣に死を感じる生気を失った映像がいい。ただ終始寄りの絵と揺れる映像に画面酔いと,足音やカメラワーク含めカメラマ>>続きを読む

人生は二度とない(2011年製作の映画)

4.3

これだよ。こんな🇮🇳映画をずっと待ってた。自分の人生を見つめる旅。人生は一度きり。時に価値観のすれ違いや選択の失敗もあるかもしれない。でも焦らなくていい。後悔が無いよう自分の気持ちに素直に次を選べばい>>続きを読む

裸足で鳴らしてみせろ(2021年製作の映画)

3.7

視力を失った義母の為に日本(世界中)で音を集めるロードムービー。互いを感じる2人の小突き合いが実に微笑ましい。荒削りではあるが本来見えないものを魅せる音の演出や触感を伝える画等随所に光るものがある。最>>続きを読む

RRR(2022年製作の映画)

3.9

最高!!こんなの🇮🇳にしか出来ない。血湧き肉踊る圧倒的な熱量にアドレナリン全開。単純で素朴な物語が魅せ方とアイデアと金でここまで化けるのか…かなり強引さはあるものの,喜怒哀楽全方向に振り切れた,これぞ>>続きを読む

第三次世界大戦(2022年製作の映画)

1.7

東京国際映画祭にて。震災で妻と子を失った主人公。映画のエキストラで働いてたらヒトラー役が倒れ代役に抜擢されるが…。この映画のやりたい事,見せたいもの,キャラクター像さえ掴めないまま終わってしまった。文>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

4.6

構図や画角,色彩,音…全てが制御され余白で多くを語る美しい画が織り成す世界観が未知の世界へ連れていってくれる。人間の探求へ導く記憶の欠片の演出は凄すぎて言葉にできない。劇場を出て生と愛を実感し,世界が>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代(1994年製作の映画)

4.2

誰もが抱える不安や孤独をここまで演出できるものなのか。監督は天才だな。枠に囚われないカッコいい撮影と会話劇で魅せるユーモアが心地よい。自分勝手でどうしようもない皆が気づけば愛おしい。人間なんて所詮こん>>続きを読む

ステラ SEOUL MISSION(2022年製作の映画)

2.8

盗まれた3億の車を取り戻せ!!金もスマホも食べ物も何もない。頼りになるのは父のオンボロのステラだけ。一難去ってまた一難"どんな展開だよ?!"なドタバタ劇がコント調で楽しい。こんな笑いに振り切った韓国映>>続きを読む

風が吹くまま(1999年製作の映画)

3.7

キアロスタミの生と死へのポジティブな捉え方が好き。鳥や人の声,大自然とざわざわした生活音が心地よく何気ない日常の営みが愛おしい。一本道と川は人生のようで,皆が思ってるよりずっとシンプル。悲観的に待って>>続きを読む

トロール・ハンター(2010年製作の映画)

3.2

トロールって本当にいたんだ!!職人の如く仕事をこなすハンターと恐怖より撮れた嬉しさが勝るクルー達が微笑ましい。本作に期待するものを全て魅せてくれるのが素直に嬉しい。世界には僕達のまだ気づいてないことが>>続きを読む

べイビーわるきゅーれ(2021年製作の映画)

2.0

ビックリするほど波長が合わなかった。面白そうな台詞も聞き取れないストレスと音楽,効果音の微妙さや全然魅力的じゃないヤクザ描写も相まって乗れない。緩い日常とガチなアクションのギャップは面白いが,正直コン>>続きを読む

スティルウォーター(2021年製作の映画)

3.7

🇺🇸と🇫🇷,親と子。外の世界に触れ無意識な傲りと偏見に気付かされていく。娘の冤罪を証明する筈が気付けば新生活に浸りフラフラと目的を見失う。そこから一気に目が覚める終盤の構成は圧巻。竜巻で積み上げものが>>続きを読む

もっと超越した所へ。(2022年製作の映画)

3.0

女の優しさに甘える笑っちゃう程のクズ男達。オムニバスを編集で並列に繋ぎ演劇的に魅せる。人は何処かで時に折り合いをつけ,時に割り切って生きている。そんな恋愛のモヤっとした感情を吐き出させてくれる。超越の>>続きを読む

スペンサー ダイアナの決意(2021年製作の映画)

3.9

過去,現在,未来全てが決められ,歩くだけの人生。羽を取られ真珠の首輪をつけられて王室という檻に閉じ込められたダイアナの孤独と不安,心の叫びを見事に映像で表現して魅せる。K.スチュワートは勿論S.ホーキ>>続きを読む