乙郎さんさんの映画レビュー・感想・評価 - 74ページ目

フィギュアなあなた(2013年製作の映画)

4.0

いやー、変な映画だった。おそらくは『空気人形』に対する石井隆監督なりの解釈なんだと思うが、全編にわたってぶっとんでいる。柄本佑の演技のやばさ。それゆえの信用のおけなさ。そして、佐々木心音の熱演!まとも>>続きを読む

みな殺しの霊歌(1968年製作の映画)

4.0

非常に独特。バランスは明らかにおかしいし、ラストもぶつ切りなのだけれども、それゆえ変な余韻を残す。やはり黒と白のコントラストが理屈よりも先に生理的な反応を作り出している。この映画における佐藤允の行動原>>続きを読む

セデック・バレ 第二部 虹の橋(2011年製作の映画)

3.0

これはもう戦争映画の決定版といっていいのではないか。原始的な生活をする台湾民族の是非にかかる葛藤、不謹慎な言い方をすれば問答無用でおもしろい戦争描写、そして、台湾の雄大な自然にそこに住む人々の行う祭祀>>続きを読む

セレステ∞ジェシー(2012年製作の映画)

4.5

様々なテーマを整理して一つの脚本に落とし込み、しかもランタイムが90分と言う名作。かつ、そのテーマが今の自分にもどんぴしゃだった! 何よりもね、物語を切り上げるタイミングに感嘆した。主人公が成長しきる>>続きを読む

探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点(2013年製作の映画)

3.5

日本の娯楽映画で、出来が及第点以上だとそれだけで評価甘くなってしまう傾向があるのだが、それを差し引いても傑作!やはりススキノという舞台が最高に機能している。どことなく70年代的で、それゆえ主人公の二人>>続きを読む

千年の愉楽(2011年製作の映画)

4.0

これが遺作だなんてかっこよすぎるでしょ!まず思ったのが、本当に画面が豊潤。よくこんなロケーションを見つけ出してきたなと思ってしまう。若松監督の近年の作品は低予算だったこともあってか、屋内の撮影等では若>>続きを読む

ヴァイブレータ(2003年製作の映画)

3.5

悪くはない。はっとする映像もたくさんあった。ただ、うまく言えないけど、何か足りない気もするし、ただそれも意図の上のような気もする。ひょっとすると、肉体関係により始まった関係性のいびつさを描いているのか>>続きを読む

舟を編む(2013年製作の映画)

3.5

お気に入りの小説が映画化ということだったが、監督が石井裕也と聞いて多少不安に感じた。過去作を見る限り、テーマを声高に叫ぶ石井裕也の作風はこの作品に合っているように思えなかったから。しかし、その不安は杞>>続きを読む

スプリング・ブレイカーズ(2012年製作の映画)

4.0

まず映像がかっこいい!PV的ではあるのだけれども、クラブミュージックの持つ高揚感とともに、合間に感じる寂寞をも表現していて文学性すら感じた。どことなくアメリカンニューシネマの香りもする。最近の作品で類>>続きを読む

県庁おもてなし課(2013年製作の映画)

1.0

嫌いではないです。日曜の昼下がりに見るにはいい映画でした。 そもそもの問題なのだけど、原作の有川浩という人は「ラブコメを描きたい」という強固な作家性を持った人で、ぼくは楽しくみることができました。ただ>>続きを読む

赤目四十八瀧心中未遂(2003年製作の映画)

3.0

車谷長吉の傑作小説の映画化ということで、お膳立ては揃っていたけれども、何ていうか、最高の食材をうまく調理しきれなかった印象。基本、原作を忠実に映画化している。では何が足りないのかというと、やはり語りな>>続きを読む

クロユリ団地(2013年製作の映画)

3.5

二回目の鑑賞。一回目見たときより断然よかった。本当に怖いのは前田敦子演じる二宮明日香という女性ではないかと思った。初見時はこのコの顛末が気に食わなかったのだけれども、なんというか、彼女はこの映画内で一>>続きを読む

しわ(2011年製作の映画)

3.0

うーむ。素晴らしい作品であることを前提で述べたいが、今の自分にはまだ理解がおっつかない部分が多かった。つまり、「老いることは怖くない」というのがメッセージなのかもしれないけど、自分には正直まだ老いは怖>>続きを読む

四十九日のレシピ(2013年製作の映画)

4.0

とてもよかった!何度か落涙。ところどころテーマを台詞にしすぎじゃないかなと思ったが、それは言っても詮無いことなのかもしれない。なぜならこれは、映画で語る「少女論」なのだから。少女趣味・・・いわゆる旧家>>続きを読む

ばしゃ馬さんとビッグマウス(2013年製作の映画)

4.5

夢を抱かせる映画はいっぱいあるが、夢をあきらめるための映画はこれひとつしかないかもしれない。これはどこかメタ的に語ることを許さない側面がある。夢を言い訳にして様々なことを先延ばしにしたり、程度を知るの>>続きを読む

アフター・アース(2013年製作の映画)

2.0

うーむ、凡庸なSFである感はぬぐえない。要は、SF的ガジェットが考証が足りないせいか物語上の都合で出来ている気がして、世界観に奥行きが感じられなかった。ただ、ラストはよかった。このお話がきちんとSF的>>続きを読む

ベルリンファイル(2013年製作の映画)

3.0

スパイ映画というよりも工作員映画!楽しめました。とにかく冒頭がかっこいい!正直に言うと(意図的なものとはいえ)人物関係が錯綜してて、中盤興味を失うところがあったのですが、全体的にはかっこよさとか『裏切>>続きを読む

リアル 完全なる首長竜の日(2013年製作の映画)

3.0

一回目は物語を追ってしまって、凡庸だと感じていたのだけれども、今回見てその計算されつくした演出に舌を巻いた。例えば、センシングを終わった時に佐藤健がなぜ壁打ちテニスをしているのか、とか、あと過去が表出>>続きを読む

はじまりのみち(2013年製作の映画)

4.5

この映画には悪人はひとりも出てこない。これは、悪人なんか本当はいなくて、目に見えない何かが人を悪人にさせるのだという考えに基づいている。そういった状況に拮抗するために文化がある。目に見えない何かから解>>続きを読む

アフターショック(2012年製作の映画)

4.0

ひょおー、素晴らしい!新世代のホラー映画だったら『デビルズ・リジェクト』と同じくらい好きですね。前半部は『プロジェクトX』直結のクラブ描写で同時代性を掬い取っていくんだけど、ここの居心地の悪さが最高。>>続きを読む

ペーパーボーイ 真夏の引力(2012年製作の映画)

4.0

バランスとしてはいびつながらも、力強い語り口を持った映画として鑑賞。青春(童貞)映画であり、サスペンスであり、黒人映画でした。マシュー・マコノヒーが追っている事件と言うのがマクガフィンということは、開>>続きを読む

ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE(2013年製作の映画)

2.0

このレビューはネタバレを含みます

これを映画とは呼べないにしろ、楽しめました!劇団ひとりは普通の映画では違和感を感じるのだが、この時は不思議とはまっている。ちょっとだけ『キャビン』に近いものを感じた。苦言を呈するとするなら、映画として>>続きを読む

ゼイリブ(1988年製作の映画)

5.0

こういった特殊効果が映画全体のメッセージにつながっている構成は大好物だ。ジャンル映画の愉しみは、ジャンル映画という枠組みの中に明らかにそれでは収まらないほどのメッセージだの過剰な何かを詰め込んで、全体>>続きを読む

ブリングリング(2013年製作の映画)

4.5

かなり楽しめました。セレブから貴重品の盗難を行う彼女たちの動機ははっきりしない。セレブ宅の構えがまるでショッピングモールのように見えてくるのはおそらく意図的だろう。けれども、彼女たちの罪悪感のなさを、>>続きを読む

暗殺の森(1970年製作の映画)

5.0

今まで見ていなかったことが恥ずかしい。オールタイムベスト入りです。正直に言えば時代背景の理解が浅かったことから、ストーリーを完全に理解したとは言えない。ただ、映像が何よりも雄弁に語ってくれる。要は、マ>>続きを読む

恋の渦(2013年製作の映画)

3.5

僕にとっては怖い映画でした。町山智浩が見たら『トラウマ恋愛映画館』に入れるんじゃないのだろうか。観た後はタイトルの「恋の渦」という言葉がはっきり言ってネガティヴな言葉をもって響く。『モテキ』の監督はそ>>続きを読む

武士の献立(2013年製作の映画)

3.0

面白かった。淡々としてはいるけれど、良質の映画。上戸彩は時代劇にはちょっと現代的すぎるかなと最初は思ったが、要は封建的な時代に対する一種の異端児なので合っていた。時代劇としての品の良さが画面作りに現れ>>続きを読む

嘆きのピエタ(2012年製作の映画)

4.0

過去のキム・ギドク作品に比べわかりやすくなっているものの、相変わらず凄惨。でもどこか穏やかなものも感じる。プロット的な部分の特異さもそうなのだけれど、キム・ギドク映画の中では明らかに現実のコードを逸し>>続きを読む

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命(2012年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

デレク・シアンフランス監督の前作『ブルーバレンタイン』もかなりよかったのだけれども、本作ではより普遍的な方向に進んでいた。感情のドラマをきちんと動きや構図として画面に写し取るので、見ていて飽きないと言>>続きを読む

ザ・クライアント 依頼人(1994年製作の映画)

3.0

それなりに楽しめた。興味深いのは、物語の中心から「父親」が排除されていること。そして、主人公の少年とスーザン・サランドンの関係は疑似母子関係でありながら、疑似父子関係に近づいていき、それゆえ物語に危う>>続きを読む

ウンタマギルー(1989年製作の映画)

4.0

改めて、沖縄映画の最高傑作だと思います。詳しい人によれば琉球芝居の要素が強いらしく、以前の沖縄の様子に幻想的な風景を織り交ぜているらしい。沖縄的マジックリアリズム。はちょっと説明的な部分もあるが、これ>>続きを読む

或る夜の出来事(1934年製作の映画)

4.0

一つのジャンルを生み出した作品はそれだけでひとつの輝きを持っているように思う。実際にクローデット・コルベールが映るシーンは輝いているように見えるんだよね。それで、典型的なラブコメディの中に、ちょっと官>>続きを読む

奇跡(2011年製作の映画)

4.5

以前に劇場で見たときには、確かにいい映画だが『歩いても歩いても』や『空気人形』に比べると物足りない感じだったが、『そして父になる』を見たあとだとこの極めすぎない感じもいとおしくなる。子供たちの実在感が>>続きを読む

鴛鴦歌合戦(1939年製作の映画)

2.0

以前見たときより印象が変わっていた。確かに、こんな映画は他にないくらい変な映画であるとは思う。ディック・ミネ演じる殿様も好きだ。戦前の娯楽映画に今の見方を当てはめる不毛さを覚悟の上であえて言うと、登場>>続きを読む

青春の蹉跌(1974年製作の映画)

4.5

すごく身体的にクる映画だと思います。ズームイン/アウトを利用し人称や人物視点を移行する方法は、主人公たちのために物語が奉仕していない、その世界の豊かさを感じさせるし、同じ行動の反復は映画的であると同時>>続きを読む