pherimさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

3.7

殺人を目撃した少年&少女が犯人を脅迫する。💰

青春タッチをからめ進行するクライムサスペンス。DV義父を刺した娘(星乃あんな)と逃避行するサイコパス少年(羽村仁成)vsシリアスキラー青年(岡田将生)の
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津島 ー福島は語る・第二章ー(2023年製作の映画)

3.6

阿武隈山中、津島村。3月11日の風向きが災いし、未だ殆どが帰還困難地域であるこの村に、かつて流れた時間の厚み。
何代にも渡って醸成された関係性と文化の網目模様がバラバラに破壊されゆく様、土地を離れ今を
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リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング(2023年製作の映画)

3.8

ロックンロール始祖の一代記。🕺

ミック・ジャガー、トム・ジョーンズらの情熱的な語りが聞かせる。🎙️

黒人+ゲイゆえに長く不遇の時代が続き、エルビス、ビートルズらが絶大な影響を認め、デヴィッド・ボウ
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すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

3.8

盛期を過ぎた多摩ニュータウンを包みこむおっとり時空。🚲

清原惟監督新作。『ひとつのバガテル』に連なる団地映画かつ『MADE IN YAMATO』から続く郊外物で、主役が家から町へ広がりゆく。音と間合
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FEAST -狂宴-(2022年製作の映画)

3.2

不慮の交通事故で、父が息子の身代わりに収監された富裕家族と、夫を失った貧しい妻子たち。

十八番の暴力&政治を封印したブリランテ・メンドーサの衰えぬ冒険心を、一方の主役となるフィリピン・パンパンガ州の
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アジア三面鏡2016 リフレクションズ(2016年製作の映画)

3.0

フィリピンのブリランテ・メンドーサ、カンボジアのソト・クォーリーカー、日本の行定勲によるオムニバス。この3人の組合わせより2017以降の継続に意義を感じた。プラナカン住宅舞台の行定作は、津川雅彦と永瀬>>続きを読む

ストリートダンサー(2020年製作の映画)

3.7

ダンスチームを率いるインド系青年とパキスタン系娘の衝突、そして。💃

初めの群舞が英国旗で飾られた“フランス通り”を舞台に踊られ「あらまぁ」と眺めていると、パンジャーブ地方シィク教徒分断の歴史背負うロ
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コットンテール(2022年製作の映画)

3.5

“ウィンダミア湖に遺灰を撒いて”

病に斃れた妻の遺言を叶えるため旅立つ夫と息子家族。

喪失感も露わな夫役/リリー・フランキーの疲弊顔、妻役/木村多江の儚げな目線、息子役/錦戸亮の浮かべる苛立ちさえ
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すべて、至るところにある(2023年製作の映画)

3.5

セルビア、マケドニア、ボスニア。パンデミック下で行方不明になった映画監督を探す女が見定める旅路。

リム・カーワイ映画常連の尚玄&アデラ・ソーが醸す無国籍な風情と、旧ユーゴ共産主義建築とが響き合って生
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赤い天使(1966年製作の映画)

4.4

従軍看護婦のみたリアル。肉欲露わな戦傷兵を憐れむ主人公の逡巡が、芦田伸介扮する軍医への思慕に昇華する構成が表現する、混沌の底に蠢く情動のうねりは見事。どす黒い血液にモノクロームの強さ想う。終始笑わない>>続きを読む

ロッタちゃん はじめてのおつかい(1993年製作の映画)

3.6

ふくれっ面で元気いっぱいのロッタちゃんが、豚のぬいぐるみバムセを抱き駆け回る。🐖

セーターのチクチクが不満で家出を試みるも、夜の物音が怖くて仕方ない。優しく見守る家族のもと展開する少女視点の描写と感
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ロッタちゃん はじめてのおつかい 2Kリマスター版(1993年製作の映画)

3.8

ふくれっ面で元気いっぱいのロッタちゃんが、豚のぬいぐるみバムセを抱き駆け回る。🐖

セーターのチクチクが不満で家出を試みるも、夜の物音が怖くて仕方ない。優しく見守る家族のもと展開する少女視点の描写と感
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52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)

3.8

孤立する心を、1匹だけ異なる周波数で歌う鯨に喩える町田そのこ原作/成島出監督作。

杉咲花の可憐さに慄える。どん底から希望を見いだすも再び傷つく主人公の心情を、ガラス細工のように脆く儚い笑顔で表現し切
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2つ目の窓(2014年製作の映画)

3.7

奄美が舞台、というより主役の映画。奄美を映す部分として人間模様があるような。あと主人公を演じる吉永淳­の目が凄かった。あれ、窓だなぁ。UAの息子・村上虹郎も良かった。全編眼福の時間が過ごせて大満足でし>>続きを読む

あん(2015年製作の映画)

4.3

樹木希林の穏やかなる凄絶。河瀨直美監督作は内容を問わず画を眺められるので、ハンセン病差別を真っ向から扱う作品と知らずに入館、心底唸った。赦しと偏見、そして解放。真性の粒あん派ゆえ、茹でられる小豆への肉>>続きを読む

(2017年製作の映画)

4.0

視覚障碍者向けの映画音声ガイドに挑む女性と、光を失いつつある天才カメラマン。男の闇を切り裂く白光を、無自覚に放つ女のひたむきさ。

河瀨直美は光の生態を作品の主軸に据える監督だが、本作では音の干満がそ
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玄牝 -げんぴん-(2010年製作の映画)

3.8

自然分娩を尊ぶ産科医/吉村正のもとへ集う妊婦と助産師たち。

薬や機器の人工的な介入を避け、江戸中期の古民家で薪割りを行い、一汁一菜の食をとる妊婦らのお産へ至る表情変化が心に沁みる。音や16mmの映像
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水平線(2023年製作の映画)

3.4

震災で妻を失った福島の散骨業者と一人娘の相克。

海への散骨という近年のトレンドがもつ背景や、漁業へもたらす風評など諸々新鮮で興味深い。

ピエール瀧主演良作『凶悪』で共演した俳優・小林且弥の初監督作
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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

3.9

トンネルを抜けたら八つ墓村でした、という横溝正史展開に、墓場鬼太郎誕生への悲史が重なる。

“水木”の名と片目に傷もつ主人公が、戦時下南洋での悪夢から日本社会へ怨念抱く野心家青年、って設定好き。終電ギ
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殺人者の記憶法(2017年製作の映画)

4.2

アルツハイマーの元連続殺人犯をソル・ギョングが演じる、というだけで胸熱のクライムサスペンス。ライバル殺人犯登場による『羅生門』展開が期待値以上に楽しめた。ユーモアとシリアスの切り換え自在な名脇役オ・ダ>>続きを読む

THEWILD 修羅の拳(2023年製作の映画)

3.6

賭博リングで相手を殺し8年の刑を終えた男が、面倒事に巻き込まれて大暴れ。

旧友のヤクザ親分、クズ刑事、相手ボクサーの弟や元恋人など好配置の脚本活きる韓流ノワールで、殊に脱北者犯罪組織の首領役オ・ダル
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ジャンヌと七面鳥(2023年製作の映画)

3.7

13歳ジャンヌは、庭先で飼う七面鳥に唯一心を許す。

バディとなる七面鳥がクローズアップする場面の醸す生理的なグロテスクさに、ドゥニ・ヴィルヌーヴ初期作“Maelström(渦)”も想起され。
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カナダでの暮らし(2023年製作の映画)

3.4

同性婚相手の娘を連れた帰郷。家族へもたらす波紋と、血のつながらない娘との距離の繊細さ。

ソウルメイト(2023年製作の映画)

3.8

幼馴染の大親友ふたりがたどる別離と交錯。

デレク・ツァン鮮烈デビュー作の韓流リメイクは、梨泰院クラスのヒロイン役が衝撃すぎたキム・ダミが10~30代を演じ分けて魅せる魅せる。

済州島とソウルの往還
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ネクスト・ゴール・ウィンズ(2023年製作の映画)

3.9

FIFAランク世界最下位の米領サモア代表チームが、大らかに奮闘する。

落ち目監督役マイケル・ファスベンダー、のんびり南洋気質にキレ散らかして楽しい。

実話ベースで単なるスポ魂コメディへ堕さず、社会
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.0

山荘で男が転落死する。

殺人容疑者となった妻と、父の死を目撃した息子と犬を軸に回る法廷劇は後半、異様な展開を見せ始める。

寡黙なドイツ語名優の印象が濃いザンドラ・ヒュラーの、英仏語で切る啖呵は新鮮
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フェアプレー(2022年製作の映画)

3.2

“皆には余興でも、己には負けられない戦い”を生きる切なさ。



#MyFFF 連ツイ https://twitter.com/pherim/status/1759419462472876054

女と犬(1991年製作の映画)

3.7

―顔にケガするのと両親の離婚どっちがいい?
―ケガ

究極の選択を交わす二人の微細な表情変化が魅せる、Sophie Fillières初にして名作短編1991年作。



#MyFFF 連ツイ htt
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夏休み(2023年製作の映画)

3.6

旅程の手違いから、見知らぬキャンプ場で一日を過ごす女性。⛺️

不意に訪れた時間、ささやかで不思議な出来事たち、さりげなくも親密な出逢い。孤独を好みながらも人に惹かれる内気な主人公が幾度か見せる、晴れ
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オアシス(2022年製作の映画)

3.7

片方が知的障害を抱える双子を撮るJustine Martin監督ドキュメンタリー短編。🏞️

成長に従い生じる距離が描かれる公園場面のあと、自然の中で過ごす、幼い頃から変わらないふたりだけの親密な時間
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コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)

4.1

ガイ・リッチー&ジェイク・ギレンホール新作は、米軍将校+アフガニスタン人通訳の窮地脱出から、通訳一家捜索へ転じる実録バディ物。

ローン・サバイバー超える戦地サバイバル描写から、タリバンを怪物化せず勢
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ローン・サバイバー(2013年製作の映画)

4.1

米特殊部隊による、アフガンでの作戦失敗から始まる実話生存劇。壮大な情景と転げ回る身体に描写の力点。対タリバンで戦うパシュトゥン人集落の登場も良かった。衝撃音と傷、裂ける樹皮、岩肌に滴る血液。



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フジヤマコットントン(2023年製作の映画)

3.5

山梨県の障害福祉サービス事業所《みらいファーム》を撮る青柳拓監督作。🧶

綿摘みから糸が紡がれ、機織り機を通し鮮やかな織模様が生み出される。経糸緯糸の紡ぐ時間こそ主役とでもいうように映画は、人々の働く
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風よ あらしよ 劇場版(2023年製作の映画)

3.6

伊藤野枝(吉高由里子)、“元始、女性は太陽であった”の平塚らいてう青踏社を継ぐ生き様まさに灼熱。☀️

関東大震災直後を描く終盤で、野枝の恋人・大杉栄を永山瑛太が演じて『福田村事件』との地続き感すごい
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.1

映画撮影中に失踪した主演俳優の謎追うTV企画のもと、意外な変貌を遂げた俳優と監督とが22年後に再会する。🎬

ビクトル・エリセ31年ぶりの長編は、劇中作に『ミツバチのささやき』の余韻を湛え、折り重なる
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インペリアル大阪堂島出入橋(2022年製作の映画)

3.7

大阪・堂島の老舗洋食レストラン最後の夜、ベテランシェフがハンバーグ皿を片手に夜の大阪へと歩みだす。

佐藤浩市が深夜の大阪都心を800m歩き続ける長回しが超絶魅力的な三島有紀子監督短編2022年作。和
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