nemriameさんの映画レビュー・感想・評価

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ストーリー・オブ・マイ・ワイフ(2021年製作の映画)

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教訓というものは、ことによると未来のために存在するのではなく、ある愚かさのなかに生きたことを、決算するために存在するのではないか。この映画を観終わり、ふとそんなふうに思う。

そして、Bildungs
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心と体と(2017年製作の映画)

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海外の映画作品は、どのように観てみたとしても、最終的には誤解が残るものだろうと思う。だからこそ、ハンガリーの女性監督が撮った幻視のような映画に、1人の日本人男性である僕が、どうしてこんなにも懐かしさを>>続きを読む

アスファルト(2015年製作の映画)

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アンディ・ウォーホル(1928-1987年)のバナナをジャケットに用いた『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』が、ロックそれ自身というよりも、ロックへと向かう情熱を掻き立てたとされるよう>>続きを読む

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

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詩的な言語や修辞(レトリック)を用いず、散文としてのそれによって詩を書いたような印象があった。そのため、詩情はあっても詩にはなってなく、映画としての風情はあっても映画にはなっていない。

しかし、詩に
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ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択(2016年製作の映画)

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ケリー・ライカートの文学志向と、映像作家としての才能が、美しく溶け合った作品のように思う。

原題は『Certain Women』。かの地によく見受けられる即物的なもので、日本語にすると「ある女たち」
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ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

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人生のいくつかの場面で遭遇することになる、出口の見えない袋小路のような状況。ケリー・ライカートは、そうした状況や場面を、好んでモチーフにしているように感じる。

西部開拓史以来、移動することが1つの本
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オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

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ケリー・ライカートのことを知ったのは、日本で「ライヒャルト」と呼ばれていた頃で、原題『Certain Women』(邦題:ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択, 2016年)によってだった。

短編小
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リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

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ケリー・ライカートの最大の魅力は、ある種の文学的な語りと、映像的な語りとの上質な溶け合い方のように僕には感じられる。

ほとんどの表現者にとって、その核心が様々に表れるとされるのが処女作であり、彼女の
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最強のふたり(2011年製作の映画)

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恋愛をドラマにする際には、ライバルや誤解などに代表される障壁が求められるように、いわゆるバディもの(基本的には同性の相棒)を描く際にも、何らかのそれが求められることになる。

そして本作の場合は、経済
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カット/オフ(2018年製作の映画)

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いわゆるバディものと呼ばれる作品については、はじめは別々の方向を見ていた2人(1対1)が、たとえばある出来事をきっかけに、やがて同じ方向へと進んでいくような共同性のなかに、ドラマとしての魅力が宿ってい>>続きを読む

THE GUILTY/ギルティ(2018年製作の映画)

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どのようにしても、神のような視点を持つことは、人間にはできない。唯一できることがあるなら、その不可能性の際(きわ)にまで、たどり着いてみることかもしれない。ヨーロッパで民主主義が誕生した前後の、近代哲>>続きを読む

ピエロがお前を嘲笑う(2014年製作の映画)

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劇中でも述べられているように、スパイダーマンの一種の変奏といった作品であり、ハッキング(hacking)もしくはクラッキング(cracking)をモチーフとしながらも、いわゆる中二病(厨二病)からどの>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

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アフリカ系アメリカ人という作家の立場を通して、社会的な先入観(レッテル貼り・ステレオタイプ)がどのように形成されているのかを描きつつ、押しつけられたアイデンティティと格闘するなかで、やがて個人的な価値>>続きを読む

カード・カウンター(2021年製作の映画)

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いけないと思うくらいに、今の心情にぴたりとはまる映画だった。その時々の心情に寄り添ってくれる作品とは、その時々に出会っても、ぴたりと一致することは稀なように思う。

中年から初老、もしくは老齢を生きる
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ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)

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僕たち1人1人にとって何か切実なことを描こうとするなら、性と暴力というテーマは避けて通れないことを、この映画は静かに雄弁に物語っているようにあらためて思う。

本作と近い関係にあるように僕には感じられ
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エンジェル、見えない恋人(2016年製作の映画)

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ウラジーミル・ナボコフ(1899 - 1977年)の『ロリータ』や、ル・クレジオ(1940年 - )の『海を見たことがなかった少年』などを彷彿とさせながら、それらの作品が溶け合ったような不思議さ。>>続きを読む

灯台守の恋(2004年製作の映画)

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珠玉の逸品という言葉がよく似合う作品。

人の心のもつ寂しさと慈愛に満たされながら、フィリップ・リオレが生理的にもっているだろう存在論と美しく溶け合っており、始めから終わりまで陶然としながら観た。僕の
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マドモワゼル(2001年製作の映画)

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勢いよく一筆書きしたような雰囲気と、緻密な構成力とが溶け合っているように感じたのは、たぶんモチーフ(素材)の扱い方が巧みだったからだろうと思う。大小様々なモチーフのつながりに、自然な生命力が宿っていた>>続きを読む

君を想って海をゆく(2009年製作の映画)

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映像と音声をある流れのなかに置くことで、総体として、何かしらの象徴性を立ち上げようとする試みが映画の本質とするなら、その象徴性が潜在的に目指しているものとは、存在するということそれ自身の原理のように思>>続きを読む

パリ空港の人々(1993年製作の映画)

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フィリップ・リオレのもつ叙情性は、どこか「存在とは去っていくことであり、喪失とはやってくること」として、叙事的な語りの向こう側に宿っているように感じられる。

本作は、イラン国籍の難民だったマーハン・
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アマンダと僕(2018年製作の映画)

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パリの街並みの美しさが、登場人物たちの見せるあらゆる感情の背景として、アパルトマンの窓の向こう側に撮られているのが印象的だった。そうした丁寧な描写が、映像としての力にもなっている。

監督のミカエル・
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サマーフィーリング(2016年製作の映画)

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ある空白地帯のように喪失を中心に据える手法は、日本では朝井リョウ原作『桐島、部活やめるってよ』(吉田大八監督, 2012年)や、古くは紫式部『源氏物語』などにも見られるもので、近年のフランス映画では、>>続きを読む

天国にちがいない(2019年製作の映画)

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そうか俺もジジイになったら、こんな格好をして、こんなふうにしてたらいいんだと、静かな勇気がもらえたような気がする。妻にそう言って、主人公を本人役で演じる監督(エリア・スレイマン)の姿を見せたら「うん、>>続きを読む

グランド・ブダペスト・ホテル(2014年製作の映画)

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事実は小説よりも奇なりとは言うものの、それは当然のことだろうと思う。たとえば、「みんな」という人は1人もいないように、事実とは特殊性の集積であるいっぽう、小説とはその反対に一般性を目指すところがある。>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

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目覚めたければ、眠れ
You can't wake up if you don't fall asleep

印象的に繰り返されるこのフレーズは、つまりはウェス・アンダーソンにとっての『8 1/2』(
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希望の灯り(2018年製作の映画)

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おそらくは『2001年宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック監督, 1968年)の宇宙船として見立てた(COSTCOのような)郊外型スーパーマーケット。映画のオープニングでこの店舗の映像と共に、ヨハン>>続きを読む

水を抱く女(2020年製作の映画)

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もしもこの映画が、都市論として描かれていたなら、最高に素晴らしかったのにと思わずにいられなかった。

その萌芽は、女性の主人公がベルリンの都市開発の研究者であり、博物館のガイドとして働く設定に表れてい
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未来を乗り換えた男(2018年製作の映画)

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映画でしか描きようのないショット。効果的なナレーション。

こうした、いわゆる「映像と音」による純粋な姿に接すると、映画のもつ雑種的な魅力はいったん脇に置いて、つい鼻持ちならない原理主義者のようなこと
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