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ピエロがお前を嘲笑うのrainsleepのレビュー・感想・評価

ピエロがお前を嘲笑う(2014年製作の映画)
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劇中でも述べられているように、スパイダーマンの一種の変奏といった作品であり、ハッキング(hacking)もしくはクラッキング(cracking)をモチーフとしながらも、いわゆる中二病(厨二病)からどのようにして大人になっていくのかを本質的に描いている。

Wikiなどには、『ファイト・クラブ』(デヴィッド・フィンチャー監督, 1999年)との比較が記されているものの、僕の観た印象としては、同作に描かれた分裂的な自己のドラマよりも、スパイダーマンのように同一的な自己の揺らぎのほうを強く感じる。

そうした意味では、冒険・友情・成長といった少年ジャンプ的な要素が主調であり、ラストの顛末は『ユージュアル・サスペクツ』(ブライアン・シンガー監督, 1995年)の亜流といった印象が拭えず、ストーリーの基本ラインから見ても不要だったのではないか。

邦題に採用された「ピエロがお前を嘲笑う(Clowns Laugh at You)」は、主人公たちが作ったチーム「CLAY」の頭文字の元フレーズであり、実際、この言葉からは中二病的な印象を色濃く感じる。このテーマをまっすぐに伸ばしていった先には、『ゼロの未来』(テリー・ギリアム監督, 2014年)があり、魅力とは別問題として、作品の語りは同作こそが本質的なもののように思う。

そして思うのは、この映画に描かれるこうした情景を中二病と振り返られるほどには、きっと男たちは誰も大人にはなっていないということであり、おそらくは一生、こうした風景のなかを生きていくことになる。このことに無自覚であればあるほどに。

★ドイツ
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