緑雨さんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

緑雨

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レオン(1994年製作の映画)

2.5

随一のシーンを挙げるとすれば、買い物から帰ってきたマチルダが自宅での異変に気付いて足を止めずにレオンの部屋のドアの前で泣いて請う姿を、鍵穴越しに撮る場面だろう。

ところが、そのような極めて切実さに溢
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告発(1995年製作の映画)

4.0

多くの意見と同じく、これがケヴィン・ベーコンの映画であることに同意する。「人格が破壊され心の芯まで怯えきった人間」というものをよく研究し、体現していると思う。

法廷劇の部分については甘すぎるのではな
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天然コケッコー(2007年製作の映画)

3.5

過去も未来も共有しながら時を過ごしていく”田舎”におけるコミュニティーのあり方を、映画という枠の中で抜群の説得性と理想郷的な好ましさを湛えながら世界構築していることにまず感心する。何より作劇臭さがまっ>>続きを読む

ハッシュ!(2001年製作の映画)

3.0

何より傑出していると感じたのは、田辺誠一が実家に泊まるくだり。秋野暢子や光石研とのダイアログが滲ませる不穏さ。田舎における血縁のシリアスさを醸し出す緊張感が凄い。

片岡礼子のナチュラル・ジャンキーぶ
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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

3.8

正直、期待していたような一触即発の緊迫感は存在しなかったが、当時の時代感を体感できるという点では非常に興味深い。

結局、三島も全共闘も社会を変えることは全くできなかった。それを「敗北」と表現するかど
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人のセックスを笑うな(2007年製作の映画)

3.5

石油ストーブに火を入れる場面がとても印象的。そのシーンだけ繰り返し眺めていたいほど。大柄な松山ケンイチが身を縮めてストーブに向かう姿を愛おしく思う感覚が、実によく伝わってくる。

そういうリアリティが
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キサラギ(2007年製作の映画)

2.5

あまりにシナリオが勝ちすぎ。頭で考えて撮った映画、という印象がどうにも拭えない。

この設定で一番おもしろいのは、ファンサイトに熱心な書き込みをしていたのが実は…というところにあるのではないかと思う。
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見知らぬ乗客(1951年製作の映画)

4.5

送迎の車を降りて列車に向かう人々の足元を映す、なんとも流麗なオープニング。その流れで、組んだ脚がぶつかることを契機に口火が切られる車内での二人の会話。この導入の見事さ。

ロバート・ウォーカーの不気味
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マリー・アントワネット(2006年製作の映画)

3.5

悪くない。たとえ「お菓子が美味しそうだった」という感想しかでてこなかったとしても、そのことが伝わるだけで映画として十分成功しているのではないか。

というのはもちろん極論ですが、キルスティン・ダンスト
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ライフ・イズ・ビューティフル(1997年製作の映画)

3.5

寓話としてとてもよく出来ている。こういう形で「父親の愛」を描くという着想は慧眼だと思うし、前半からコメディタッチの中に不穏な時代の空気を忍ばせていく匙加減もなかなか巧い。

が、一方で、この映画が少な
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トイ・ストーリー(1995年製作の映画)

4.8

とてもよく考えて作られている。何の変哲もない子供部屋、家屋、自動車、ゲームコーナー…視点を変えれば物語の魅力的な舞台となる空間たりうるのだ。

隣家(シドの家)との距離感、机や二階の窓や自動車の床など
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スーパーサイズ・ミー(2004年製作の映画)

3.0

セルフ人体実験という着想自体が面白いので最後まで見させるが、何より実験のビフォー/アフターで彼の”見た目”にさほど違いが感じられず、血液検査の数値や体重計の目盛りでしか表現ができていないところが、映像>>続きを読む

日本沈没(2006年製作の映画)

2.5

良くも悪くもエキセントリックな風味のあった'73年版に比べると、映画の話法を忠実に採り入れようとしている志向は伝わってくる。

ご都合主義で、考証に欠け、深みのない台詞ばかり繰り出される脚本はしょうも
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市民ケーン(1941年製作の映画)

3.5

高名なパンフォーカスの使い方に留まらず、カメラの動き、アングル、照明、全ての画面が凝りに凝っていて、途中から少々食傷気味になってくるほど。印象的なカットを挙げれば切りがないが、個人的には、最初の妻との>>続きを読む

バンテージ・ポイント(2008年製作の映画)

3.0

序盤がよい。事件の舞台となる広場という空間が魅力的。閉塞した疑似”密室”的空間に、無数の、立場を異にする人間が集う。その場にいた人間の数が多ければ多いほど、視点の数も多くなる。

…という空間設定があ
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ファーザー(2020年製作の映画)

4.0

ファーストシーンを眺めていて、なんと凡庸な演出の映画なのだろうと思ってしまったのだが…それも束の間、不条理が急展開していく世界に目が離せなくなる。まるで『マルホランド・ドライブ』。

腕時計、チキン、
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マイ・ブルーベリー・ナイツ(2007年製作の映画)

3.5

これが、あの『花様年華』や『2046』を撮ったウォン・カーウァイの映画だと思うと、やはり物足りなさを感じてしまうのは正直なところだが、愛らしくて好感のもてる映画には仕上がっていると思う。

取り立てて
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ミスト(2007年製作の映画)

3.5

序盤から中盤にかけて、ステレオタイプな人物造形や、B級との境界線を踏むのか踏まないのか中途半端なパニック演出に、こりゃ駄目だと思いかけていたのだが…マーシャ・ゲイ・ハーデンが存在感を増すに連れて俄然面>>続きを読む

ディパーテッド(2006年製作の映画)

3.0

簡潔かつスタイリッシュなカットの積み重ねで作品を組み立てていくスコセッシの手腕はやはり確かだ。特に、長い長いアヴァンタイトルでの状況説明が秀逸。暴力シーンを見せる手際のよさも含め、『グッドフェローズ』>>続きを読む

地獄に堕ちた勇者ども(1969年製作の映画)

3.5

もう少しシリアスなものを予想していた。作り手の意図は分からないが、ナチスすら記号と化し、没落貴族の濃ゆい面々がただただ醜い愛憎を繰り返し堕ちていくさまが、むしろ喜劇的にも見えてくる。

パンしながらズ
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ブラインドネス(2008年製作の映画)

4.0

みるみる汚物にまみれていく収容所の様子が凄まじい。人間の尊厳が地に堕ちる光景を容赦なく描き、それが存分に映像として表現されている。

「第三病室」に女性たちが向うくだりは、直視しかねる気分の悪さを醸す
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イースタン・プロミス(2007年製作の映画)

4.0

冒頭の床屋でのシーンから一気に映画の世界に引き込まれる。モーテンセンとカッセルはそれぞれ異なる種類のセクシーさを魅せる。そしてスタールの静かなる凄味。スタールとワッツが対峙する場面のぞくぞくするような>>続きを読む

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

4.0

オープニングカットの草原からカメラが引いていくと、仮眠している兵士が現れる。上官に起こされ、連れていかれて指令を受ける。そこから徐ろに、怒涛のようにミッションが開始する。

塹壕を抜け、前線から無人地
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Mr.インクレディブル(2004年製作の映画)

2.5

お母さん(イラスティガール)がらみのシーンは悉くよいけど、インクレディブル氏の葛藤にしても悪役の造形にしても掘り下げが浅く、活劇的エモーションを喚起するに至らない。

クローバーフィールド/HAKAISHA(2008年製作の映画)

2.5

狙いはよく分かるんだけど、それを達成せんがために全てが「仕組まれている」ことが露骨に見え透け過ぎ。

ハンディカムでの記録映像という形式で、突如として巻き起こったパニックの真っただ中に放り込まれた一市
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カーズ(2006年製作の映画)

3.5

紋切り型のビルドゥングスロマンだが、深夜のハイウェイをトレーラーが疾走するシーンだとか、街のネオンが一つ一つ趣き深く点っていくシーンだとか、ノスタルジックな幻想性がCGアニメという手法とうまく融合して>>続きを読む

トイ・ストーリー2(1999年製作の映画)

4.0

中盤にかけて、おもちゃ論がやや教条的に過ぎるなあと思って観ていたが、バズたちが玩具店に潜入してから映画にダイナミズムが生まれる。

新旧バズの絡みや、プロスペクターの豹変、悪の皇帝の乱入などのドタバタ
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彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド(2018年製作の映画)

4.0

動きのギクシャクしたモノクロ記録フィルムに、証言者の語りが重ねられる、よく見るようなドキュメンタリーだなと眺めていると…映像面のサイズがグッと広がり、映っている彼らに突如生命が吹き込まれる。映像の持つ>>続きを読む

イギリスから来た男(1999年製作の映画)

3.5

この程度のシナリオでもそれなりの見応えを創り出してしまうあたり、やはり演出力の確かさを認めないわけにはいかない。何よりもテレンス・スタンプの佇まいがよい。最初のアップカットから印象的で、目を離せなくな>>続きを読む

アフタースクール(2008年製作の映画)

3.5

前半部のディテクティブ・ストーリーはテンポも小気味よく、巻き込まれ的要素もあって、テイストは違うもののヒッチコックばりの不穏さが佳い。

それにしても佐々木蔵之介は巧い。自然でありながら繊細で的確にポ
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告発のとき(2007年製作の映画)

3.5

後味の苦さはかつての「ベトナム後遺症」モノと共通するが、語り部となる、国を愛し家族を愛する老父トミー・リー・ジョーンズのキャラクタに抑制を効かせることで、却って深みを生むことに成功している。

最初と
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ランボー 最後の戦場(2008年製作の映画)

4.5

夥しい銃撃・爆撃と凄惨な殺戮の圧倒的物量を前に、我々は呆然と眺めることしかできない。「映画を通して何を伝えたいか」などといった常識的な地平をスタローンは飛び越してしまった。映画史に刻まれるべき、観客に>>続きを読む

接吻(2006年製作の映画)

3.5

人物設計の巧みさ。世間的には「異常」に属する人物像なはずなのに、自然に受け容れられてしまう。しかも全編ほとんど会話劇である。いや、ホントによく考えられて作り込まれている。

会話劇と書いたが、体裁はダ
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フラガール(2006年製作の映画)

3.5

昭和40年代の斜陽の炭鉱町という世界を隅々まで真面目に作ろうとしていることに好感を抱く。方言、長屋のセット、背後に聳え立つボタ山。そして、「保守」のメンタリティ。

このような「挑戦」の物語においては
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おくりびと(2008年製作の映画)

3.8

まずもって、日本の地方小都市をこんなにも美しく映像化したことを称賛したい。二人が暮らす川沿いの元スナックの住居がいい。山崎努のオフィスである坂の途中の建物も雰囲気よし。何の変哲もない町並みや民家、商店>>続きを読む

イージー★ライダー(1969年製作の映画)

3.8

今や半世紀前の映画になってしまったが、改めて観ると、分断されたアメリカ、BLM、ヘイトクライム…現代にも厳然として存在している社会の病理が根本的に変わっていないことを痛感させられる。

公開当時の年齢
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