緑雨さんの映画レビュー・感想・評価

緑雨

緑雨

もともとは↓でレビュー書いてます。
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夢売るふたり(2012年製作の映画)

3.8

主人公夫婦それぞれが何を信じ何を求めているのか、整理されておらず軸がぶれている印象。映画のタッチもコメディ路線と捻じくれたシリアスな夫婦心理劇の間を揺れ動いて安定しない。その分裂症気味な多軸構造が映画>>続きを読む

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)

4.5

自己決定と自己解決の美学。法と世論とのせめぎ合いの中で、私刑はその位置付けを相対化していく。米国流リバタリアニズムの極致。ポリティカル・コレクトネスの時代に一石を投じる。

最初はステロタイプに思えた
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ムーンライズ・キングダム(2012年製作の映画)

2.0

期待したほどの毒気も無ければ、作劇に型破りな要素も見当たらず。そうなると画作りの様式美もスケール感を削いでいるだけのように感じられてくる。豪華キャストを惜しむことなくムダ使いする心意気は買いたいが…や>>続きを読む

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)

4.5

傑作。可笑しくってたまらんかったが本質をえぐっている。ダウンタウンの松っちゃんがやりたいのってこんな感じなんじゃないかな、と思った。

人生は須らく舞台であり、我々は皆、自分自身というキャラクタを演じ
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ヘルタースケルター(2012年製作の映画)

2.8

「沢尻エリカ」という商品の活かし方としては、監督も本人も納得の出来なのだろうが、その分意外性には欠ける。いわゆる「体当たり演技」であることは素直に認めたいが。それにしても主題が古いし、作りがやはり素人>>続きを読む

夏の終り(2012年製作の映画)

3.5

満島ひかり無双。若さと艶の絶妙なる均衡、清冽が成熟へと移ろいゆく貴重なる一瞬が切り取られ、このような「作品」として残されることを幸せに思う。

プロットなどあってないようなもので、二人(前夫も合わせれ
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デンジャラス・ビューティー(2001年製作の映画)

3.5

マイケル・ケイン軍団の手で”変身”したサンドラ・ブロックが格納庫から姿を現わす場面、怪しい動きをする観客に舞台上から飛びかかる場面、夜のプールサイドでのベンジャミン・ブラットとブロックの場面など、いく>>続きを読む

テルマエ・ロマエ(2012年製作の映画)

1.8

前半部はともかく後半部はわざとつまらなくしてるのでは、と思ってしまうほど面白くない。現代日本のバス・トイレタリーとの異文化邂逅を、作劇上ルシウスの出世の道具としてしか使わず、後半部ではその可笑しみが完>>続きを読む

終の信託(2012年製作の映画)

3.0

重い。テーマも画面も重いが、やたらとセリフが多くすべてが「説明」されていくのが重たい。見応えはあるが、映画として評価する側面があまり見つからない。
検察の恐ろしさを表現するという点では真に迫っている。
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生きる(1952年製作の映画)

3.8

およそ洗練とは程遠い無骨なカメラワークの連続だが、happy birthdayのシーンの神懸かった荘厳さには何度観ても息を呑まされる。未来のある若さと先の無い老いとの交錯、そして再生への祝意。

一見
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ダークナイト ライジング(2012年製作の映画)

2.5

登場人物の存在がプロットに辻褄をつけるための「説明」そのものになってしまっている。『バットマン・ビギンズ』でスーツやマスクを自作する件りまで丹念に見せていたディテールへの執着はどこに行ってしまったのだ>>続きを読む

ダークナイト(2008年製作の映画)

4.5

アクションよりもむしろ”世界を描く”ことに注力している志向が見て取れる。そこが凡百のハリウッド大作との分界点なのだろう。そして、アメコミのイマジナリーな舞台を借景していながら、徹底的にリアリズムを追及>>続きを読む

バットマン ビギンズ(2005年製作の映画)

3.0

普通のヒーローものって巨悪に対して圧倒的にリソースの足りない主人公が奮闘するところにドラマが生まれるわけだけど、その点バットマンのヒーローとしての在り方って特殊だ。モノ・カネのリソースは豊富だけどヒト>>続きを読む

普通の人々(1980年製作の映画)

3.8

オープニングのカノン合唱の後は、比較的短いシーンを積み重ねることで状況が呈示されていく。このあたりでは、両親が、ティモシー・ハットンを「腫れ物」扱いしている印象を受けた。中盤以降、俄然長台詞・長回しが>>続きを読む

CUBE(1997年製作の映画)

3.5

やはりアイデアが素晴らしい。
水平方向だけでなく、垂直方向(上下)への移動があり得る設定としたことで、空間の無限性と「同じところに戻るかもしれない」という無常感を強める効果を生むとともに、落ちる・よじ
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その夜の侍(2012年製作の映画)

3.8

山田孝之のクズっぷり、堺雅人のキモさ、安藤サクラの泰然…キャラ造形は絶品。各場面の緊張感や臨場感の演出もよく出来ている。特に山田が谷村美月に絡んでいく鬼畜さとか。

が、落とし所のよくわらん映画だ。
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ゼロ・ダーク・サーティ(2012年製作の映画)

4.0

スクリーンに身を委ねているうちに、いつの間にか「米国目線」に憑依している自分に気づき恐ろしくなる。その戦慄を味わうことにこそこの映画の意味がある。ラストシーンのジェシカ・チャステインをみれば、これがプ>>続きを読む

007 スカイフォール(2012年製作の映画)

3.8

オープニング、イスタンブールでのチェイシング・シークェンスには最高に興奮させられる。バザールの屋根の上をバイクでチェイスするパノラミックな疾走感!

正直、以降オープニングを超えるシーンはなかったよう
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キャロル(2015年製作の映画)

4.5

久々に映画らしい映画を観た。筋は数行で語り切れる程度のもの、セリフも最小限。だが、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラ、二人の視線と表情だけで世界が成立し、感情が痛切に伝わってくる。目が離せなくな>>続きを読む

スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2017年製作の映画)

3.0

EP7-9をユニットとすると、ブリッジの位置付けに当たる本作。大団円に向かってパズルのピースを着実に組み立てていくために、肝心なところを寸止めしてしまうのは致し方ないと理解するが、それにしても甲斐性の>>続きを読む

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)

3.5

アクションらしいアクションがほとんど無く、ダイアログだけで展開を追っていくのは観ていてツラいものがあるのだが、ミステリとしての結末に意味がある映画ではないのでまあいいか、という感じ。

ニュー・シネマ
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世界にひとつのプレイブック(2012年製作の映画)

4.5

噂に違わぬジェニファーの魅力と存在感。愛想の欠片もない仏頂面、微妙にユルい頬のライン。ジョギングコースに唐突に横入りするタイミングと迫力!走る、踊る、身体性の映画であることもまた嬉しい。
クライマック
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ジャンゴ 繋がれざる者(2012年製作の映画)

3.5

「銃弾を受けて肉塊が飛び散る」という現象に着目し、エンターテインメントに活用したという点では『プライベート・ライアン』と双璧。

発砲することに対する躊躇いの無さ。一般的な西部劇よりも数歩早い間(ま)
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蜜のあわれ(2016年製作の映画)

3.5

二階堂ふみ目当てで観たが、期待に違わない。どんどん金魚に見えてくる。「交尾してまいる!」には参った。

バカっぽい効果音とか、最初のうちはふざけてんのか、と思って観ていたが、これはこれで一つの世界が構
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終戦のエンペラー(2012年製作の映画)

3.8

視点が想像以上にニュートラルなことに驚く。天皇の戦争責任という日本社会におけるタブーに踏み込む一方で、原爆投下の記録映像に始まり大空襲による破壊殺戮を率直に描いている点でバランスが取れている。

昭和
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ザ・マスター(2012年製作の映画)

3.5

哀しき人生のロードムービー。最初と最後の海岸のシーンには、岡本喜八の『肉弾』と通じるものを感じた。

序盤、撮影技師時代のホアキン・フェニックスが客に照明を近づけ過ぎて乱闘になる件りと客船に紛れ込む件
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苦役列車(2012年製作の映画)

3.8

決して悪人ではないが徹底してダメ人間という主人公=原作者の人間性を自虐的なまでに赤裸々に描くこの作品が哀切さとともに可笑しみを以て立ち上がる事象の裏に、我々観客が隠しきれない優越感や差別意識が潜んでい>>続きを読む

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)

3.5

映画の話法を壊すことに挑戦しつつ、半径15m以内のリアリティを描き出すことにも成功している。巧い。こじんまりとまとまっちゃった感はあるけど。

主観を入れ替えながら、時間軸をリフレインしつつ、登場人物
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羅生門(1950年製作の映画)

3.8

デジタル完全版にて再鑑賞。

回想のバージョンが変わっても、キャラの全く変わらない(変えられない)三船敏郎との対比で、京マチ子と森雅之のキャラクタが怪しく変容していく様が際立つ。

対比といえば、尋常
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崖っぷちの男(2011年製作の映画)

2.8

こんな大衆的なクライム・アクションとは思わなかったが水準級。飛び降り騒ぎの本当の狙いが明らかになっていく過程は、滑らかとは言えないまでも観ているものを惹きつける乗りのよさがある。劇場型犯罪で、野次馬を>>続きを読む

かぞくのくに(2012年製作の映画)

3.0

監督自身の実体験を描いているので当然なのだが、作り手が「伝えたいこと」があまりに明確すぎて行間が無くなってしまっている。観客に突きつけられる現実はあまりに痛切で重く、作品の力は認めるが、「映画」として>>続きを読む

鍵泥棒のメソッド(2012年製作の映画)

3.0

プロット構成が案外オーソドックスなだけに、演出にもっとインパクトが欲しい。綺麗にまとまりすぎ。

ノートにびっしり書き込みする香川照之と、手帳に予定を詳細につける広末涼子という几帳面な二人が惹かれあっ
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湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)

3.5

プロットは面白いし、地方都市の銭湯という舞台設定も好ましい(現実味は無いが)。何より宮沢りえは素晴らしい女優だと改めて思う。が、この監督の演出はどうにも肌に合わず、鼻白んでしまう。

例えば冒頭の宮沢
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博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964年製作の映画)

3.5

十数年ぶりの再鑑賞。ジョンウンやらトランプやら出てきて、もはやこの映画が絵空事に思えなくなってしまった感もあるが…

冒頭、スターリング・ヘイドンの電話から一気に不穏な事態へとエスカレートするスピード
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おおかみこどもの雨と雪(2012年製作の映画)

4.5

ファンタジーの二重構造に、妙に生々しいリアリズムが絡み込むことで、ヒロインは理想の偶像と化す。偶像であるが故、その”あり得ない”強さが感動を呼び起こす。

『おおかみこどもの雨と雪』はファンタジーであ
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愛と誠(2012年製作の映画)

3.0

梶原一騎がど真面目に描き上げた昭和の劇画世界をこれでもかと脱構築。あの早乙女愛がイタさ満開の勘違い天然女としてキャラ構築されるとは!

「あの早乙女愛」とか書いたが、原作漫画は小学生の頃に断片的に読ん
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