緑雨さんの映画レビュー・感想・評価

緑雨

緑雨

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アイアンクロー(2023年製作の映画)

4.0

デビッド・フォン・エリックが来日中にホテルで急死したのは1984年2月、追悼試合でケリーがリック・フレアーからNWAのチャンピオンベルトを奪ったのが5月。
当時小学校5〜6年生だった自分が最もプロレス
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ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)

3.8

オープニングシーンを観て、コメディタッチの映画なのかと思ったら大間違い、予期せぬ方向へと物語は展開していく。

観ていて苦しくなってくるようなシーンも多いが、一果役・服部樹咲のダイヤの原石たる圧倒的存
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生きる LIVING(2022年製作の映画)

3.8

思っていた以上に、オリジナルに対して誠実なリメイクだった。

オリジナル黒澤版の肝となる精神性はリスペクトされ、役所のたらい回し、ゆきずりで出会った男との放蕩、葬式での回想、雪の中のブランコなど、鍵と
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カラーパープル(2023年製作の映画)

3.5

前半部の状況の過酷さ非情さは、観ていて鬱々とした気分になってくる。そんな中でも微かな喜びや希望の表現としてミュージカルシーンが置かれているのだろうけど、状況の暗澹さの方が勝ってしまいあまり入ってこない>>続きを読む

おとなの事情(2016年製作の映画)

3.0

幼馴染の親友とそのパートナーという近しい間柄が、ギスギスした空気に一変する微妙な関係性は巧く描かれているものの、ゲスな展開は想定を超えず、しかも下半身ネタに偏っていて単調。コメディというほど笑えなかっ>>続きを読む

はじまりのうた(2013年製作の映画)

4.5

「音楽の魔法だよ。平凡な風景が意味のあるものに変わる。美しく光り輝く真珠になる…」劇中のマーク・ラファロのセリフだが、即席バンドが野外セッションの撮影を重ねていく幸福なシーンが重ねられる後半はまさに魔>>続きを読む

ミナリ(2020年製作の映画)

4.0

愛憎を抱えて苦闘しながら懸命に生きる移民家族の物語を通して感じられるのは、大地、陽光、そして水が与えてくれる生命の豊穣。

教会、十字架を担ぐ男、エクソシズム、ダウジングなど宗教性やスピリチュアルな色
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大人は判ってくれない(1959年製作の映画)

3.0

ジャン=ピエール・レオ、家事も宿題も彼なりに真摯に取り組もうとしているのに何故か周囲に認められない。要領よく生きられない苦しさ。ボヤの後、急に家族3人仲良く映画を観に行った帰りの車内での楽しげな表情。>>続きを読む

PLAN 75(2022年製作の映画)

3.8

切った爪を植木鉢に捨てる、片付けたロッカーに手を合わせる、オペレーターを「先生」と呼ぶ、出前の寿司桶を丁寧に洗う。倍賞千恵子の所作の一つ一つが丁寧に印象深く演出されている。

或いは、磯村勇斗の叔父た
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

3.5

何がパーフェクト・デイズなのだろうか。ルーティンで固めた安らかだが単調な日々を送ること、そして密かな○✖️ゲームのやり取りのように日常を乱さない程度のささやかな楽しみが紛れ込んでくることだろうか。しか>>続きを読む

チャンプ(1979年製作の映画)

3.0

如何にも「泣かせ」の教科書に忠実に作った作品という感じがして、自分のような観客は逆にシラけてしまうのだ。人間ってもう少し複雑な生き物ではないだろうか。

と言いつつも、好いところもけっこうある。まず競
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最前線物語(1980年製作の映画)

3.5

戦車の中での出産シーンが素晴らしすぎる。諦念の充満する過酷な最前線に、ふいに訪れる和みとユーモアの匙加減。

オープニングの暴れ馬、二つの大戦を結びつけるキリストの磔刑像、花で飾られた鉄兜…印象的な画
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いまを生きる(1989年製作の映画)

3.5

おそらく15〜20年ずつ間を空けての三度目の鑑賞。前回30歳くらいの頃に観た際には登場人物の意気地のなさに腹を立てたものだが、この歳になると弱者なりのプロテストの在り方を一周回って理解できるようにはな>>続きを読む

アマデウス(1984年製作の映画)

4.0

「上を見たらキリがない」とか言って簡単にあきらめてしまうのが凡人の凡人たる所以。彼(サリエリ)はけっして凡人などではない。

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

4.0

映画がこれまで真正面から向き合ってこなかった対象に踏み込みながら、オーソドックスな家族の物語を暖かく描いている。前者の要素がなければオスカー受賞もなかったかもしれないが、愛すべき小品と言える。

ヤン
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.5

「わだつみ作戦」がついに実行に至るまさにその瞬間、伊福部昭のテーマ曲が流れ始め、背中がゾクっとする。ここから急に別の映画になったかのように空気が一変。茶番にも思えるその後の展開に不覚にも感動してしまう>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

3.5

原作は読んでいないけど、朝井リョウらしく今どきのネタをうまく掬い上げているものの、掘り下げがイマイチ浅いのもまた朝井リョウらしさ。全体的に腫れ物に触っている感が拭えず、終盤の展開も想定を超えなかった。>>続きを読む

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

3.5

「勝手に産んで勝手に捨てて」
「産んで捨てるより産まずに殺した方が罪が軽いの?」

「一人じゃ何もできなかった」
「一人で全部やろうとしなくていいよ」

「お前を見ていたら自分の母親のことが理解できる
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ラジオ・デイズ(1987年製作の映画)

3.8

ラジオ・デイズ、娯楽の選択肢が限られていた時代。限られていたからこそ、非日常なキラキラした世界が、豊穣さを湛えた夢の世界として立ち現れる。

オープニング、ラジオ番組の生電話で繋がる暗闇の空き巣とオー
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マトリックス(1999年製作の映画)

3.5

20数年ぶりに再鑑賞してみたら、印象よりもだいぶこぢんまりした作品に感じられた。おそらく、その後に作られた『マトリックス』的な大作映画をたくさん観てしまったからというのもあるのだろう。

一方でこの映
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エリン・ブロコビッチ(2000年製作の映画)

3.5

とんとん拍子のサクセスストーリーなのでイマイチ面白くない、との評がある。が、実際そんなもんだ。魅力的な人物の人生は、それだけでうまくゆくことが約束されている。こんなにポジティブで、能力にも容姿にも恵ま>>続きを読む

ジェントルメン(2019年製作の映画)

3.5

ガイ・リッチーの映画を観るのは『ロック・ストック…』『スナッチ』以来20数年ぶり。その間の作風を知らんので、良い意味で期待を上回りも下回りもしない面白さだった。

オープニングのジュークボックス、ビー
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春に散る(2023年製作の映画)

4.8

クライマックスのタイトルマッチの壮絶なリアルさは映画史に刻むべきレベル。横浜流星と窪田正孝の究極まで鍛え上げられたスキルと本気さに観ていて胸が熱くなる。
ドラマ部分は古くさいし、登場人物の心情の機微も
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アルプススタンドのはしの方(2020年製作の映画)

3.5

どう見ても地方予選のスタンドなのに「ホテルから」とか「バス何台も貸し切って」とか言ってるのが最初は意味不明だった。

そのうち甲子園に来ている設定なのだと分かり、その無理さ加減に興醒めしていたのだが、
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ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

3.5

オープニングの潜水艦アクションは20世紀の香り。AI兵器などデジタルっぽさを仄めかしながらも展開されるのは超アナログな「鍵」の奪い合い。そしてクライマックスはなんとオリエント急行!しかも機関車!ヒッチ>>続きを読む

アラビアのロレンス(1962年製作の映画)

4.0

オープニングのタイトルバックのスタイリッシュさには改めて見惚れてしまう。バイクに歩み寄り跨るロレンスを上から切り取ったカット。それに続くバイク事故に至るシーンも、丸型のゴーグル、視野を狂わせる木陰と陽>>続きを読む

明日に向って撃て!(1969年製作の映画)

3.5

何ものにも縛られない自由が故の緩い空気と裏腹に、破滅への予感ははじめから漂っている。

前半の列車強盗を繰り返すシークエンスは痛快。愛社精神溢れる金庫番が好いキャラだし、過剰な爆破、舞い散る札束も映画
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

2.5

笑いのない「仮面ノリダー」って感じ。昭和っぽいチープさを敢えて滲み出そうとしてんだかしてないんだか。

オープニングのカーアクション、多摩ナンバーが見えた途端に、ああ多摩でロケしてんのね、となんだか興
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生れてはみたけれど(1932年製作の映画)

3.8

AmazonPrimeビデオの活弁ありバージョンで再鑑賞。

大人には大人同士の、子供には子供同士のヒエラルキーや人間関係がある。そこに親と子という縦軸を通すと関係性は複層的になる。ましてや親は嘗ては
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.0

宮崎駿の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。目眩く妄想世界の物語構築には圧倒されるが、描いている本質はシンプルでプリミティブ。

『風立ちぬ』っぽく始まるが、全体は『千と千尋の神隠
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アナザーラウンド(2020年製作の映画)

3.5

手持ち撮影なのか、画面がずっと微妙にFIXしないのだが、映されるデンマークの自然や街並み、学校や家や店の中に至るまで何もかもが綺麗で、光と陰影がクリアで心地よい。

一方で、劇中「どうせこの国は飲んだ
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交渉人(1998年製作の映画)

3.5

全体の作劇はステレオタイプで、FBIと市警の主導権争いやデヴィッド・モースの役柄など、既視感ありまくりなのだが、人質を取って籠城戦に入る件りの劇的な展開は見事。交渉のプロという要素が入ることでユニーク>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.0

異なる視点から描く三度びのリフレインを通じて、違和感のミッシングリンクが繋がっていく過程には、伏線回収の醍醐味を感じさせられ、満足度は高い。金管楽器の件りには特に唸らされる。

こうなると、中村獅童や
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

3.8

最初から最後まで無音楽。その分、コンビネーションミット打ちの音、弟が練習するギターの音、蛇口から水の出る音、冒頭から音を強く意識させられる。が、それらの音は主人公の耳には聴こえていない。

扇風機のタ
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

3.5

主人公がどうしてこんな姿、こんな生活になってしまったのか、どんな人間性の人物なのか、重ねられるダイアログと回想でそれが少しずつ明らかになっていく過程は、ミステリを読み進めるかのような趣きがある。

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酔いどれ天使(1948年製作の映画)

3.5

ファーストカットは泡が湧くドブ沼。畔で侘しくも拙いギターを爪弾く男。物語の舞台は全てこのドブ沼の周辺。バカでかい広告看板、頭の上を走る高架の電車、闇市の域を出ない駅前の商店街。終戦直後の、貧しくも猥雑>>続きを読む

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