緑雨さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

緑雨

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アモーレス・ペロス(1999年製作の映画)

4.0

犬たちが、その獣性を顕わにしていくのに喚起されたかのように、日常のモラルをかなぐり捨て欲望のままに振る舞っていく人間たち。他人の本性を覗いたようで、そして自分自身の本性を暴かれたようで、観終わった後な>>続きを読む

ワイルドバンチ(1969年製作の映画)

3.5

俯瞰的なスタンスを貫き通しているとの印象。ロングショットが多用される構図に限った話ではなく、個々の登場人物に観ている側の感情が入り込むことを拒絶したかのような脚本・演出。ワイルドバンチの面々も、追うロ>>続きを読む

死ぬまでにしたい10のこと(2003年製作の映画)

3.0

彼女に共感できるかできないかとか、倫理的にどうだとか、そういったこととは別の次元で、人間たるものの本質というか「業」というか、そういうことを考えさせられる。

しかしやはり一方で、「したいこと」の中に
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夫婦善哉(1955年製作の映画)

3.8

ボンボン上がりのどうしようもないダメ男と、そんなダメ男に惚れて頼ってどこまでもついてってしまうお人好し女。ライスカレー屋のテーブル下で足をツッツキあってイチャつく姿は、元祖バカップルとでも言うべき微笑>>続きを読む

サボテン・ブラザース(1986年製作の映画)

3.8

んなわけない、が満載の脳天気さ。人を疑わない善良さで押し切って喜劇を成立させてしまう明るさが今の時代には眩しい。

書割りのセットと動物の模型で創った野営のシーンの舐めっぷりも可笑しいし、歌う木と透明
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ドッグヴィル(2003年製作の映画)

3.5

こんなん舞台でやりゃいいじゃん、と思いながら観始めたが、最初は違和感のあったあのセットが観てるうちにだんだん馴染んできて本当の街の様子とイメージが重なっていくから面白い。

あのセットで、舞台ならぬ映
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悪の階段(1965年製作の映画)

4.0

プロット自体はややありきたりだけど、雰囲気に酔える魅力に溢れる。特に、音楽の使い方が抜群に素晴らしい。

嬉々として札束を数える四人だとか、部屋の外でけだるく待つ団令子だとかに重ねられる音楽が、チープ
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

3.8

Wi-Fi探しに始まる半地下生活の造形が妙味で、無頼家族がブルジョワ豪邸を蝕んでいく過程も痛快。最初に家庭教師の面接に訪れる場面で、奥さんが庭のテーブルに突っ伏して寝ている演出なんかも無意味に面白い。>>続きを読む

最高の人生の見つけ方(2007年製作の映画)

3.0

ジャック・ニコルソンもモーガン・フリーマンも、いつも通りといえばいつも通りなのだが、組合せの妙味は期待通りに楽しめる。

二人部屋の病室での掛け合いのあたりが実は一番面白くて、旅に出て以降は爽快な味わ
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ナイト・オン・ザ・プラネット(1991年製作の映画)

3.8

もちろんタクシー運転手と乗客が主役なんだけど、舞台となった5つの都市が見せる「夜の顔」がもう一つの主役。

人々が寝静まった冬の夜の街は、飾らず無防備で。街のもつナマの魅力を見せてくれる。

その中を
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丹下左膳 百万両の壺(2004年製作の映画)

3.5

津田豊滋監督はもともとカメラマン(本作でも撮影兼任)ということで、映像の美しさは特筆もの。特に矢場のカラフルな絢爛さは眺めてるだけで楽しい。

セットの組み方までオリジナルに忠実なので、かの大傑作がカ
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丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)

4.5

丹下左膳と矢場の女将の口論、場面切り替わるや、途中省略で・・・絶妙の間で繰り返されるワンパターンの演出は、わかっていても笑わされる。導入部分も素晴らしい・・・

最初に柳生家の当主と家老が登場→婿養子
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風と共に去りぬ(1939年製作の映画)

4.0

夕陽に赤く染まるタラの大地を背に、ぐわっと激情を燃え上がらせるスカーレットを仰角でとらえた画。その迫力にはゾクゾクきた。

美しくて醜いスカーレット。そのたくましい生命力、圧倒的な存在感。こんな人、実
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リトル・ダンサー(2000年製作の映画)

3.8

約20年ぶりの再鑑賞だったが、映像は全く色褪せていない。スティーブン・ダルドリーが優れた映像作家であることがよくわかる。ジェイミー・ベルがスローモーションで跳ね続ける、印象的なオープニング。

舞台と
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砲艦サンパブロ(1966年製作の映画)

3.5

オープンセットが素晴らしく、'20年代の中国を再現したかのような完成度に感動(台湾と香港でロケしたということでさすがに長江の壮大さは再現できなかったとみえるが)。

非常に真面目に作られているのだが、
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ミステリー・トレイン(1989年製作の映画)

3.5

季節感を直接表現してる部分はあまり無いんだけど、それでも蒸し蒸しした空気が伝わってくるような。そんなダルさが好き。

日本人が観るとどうしても永瀬&工藤のパートに着目してしまうけど、イタリア人の後家に
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汚名(1946年製作の映画)

3.5

ハリウッドの3秒ルールの抜け道を突いた有名なキスシーンは、観ているだけで照れ臭くなるほど。ヒッチコックって、こんな官能的な演出力まで持ってたんだね。

設定もよく考えられていて、曖昧でありながら鮮やか
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マイ・プライベート・アイダホ(1991年製作の映画)

3.5

2大アイドル俳優使って、こんな一般ウケしなさそうな映画を作っちゃうんだからエライ。

とても幸せとはいえない、底辺の人生を描いていながら、後味はなぜか清々しい。それはこの映画の寓話的なタッチがもたらし
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永遠のマリア・カラス(2002年製作の映画)

3.0

この映画を語るとき、まずファニー・アルダンに触れるべきなんだろうけど、個人的にはジェレミー・アイアンズ。やっぱりスゴイ役者だ。

男の色気というか、あの存在感。むしろマリア・カラスを喰ってしまってるく
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ぼんち(1960年製作の映画)

4.0

女たちに振り回される人生、でありながらも、けっしてノラリクラリかわすだけでもなく尻に敷かれるばかりでもなく、何とか一矢報いようとする「きくぼんの意地」が垣間見えることで、話に一本筋が通っている。

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KT(2002年製作の映画)

3.5

「時代」が画面から滲み出ている。テンポが良くなく、展開がスムースさに欠けるのでいまいちノッていけなかったが、そのゴツゴツ感も含めて時代を演出していたのかもしれない。

未知への飛行(1964年製作の映画)

3.0

軍事が人の手を離れシステマティックに管理されるようになった。そのことだけが問題であるかのような描き方がされてるように思え、その点がどうもしっくりこない。

ソ連の議長も将軍も話してみれば良識があって誠
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カイロの紫のバラ(1985年製作の映画)

3.5

映画が好きで好きで堪らない、不幸な女性に訪れた束の間の夢。

…だと思えばラストの表情にも納得できる。それにしてもミア・ファローの表情の演技は素晴らしすぎる。

スクリーンの内と外が越境可能になりイン
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海を飛ぶ夢(2004年製作の映画)

4.8

ひとりひとりの想いは悉く真摯で、だからこそ互いに傷つけ合う。綺麗事では済まされない、剥き出しになった感情のぶつかり合い。厳しくて、そして優しい。

初めは相手の立場や感情を慮っていても、次第に、胸の奥
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アウトブレイク(1995年製作の映画)

3.0

前半部はパンデミック拡大の恐ろしさを伝えるホラーストーリーとして秀逸で、なかなかの訴求力。実際Covid-19になってみると、感染を拡げるのは軽率な人間の行為によるだとか、抗原さえ特定できれば感染は収>>続きを読む

山椒大夫(1954年製作の映画)

4.8

溝口&宮川コンビによる至高の映像芸術。最初から最後まで、全てのカットが決まっている。絵を眺めているだけで飽きない。

屋外シーンでの、宮川お得意の光と陰の表現。母と兄妹が引き裂かれる場面や、厨子王が関
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近松物語(1954年製作の映画)

4.0

妥協なきキャラクタリゼーション。人目も憚らずアンアン喘ぐように抱き合って泣く長谷川一夫なんて、ここまでやるか!というほどの見事な演出(演技)。

進藤英太郎の大経師のケチでいやらしい悪役ぶりも徹底して
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祇園囃子(1953年製作の映画)

3.5

今も昔も男はスケベだし、女がひとりで生きていくのは楽じゃない。そんな普遍を思い知らされるようで興味深い。

祇園の雰囲気の描出はさすがだが、東京の旅館でのシーンの露骨さも素晴らしい。

ミュンヘン(2005年製作の映画)

3.5

タイトルは「ミュンヘン」だが、ローマ、パリ、キプロス、ベイルート、アテネ、ロンドン、そしてニューヨーク・・・舞台となる都市の美しい顔を眺めているだけで興味深く、スピルバーグってこんなに魅力的に「街を描>>続きを読む

ディア・エヴァン・ハンセン(2021年製作の映画)

4.0

パンパンに膨らんだ自意識の重みに押し潰れそうになるティーンエイジ特有の絶望が、ミュージカルという手段を通じて心に響く。

かなりキツいものを描いているはずだが、どこか素朴な学校や家庭の風景が痛切さを和
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妻は告白する(1961年製作の映画)

4.8

女はただひたすら愛に飢え、愛を与えてくれる男を一途に求める。男は違う。愛するにも理由を欲しがる。恰好をつけずには生きてゆけない。

登場人物の言動は一見トンデモナイのだが、最後まで観ると「男と女」の普
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まあだだよ(1993年製作の映画)

3.0

あまりにストレートな善意の交換、面白くもなんともないのに湧き上がる笑い声。正直観てて気恥ずかしいが、何と言うかパワーは感じる。それも嫌な種類のパワーではない。それにしても香川京子は素晴らしい。

シティ・オブ・ゴッド(2002年製作の映画)

4.8

リオのスラムなんてまったく知る由もない世界なのに、何たるリアリティ。観てる自分も、まるで「神の街」で暮らしているかのような錯覚に陥るほど。

そんな臨場感あってこそ、こんな場所で生まれ育ったとしたら、
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ウエスタン(1968年製作の映画)

5.0

1分で済ませられそうなシーンであっても、20分かけて魅せる。この贅沢な時間の使い方。たまらん。いや、きっと当時の西部ではこんなふうにゆったりと時間が流れていたに違いない。

そして、音。要所要所で流れ
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栄光のル・マン(1971年製作の映画)

4.0

徹底したリアリズム。これを子供の頃に観ていたらカーレース好きになっていたかもしれないな、と思った。

レースがスタートするまでの映画冒頭30分、殆どセリフらしいセリフが無いというのが凄い。事故のシーン
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13デイズ(2000年製作の映画)

3.0

なかなか誠実に作られたポリティカルドラマ。とてつもない大きな責任を背負って、時間と勝負しながらギリギリの決断を下していく様がよく描かれており、緊張感が持続するのでさほど長さも感じない。

が、一方で映
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