ルサチマさんの映画レビュー・感想・評価 - 13ページ目

紙の花(1959年製作の映画)

4.7

再見。最高のメロドラマ。接近なき愛という表象がこんな形で可能になるとは嬉しくてたまらない。

渇き(1957年製作の映画)

4.8

再見。ひたすらに人物を中心に捉え続ける異様さにビビる。見ていくうちに、その不穏な説話と相まって、一体いつ『東京物語』で東山千栄子が居なくなった広島の均衡の取れなくなった部屋のような構図がやって来るもの>>続きを読む

夜の鳩(1937年製作の映画)

4.4

映画の大半を占めるたむらやのシチュエーションで、最初に村上が訪ねてくる場面の空間の見せ方以上の驚きがその後ないように思えてしまった。

花ちりぬ(1938年製作の映画)

4.9

昔授業で『花ちりぬ』見ていたことを思い出した。画面奥の階段を駆け上がる花井蘭子を捉えたカメラは反対に画面手前へと遠ざかる。座付きの切り返しも奥の建物に座る女性を、わざわざ手前に建設された手前の柱を舐め>>続きを読む

欲望という名の電車(1951年製作の映画)

4.1

映画自体は全然好きじゃないが、駅構内にやってくる電車を映した画面に響くアレックス・ノースの音楽が堪らない。記憶に残る映画音楽だ。

エンジェル(1983年製作の映画)

4.3

明らかに画面は緩く締まりがないものの、ナイトネオンやゴシック調のインテリアの中で殺し合いが起こるアクセントが流石のアメリカ娯楽映画だ。明らかにヒッチコックな布団シーツの中での流血も品があるし、殺人鬼が>>続きを読む

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

4.3

相変わらずPTAはあまり良いと思えないものの、今まで見てきた彼のフィルモグラフィーの中では一番良かった。端的に物語ろうとせずに、堂々と脱線していく余計さ、断片のエピソードをモンタージュしていく随筆的な>>続きを読む

リオ・グランデの砦(1950年製作の映画)

5.0

北部のジョン・ウェインが南部の妻モーリン・オハラに南部紙幣を渡すと、それに応えるようにオハラが釣り銭として北部銀貨を袋から出す。ここでの通貨はそれに先立って2人に演じられた緑道での形あるものは直るが、>>続きを読む

軍使(1937年製作の映画)

5.0

横たわる軍曹にシャーリー・テンプルが小ぶりのブーケを手渡し、歌声を聞かせるシーンを90度の切り返しで提示し、次第に眠りこける軍曹をそっとしておくように後退していくシャーリー・テンプルが一度病室から出て>>続きを読む

恋に踊る(1940年製作の映画)

4.8

モーリン・オハラが舞台で踊るというだけで最高だ

クレイグの妻(1936年製作の映画)

4.4

割れた壺と大量の吸い殻という美術装置で物語ってみせる手腕は流石。当時相当に珍しかったであろう女性監督が、ここまで孤立した女性像を炙り出す題材に挑んでいたことが驚きに値する。

砂に咲くバラ/強く、速く、美しい(1951年製作の映画)

4.7

ルピノのベスト。ここまで無骨でぶっきらぼうなテニスのラリーを見たことがない。怠慢な印象さえありながら、突如信じられないような仰角でネットを捉えたかと思えば、ビップルームからフレーム外のコートを見せるア>>続きを読む

アンナの出会い(1978年製作の映画)

4.5

均整の取れた構図の中で人物が動くたびに均整が崩され、同時に再び均整を取ろうとするようなカメラと人物配置の組み立て方に唸る。とりわけアンナが最初のホテルにやってきて、案内された部屋の内部においてカメラが>>続きを読む

私、君、彼、彼女(1974年製作の映画)

3.6

破滅的ではあるが、どうも図式的で全然いいと思えない

アンブレラズ(1994年製作の映画)

4.7

クリストシリーズの中で最も起伏に満ちたドラマの連鎖となっており、アメリカと日本を慌しく移動するクリストと、日本に滞在しクリストの代わりに指揮を執るジャンヌ=クロードとの連携と断絶が映し出される。他のク>>続きを読む

ランニング・フェンス(1978年製作の映画)

4.8

海へと続く巨大なカーテン(=ランニング・フェンス)を建設する過程の中で、現地の行政との軋轢が議論を通して描かれていく。『ヴァレー・カーテン』では作業を共にする労働者との間で生じる葛藤が描かれるものだと>>続きを読む

クリストのヴァレー・カーテン(1973年製作の映画)

4.6

完成後28時間で撤去されたクリストのヴァレー・カーテンを捉えたというだけで大変貴重な映画だと思うが、なんといってもメイズルス兄弟の眼差しがクリストに協力する労働者たちの集団からふいに対岸のゴルフを嗜む>>続きを読む

メリー・ゴー・ラウンド(1981年製作の映画)

3.8

撮影が見事な場面があるのは認める(ホテルのバーの窓辺から差す光線に照らされるマリア・シュナイダー)が、しつこいほどに繰り返される悪夢のような追う/追われるの反復は毎回差異が描かれるものの、それらは映画>>続きを読む

ポニョはこうして生まれた。(2008年製作の映画)

4.5

千葉雅也の新書広告を電車で見るたびに、(何でもかんでも肯定しやがって、哲学の勉強は仕事や生活にはつながらないし、辛いに決まってるんだから嘘つくな馬鹿が…)と内心不貞腐れてしまうような人間にとって、宮崎>>続きを読む

ゾンゲリア(1981年製作の映画)

4.6

美しきゾンビ映画。冒頭の海辺のシーンだけで魅了されてしまう。スモークが焚かれまくっててまさに80年代アメリカ映画。

二重結婚者(1953年製作の映画)

4.1

かなりテンポは良いのだが、ルピノにしては全体的に一つ一つのシーンに驚きが欠ける。結末の付け方ももう少し射程を広げられる気がする。

暴行(1950年製作の映画)

4.4

暴漢に襲われそうになる暗闇で必死に逃げ惑うヒロインを捉えた映像はフィルムノワールとしてのスリリングさに満ちていて素晴らしい!その後、PTSDのなったヒロインの描き方(音響効果など)がどうしても引っかか>>続きを読む

シャドウ・イン・クラウド(2020年製作の映画)

4.1

映画前半、密室空間でほぼヒロイン一人という極めてミニマルな状況で、しっかりと緊張感と閉塞感を持続させていく挑戦はとても好き。中盤でようやくこの閉塞感から解放されたときの開放感はあまりにも分かりきっては>>続きを読む

マイ・ブラザーズ・ウェディング(1983年製作の映画)

4.5

これはかなり好き。クリーニング店を訪れる客と彼らに雑な接客をする女主人が面白い。店で働く主人公が店内で繰り返し男主人とプロレスに興じながら空間が広がっていく。クライマックスでの兄の結婚と、知人の葬儀が>>続きを読む

キラー・オブ・シープ(1978年製作の映画)

4.3

随所にユーモアが散りばめられ、いい意味での若くなきゃ撮れなさそうな緩さがある。女の子たちのグループに自転車を壊される黒人少年の姿を捉えたグループショットが妙に気になる。

めぐりあい(1968年製作の映画)

4.9

冒頭から破天荒にジャンプして走り回り物を投げつける黒沢年男の溌剌とした身振りに高揚感を覚えつつ、そんな黒沢からアプローチを受けながらも10代のなせる若々しさで黒沢から適度に距離を取り、そして時に誘惑す>>続きを読む

耳をすませば(1995年製作の映画)

5.0

卓越した空間設計を見せつける冒頭からこぼれ落ちそうになる涙を耐え凌ぎ、見事な画面の連なりに身を委ねる。
特定の名前を持たず家の塀をあっさりと乗り越えていく猫と家の中でそんな猫に対して吠えることしかでき
>>続きを読む

ノロワ(1976年製作の映画)

4.5

これは見事。大作時代劇を荒唐無稽とも思える室内外のロケーションの対比で描いてみせる。とくに室外での役者への負担のかかる導線設計は物語そのものを脱臼させつつ、彼らの立ち位置から力関係を暴いていくようにも>>続きを読む

デュエル(1976年製作の映画)

4.6

同時録音の可能性の追求であり、画面と芝居、そして音(演奏)が引き渡されていく行為の記録

アネット(2021年製作の映画)

4.8

物語の中に音楽を取り込むのではなく、寧ろ歌うことを生業としない俳優アダム・ドライバーが生身の体でフレーム外から鳴り響く音楽に対して抵抗するように歌う。それは演劇でいえば地点×空間現代のコラボレーション>>続きを読む

ポーラX(1999年製作の映画)

4.3

ベッドシーンについて言及することに躊躇いはあるが、この映画のゴルベワとドパルデューの暗がりでのベッドシーンは神秘性がある

ポンヌフの恋人(1991年製作の映画)

4.8

レオスで一番いい。橋の上でなされる男と女の単独の切り返しから同一ショットへ転じる反復がなされるたびに、バザンの書いたチャップリンとライオンの批評を思い出す。

それとともに今作で興味深いのは「眠りにつ
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散り行く花(1919年製作の映画)

5.0

最も美しい女優へとリリアン・ギュシュを仕立て上げたクロース・アップの素晴らしさは言わずもがな。永遠に見ていたい。

嵐の孤児(1921年製作の映画)

5.0

淀川長治が夢の中で『嵐の孤児』の一巻分を全部見たと語っているインタビューを読んだが、野暮なツッコミを入れることなく、それはきっと本当のことなんじゃないかと想像を膨らませるとき、『嵐の孤児』の普遍的な映>>続きを読む

國民の創生(1915年製作の映画)

5.0

紀伊國屋版で再見。この映画を起点にあらゆる映画は検討されるべきじゃないか。グリフィスへのフォードの応答がいかなる形でなされているのか、未だ答えを見つけられないまま考え続けている。