ルサチマ

めぐりあいのルサチマのレビュー・感想・評価

めぐりあい(1968年製作の映画)
4.9
冒頭から破天荒にジャンプして走り回り物を投げつける黒沢年男の溌剌とした身振りに高揚感を覚えつつ、そんな黒沢からアプローチを受けながらも10代のなせる若々しさで黒沢から適度に距離を取り、そして時に誘惑するかのようにヒョイと近づく酒井和歌子が猛烈に美しい。黒沢から初めてのデートに誘われ、「イヤよ」と断りながらも電車の車窓から笑顔で駅のホームにいる黒沢と別れる晴れやかさ。その直後に酒井が務める仕事場にやってきた黒沢を再び適当にあしらったかと思えば、今度は酒井の方から店を去った黒沢の後ろをストーキングすることで二人の関係は追う/追われる関係の恋愛ドラマであることが見事に提示される。

そんな二人の関係が最もエモーショナルに、しかし過度な情緒に陥ることなく寧ろ殺伐とした印象さえ与えるように描かれるのが、海水浴デート帰りの土砂降りのシーンであるだろうが、このシーンは本当に驚いた!

海辺で黒沢の肉体に触れることを拒んでしまった酒井の初々しい憂いが提示され、土砂降りにも拘らず黒沢が運転するダンプカーの荷台に乗りながら帰る道中、痺れを切らした黒沢が酒井に腹を立て、助手席へ来させるために荷台を高く上げてみせるも酒井は荷台にしがみつき頑なに黒沢の隣の助手席へ移動しようとしない。ここまでしても動じない酒井に黒沢はなす術が見当たらぬまま、自らダンプカーを降りて土砂降りの雨を受けながら少し離れた畦道へ距離を取った後、踵を返して酒井のいるダンプカーの荷台に登り、泥まみれになりながら彼女を受け止めキスをする。

激しく官能的になりそうなこの場面を、あくまで若者の健やかさとして描き、乾いた印象さえ与えてしまう恩地の手腕がなんとも素晴らしく、真の青春映画としての輝きを目の当たりにした心地にさせてくれた。
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