こういう映画を観るとき、道徳的な善悪をいっさい考えなくなった自分に気付く。
何の色も混ぜずに理解し発信しようとする監督の姿勢に共感する。
私の孤独を癒してくれるのはこういう映画だけだって思う。
私に>>続きを読む
私が沢木耕太郎にのめりこんだ契機は『凍』だった。主人公は山野井泰史。
沢木のストレートな文体が山野井さんのキャラクターにぴったり合っていて、なんというか、もう他の本とは色が違って見えた。
そんな山野>>続きを読む
端正でありながら迫力があり、作った人の姿勢の良さを感じさせる映画だった。
余分が無いのもいい。
やはり、どうせわからないならここまで徹頭徹尾わかりにくいほうが清々しい。
以下は気に入った台詞の備忘。
「これで最後よーー最初かも」
「私の金よ!」
「誰のものでもない」
「行き来するだけ」>>続きを読む
第一部の短編『マリアの本』だけなら4.3くらい付けてた。
その後が良くない。ゴダールは簡単に文脈やテーマが理解できては駄目なんだとおもう。一気に薄っぺらくなる。
くわえて本作は、やっちゃいけないこと>>続きを読む
「お父さん、どうして物にはすべて輪郭があるの?」
「ははは、輪郭のある物なんてどこにあるんだい?」
もしあの渋滞シーンが二時間つづいても、きっと怒る気になれなかっただろう。
単調さに少し寝て、起きて、なんにも見落としていないかのように続きを観て、くすりと笑っていたことだろう。
世界観やストーリーに筋が通っており、(その筋が理解しにくいとしても)綺麗で気持ちがいい。純文学の作家や愛好家に好かれる理由がよく分かる。
原作の傑作たる由縁はふたつあって、ひとつは当然、大の人間性。身が削れるほど頑張っているのに悲壮感のないところ。もうひとつはJASSの人間模様。
もし後者に焦点を当てるなら、映画の尺を考慮し、視点を雪祈>>続きを読む
こんな映画を一緒に観て、なんとか意味を見出そうと努力してくれる友達がいて幸せだ。
「他者の靴を履く(To put yourself in someone’s shoes)」というフレーズがある。心理学だけでなくコンサルティングやマーケティングなどの分野でも重要視されつつあるその行動>>続きを読む
この映画を勧めたくなるような友達がいて、私、彼らがこの映画に出てくるような人たちになれるって信じてる。恵まれてるとおもう。
社会的正義やマスコミといったものは好きじゃないのだけれど、ジャーナリストという人種は尊敬している。世界に対し徒手空拳で闘いを挑む彼/彼女には凄味がある。
エンドロールが始まった途端に席を立つ人と、足下灯が再点灯してもまだ座ったままの人が半々くらいだった。
鼾かいて寝ている人と啜り泣いている人も半々くらい。
私は両方とも後者。
今まで映画館にあまり足を運>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
世界遺産のなかの世界遺産というものがあって、ノートルダム大聖堂はもちろんそれだとおもう。じっさい見たことあるので言えば、同じフランスのモン=サン=ミッシェルとか、あるいは街ごと世界遺産のベネチアとか>>続きを読む
何がここまで評価されたのか分からない。審査員の方々は、過去のアカデミー受賞作とぜひ比べてみてほしい。
評価の分かれる映画でも、だいたいどこかに悪評を捩じ伏せる絶対的な質の高さを持っているが、本作にはそ>>続きを読む
「俺は毎年地球を三周、12万キロも走ってる。でも良いことがあったのはあの一回きりだ」
うちの家のことではないのか。それくらい似ていた。小説に急速にのめりこんでいった頃を思い出した。その訳も。私を理解してくれるのは、小説だけだったのだ。どうして今まで忘れていたのだろう。今日だって、そうい>>続きを読む
どうすれば自伝なんか面白く撮れるの? どうしてこんな話が眠気を誘わないの? スピルバーグには何が見えているの? どうすれば?
「あのときこうすればよかった」と「でもどうにもならなかった」の繰り返しなのかとおもうと、切なくて可哀想でならなかった。
小説の方が好きだな。何でかな。迫力かな。追い詰められた人間の迫力があるんだよな。
このレビューはネタバレを含みます
全体的に完成度が高く、クリント・イーストウッドにしかない美学・美意識を堪能できる良作なのだが、とりわけ「グラン・トリノ」の使い方が凄まじい。
それはたとえば主人公の「愛車」であるため、その愛を具象化>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
止まらなくなるほど面白いのだけれど、デカプリオが殺されたのには参った。参りすぎて分析とか批評とかできない。それくらい没入していたということなのだろう。
アーティストという生き物の「生きづらさ」と、思考の手段として数千年かけて発達してきた「言葉」が結びついて、「純文学」というジャンルが形成された。と、私は考えている。
その背景を鑑みれば、純文学が常に「>>続きを読む
『バビロン』が好みでなかったとはいえ光るものを感じたので、同じ監督の本作を観てみた。そして、私の直感は外れていなかったことが証明された。
『スラムダンク』や『ルックバック』などの大好きな漫画を彷彿と>>続きを読む
映画好きだと、この映画を嫌いとは言いにくい。でも、私は好きではないとはっきり言っておく。ただ、描かれている真っ直ぐな人間模様は悪くない。
傑作として名を馳せていてもおかしくない。作品の質と巷の評価がかなりずれている。アカデミー賞をひとつも取っていないとはちょっと信じがたい。国務省の圧だろうか。
監督の使命感というか、伝えようとする意志>>続きを読む
転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー
映画のベースとなったこの短歌は、東直子さんの第一歌集『春原さんのリコーダー』の表題歌であり、また彼女の代表作のひとつでもある。
私は東直子さんもこ>>続きを読む
原作ファンとしては(改変部分も含め)悪くない実写化だが、原作を読んでいない人に伝わるのかは疑問。
それとも、原作ファンしかターゲットにしていないのだろうか。