しゅんさんの映画レビュー・感想・評価 - 15ページ目

BLUE/ブルー(2021年製作の映画)

-

めちゃ良い。古臭いボクシング映画で、全然古臭くない。勝ち負けにこだわらないやつに敗北の価値はわからないってことがよくわかる。常に怒らない松山ケンイチの静かな怒りといつも怒る東出昌大の静かな応答。道を挟>>続きを読む

暁の合唱(1941年製作の映画)

-

『有りがたうさん』とのバス運転手もの二連発。知性と野性が交差する若き木暮実千代の快活さを何より魅力的に撮っている。物語が曖昧なまま、最後のロングショットで納得させる清水宏の巧みさと誠実さ。腕相撲のシー>>続きを読む

パーム・スプリングス(2020年製作の映画)

-

結論なんかミエミエなのになんで面白いと感じちゃんだろう。終わりなき反復をテーマにしながら、オーソドックスな物語構造を持っている。「なんでもわかっている」人間の盲点が展開のテコに使われているのもいい。プ>>続きを読む

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012年製作の映画)

-

Qからシンエヴァまでおよそ8年のスパン。しかし、当たり前なのだけど、Qとエヴァは物語内時間上では連続していて、そのズレになんだか眩暈がした。破からQまで3年(だけど物語上は14年経過)という逆のズレの>>続きを読む

夏時間(2019年製作の映画)

-

物質としての「家」の映画だなと思ってたら、舞台となった祖父の家は住んでる人に頼み込んで使わせてもらったそう。階段のところの鍵付きの門とか緑にあふれた庭とか夜のバルコニーとかの印象が強い。ひと夏の女の子>>続きを読む

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(2009年製作の映画)

-

第3新東京市の夜明けから朝までの街と人々の様子を描く1分間が好き。稼働を始めるビル群、河原でランニングする人、あくびしながら通勤路を歩く伊吹マヤ、シンジたちが通う学校近くの文具店。旧劇では省略されてい>>続きを読む

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007年製作の映画)

-

公開時以来。とにかくラミエルの形態変化と音がよすぎる。幾何学性と「キュゥイイイイン」「キョゲェエエァァ!!」にインダストリアルandアンビエント心をくすぐられる。シンジはこの時点で旧劇よりコミュニケー>>続きを読む

騙し絵の牙(2021年製作の映画)

-

とにかく音楽(LITE)が良い。マスロックから非社会的で自己充足な洗練を剥ぎ取り、権力社会闘争のBGMに変える編集の力量。騙し合いゲーム(というよりも出版業界生き残りゲーム)に音楽と言葉回しが骨を与え>>続きを読む

サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス(1974年製作の映画)

-

「意外と普通」とどっかで評判を聞いていたんですけど、完膚なきまでのサン・ラワールドで安心しました。ジャングルをさまようスペースサイケから、40年代ジャズバーでの爆風と階段落ち、そして四次元(という設定>>続きを読む

ノマドランド(2020年製作の映画)

-

フランシス・マクドーマンド×アメリカの風景って絶対重苦しいやつじゃんと思ったら終始穏やか。途中で悲劇になるんだろ、とずっと思ってました。

リーマンショック後の社会を背景にした現代のビートニク。それは
>>続きを読む

あのこは貴族(2021年製作の映画)

-

再生産を繰り返すのは都内の上流階級も地方の下流階級も一緒。そのテーマを門脇麦と水原希子のそれぞれの物語で見せる中で、浮かび上がるのは友人たちの重要性。言ってしまえばシスターフッドなんだけど、それにして>>続きを読む

定めなき女の日々(1974年製作の映画)

-

アドルノの弟子(かな?)として名を知ったクルーゲ。やはりというか、師匠譲りな大衆社会への批判意識で貫かれているんだけど、その意識が生真面目さよりも可笑しさにつながっているあたりに好印象をもった。
夫と
>>続きを読む

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に(1997年製作の映画)

-

15年ぶりに観て、新劇を撮る理由がわかった。覚えてた以上に徹頭徹尾気持ち悪い。僕がこの映画の監督だったらこれを代表作とは言われたくないと思う。公に出すのが憚れる、規制されておかしくないほどのアングラ変>>続きを読む

すばらしき世界(2021年製作の映画)

-

カメラのズームアウトと上空への上昇が一人の人間の矮小さと尊厳を描く主題に合っていてハッとさせられる。熱血の正義感と血の気の早さ、そして孤児として育った環境ゆえにアウトローの道を生きざるをえなかった人間>>続きを読む

シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

-

「説明過多」って大抵ネガティブな響きで使われる言葉だけど、今作のすべてに意味を与えていく説明の過剰さはなぜに感動的なんだろう。たしかに自分はアニメ版、旧劇、新劇を全部観ている(漫画は未読)けど、思い入>>続きを読む

ノトーリアス・B.I.G. 伝えたいこと(2021年製作の映画)

-

ビギ―の母ちゃんの印象強いな。

90年代の東海岸屈指のスターラッパーで、東西抗争に巻き込まれて25歳で命を落とした巨漢、ノリ―リアスB.I.Gのドキュメンタリー。子供時代からの友人が売れてからずっと
>>続きを読む

二重のまち/交代地のうたを編む(2019年製作の映画)

-

一人の人物に焦点を当てていく小森はるか映画の特徴はなく、四人の"旅人"の体験を構造として見せているから、やはり瀬尾夏美との共作なのだなと思った。当事者がいなくなった後でそれはどう語り継がれていくのか。>>続きを読む

春江水暖~しゅんこうすいだん(2019年製作の映画)

-

風景の嫋やかさと人間の居た堪れなさというありがちな対比なんだけど、捉える感度の高さで傑作まで持っていってる。泳ぎから歩きをひたすら横移動して映してくところ、みんな指摘するだろうけど、マジ素晴らしい。長>>続きを読む

郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942年製作の映画)

-

おーい!「夜」に何があったんだ!!明らかに大事なとこ飛んでて、いつできるかわからない完全版みたくなっちまったよ。

冒頭近く、トラックを映してたカメラが上昇して酒場に向かっていくマッシモ・ジロッティの
>>続きを読む

地獄の警備員(1992年製作の映画)

-

ギリギリ上映期間に間に合った。
黒沢清が「なんでやったかわからない演出がたくさんある」って最近言っててよかった。ソーセージの拒否とか、クズの撤回とか、たしかによくわからない。オートロックシステムが意味
>>続きを読む

天国にちがいない(2019年製作の映画)

-

集団で怒りを滾らせる若者たち、妹の料理にワインが入っていたことで店にキレるギャングの双子(?)、排水溝をゴールに見立ててゴミでホッケーするパリの清掃員。面と向かいながら、スレイマンにはなにも起きないと>>続きを読む

あの頃。(2021年製作の映画)

-

「ハロヲタ!」というより「関西ゼロ年代!」という気持ちになった。劔さんはこの映画の舞台となっている時期にミドリのライブで観ていたのだが、全然アイドルのイメージありませんでした。

無粋な話かもしれない
>>続きを読む

あ、春(1998年製作の映画)

-

ずっと心配顔の斉藤由貴が突然笑いだす夫婦のやり取りを長回しで撮っているのがまじで怖くてすさまじかった。山崎努に対して「かわいそう」「かわいそう」を繰り返すところもヤバくて、物語中のトリックスターである>>続きを読む

風花 kaza-hana(2000年製作の映画)

-

木の下で眠る小泉今日子と浅野忠信が目覚めていくところを映した最初のシーンや柄本明の座頭市演技など印象的な長回しはいくつかあるものの、非常にささやかな映画という印象があって、これが遺作になるとは監督本人>>続きを読む

空がこんなに青いわけがない(1993年製作の映画)

-

相米特集で相米のプロデュース作品。
奥行から車がゆっくり近づくのが不気味で好き(後の黒沢清っぽい)。前半の階段のショットとかで小津的なホームドラマか?と思いきや別役実的な不条理日常劇だった。別役さんあ
>>続きを読む

お引越し(1993年製作の映画)

-

冒頭、離別寸前家族三人の三角形のテーブルがあまりにいびつなので笑ってしまった。

レンコ(田畑智子)の疾走(車、バイクの走行も含む)による焦燥的な速度と、後半の山祭りと湖での無時間的な彷徨の対比が、彼
>>続きを読む

夏の庭 The Friends(1994年製作の映画)

-

マジでさわやかなジュブナイルストーリーだったし、井戸のシーンでは「え、そんな安っぽい演出でいいの?」とちょっと戸惑ったけど、最後の最後に強烈なラストが待っていた。神戸を舞台にしたこの映画が阪神・淡路大>>続きを読む

光る女(1987年製作の映画)

-

『魚影の群れ』『雪の断章』『光る女』は相米が80年代に撮った北国三部作だと思っていて、『セーラー服と機関銃』『台風クラブ』のような代表作に比べると存在感が薄く、『ションベンライダー』『東京上空いらっし>>続きを読む

台風クラブ(1985年製作の映画)

-

相米の映画を立て続けに観ると、『台風クラブ』はかなりオーソドックスに作っていて、相米の中では異色作であることがわかる。教室のゴタゴタの中でふと挟まれる三上祐一のアップ、平屋の家のドアを開け閉めして「た>>続きを読む

ションベン・ライダー(1983年製作の映画)

-

いや、これはちょっと凄すぎるでしょ。冒頭のプールからバイク周回、そして拉致までのワンカットも、貯木場の追いかけっこも、宴会でのギンギラギンも、人間の蠢きの捉え方が凄まじい。ぐわんぐわん揺れる花火(合成>>続きを読む

魚影の群れ(1983年製作の映画)

-

ワンカット目から長沼六男の撮影がすごい。浜辺を映すカメラが左へ移動して水平線を完璧に平行に捉えた後、静止からふたたび左へ回転し、砂浜にできた窪みが見えたかと思った刹那、カメラの先に二人の男女の遠いシル>>続きを読む

ラブホテル(1985年製作の映画)

-

そんなに長回しを意識させないのに(いや、おれが相米に慣れただけか?)42カットで全てを納めてる。トンネルの下の車椅子疾走!二回目のラブホテルの謎の横移動!桜吹雪と子供の群れ、倒れた自転車!の三点に宿る>>続きを読む

雪の断章 情熱(1985年製作の映画)

-

寺山修司の影響ってこんなに相米にあったんだ!そして寺山よりぜんぜんよい!という発見。道化と北の土地に己を託す…。
大雨の中、土手で激しく会話する斉藤由貴と榎本孝明の奥でゆらり動き続ける白塗りの人物たち
>>続きを読む

翔んだカップル オリジナル版(1982年製作の映画)

-

時代のせいというわけでもなく、セリフ回しや声の張り方や女性の倒し方に男の身勝手さが出ている。それを男=戦う、女=応援するの関係性で解消しようとするから余計にタチが悪くて、どす黒いミソジニーとエゴイズム>>続きを読む

早すぎる、遅すぎる、(1982年製作の映画)

-

寝不足の中でストローブ=ユイレは観るもんじゃないし、案の定途中の眠気とアテネフランセの椅子の落ち着かなさはヤバかったが、冒頭、バスティーユ広場のラウンドアバウトでの車からの360度パンショット(十数周>>続きを読む

次郎長三国志 第二部 次郎長初旅(1953年製作の映画)

-

「モブシーンのマキノ」の面目躍如。屋敷から正面突破するときの群衆の動き、茶摘みの娘たちの踊るような動き、次郎長一味6人と取り囲む敵たちが共に回転する動き。人数が多ければ多いほど冴えてて楽しい。
次郎長
>>続きを読む