西村大樹さんの映画レビュー・感想・評価 - 14ページ目

西村大樹

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東京暮色(1957年製作の映画)

4.0

小津作品の中では、ダークな部類に入る物語。
演出的に、小津監督のこだわりが顕著に見られる。特に会話に関しては、ここまで特徴が出ているのも珍しいのではないだろうか。
物語の特異性を、自らの演出で中和した
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競輪上人行状記(1963年製作の映画)

4.0

小沢昭一主演ということもあり、共同脚本の今村昌平色の強い作品。
業にまみれた存在を、坊主としたことがいい。ラストは業の中に悟りすら開いたかのようにも。
西村昭五郎監督のデビュー作だが、のちのアクション
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岸和田少年愚連隊(1996年製作の映画)

3.5

演出がとにかくいい。やんちゃで軽い感じがよく出ており、暴力シーンではハッとするほど凶暴に描いている。
ただ、脚本が……。ほかの井筒作品でもそうなのだが、どうも脚本が弱い作品が多い。見せ場だけを繋いだ感
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嵐を呼ぶ男(1983年製作の映画)

4.0

完璧な娯楽映画!
映画に何を求めるかは、人それぞれである。しかし、観たあとに満足感を得たいというのは、共通したものであろう。本作は、細かい理屈などすっ飛ばしたところに快感があり、ひたすら裕次郎のアイド
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凶弾(1982年製作の映画)

4.0

出だし、懐かしの青春映画という感じの演出が気になるが、そこを超えたらハマった。
逃避行と彼のいままでの生き様が、脚本でうまくまとめられている。村川監督のアクション映画的な演出もマッチしており、娯楽とし
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晩春(1949年製作の映画)

3.0

小津安二郎特有のセリフ回しは、絶妙で面白い。演出にユーモアもある。しかし、ほかの小津作品に比べて、全体的に間延びしてしまっている。特に前半は、それを多く感じられる。
テーマ的にも、いまの時代には微妙に
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無頼(2020年製作の映画)

4.0

監督の思い入れが強すぎるためか、物語が壮大になり過ぎてまとめられていない。なので、物語を追いたくてもモデルになった事件が分からないといまひとつ見えてこない。
それでもスコアが高いのは……理屈を抜いたと
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NETFLIX 世界征服の野望(2019年製作の映画)

1.5

映画として、まったく面白くない。NHKのBSあたりで放送するような内容。インタビューによりNetflixの成功とブロックバスターの失敗が見えてくるのはいいが、インタビューだけでダイナミズムが一切ないの>>続きを読む

私をくいとめて(2020年製作の映画)

4.0

大丸監督の特徴を、ギュッと濃縮したような作品。
SEの使い方やイメージショットの入れ方など、流石!とファンのひとりとして拍手を送りたい。
厳しく迫る現実を、幻想に逃げることを否定せずに優しく立ち向かう
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アーニャは、きっと来る(2020年製作の映画)

3.5

構成が上手く、無駄が一切ない。同時に、いままでのユダヤ人逃亡映画に対し、特に秀でたものがない。全て上手くいった、当たり前の映画。
ドローンを使っての撮影は素晴らしく、その部分は秀でていたか。

パッチギ!(2004年製作の映画)

5.0

あの時代に関西にいたからこそ撮れた、井筒監督の傑作。
政治の季節など関係なく、強く生きる人々の姿。民族など関係はない。暴れたいときに暴れ、泣きたいときに泣き、歌いたいときに歌う。
一級の青春映画である
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

5.0

序盤、演出の強さを感じながらも、テーマが上手く浮き出ていないのが気になった。
それが、ある瞬間に燃え上がるように転換していく!そこから先は、ひたすら圧倒される。
縦軸にオルフェを据えたのが勝因か。

新感染半島 ファイナル・ステージ(2020年製作の映画)

5.0

前作の印象を引っ張ってしまうと、違和感を抱くかもしれない。ここは基本設定だけを共にする別作品だと思い観るべき。
アクションには『マッドマックス』の影響を感じなくもないが、こちらは市街戦ていう部分でプラ
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ミセス・ノイズィ(2019年製作の映画)

2.0

言いたいことは分かる。分かるのだけど、それが生なのだ。
始まって数分で、やりたいことが分かってしまう底の浅さは、主人公ではないが観ていて辛い。先が容易に想像できるのだ。
タイトルを意識したワケではない
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朝が来る(2020年製作の映画)

4.0

育てた側の物語にハマっていたところに始まる、産んだ側の物語に違和感を一瞬持つ。しかし、次第にその物語にハマり、ふたつの物語になったとき、物語のテーマが浮き出してくる。この構成は見事!
長い年月を芝居で
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海燕ジョーの奇跡(1984年製作の映画)

2.5

前半は面白い。奥山プロデュースで沖縄を舞台とした映画ということで、その後の北野武作品を思い浮かべるシーンもある。
が、フィリピンに行ってからは……。どうま上手く繋がっていない。逃亡ものだったのが父子モ
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ゼロの焦点(1961年製作の映画)

3.5

思ったのだが、最近はこのような純粋な推理映画はほとんどなくなった。どちらかといえば、人間ドラマが重視され、犯人を追う過程が横に置かれている作品が多く感じる。
本作は、純粋な推理映画である。人間ドラマは
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変態家族 兄貴の嫁さん(1984年製作の映画)

4.0

本作につけた点数は、小津安二郎ファンとしてのものである。逆に言えば、小津ファンでなければ意味が分からないのではないのだろうか。
この内容でOKを出した国映が、本当に素晴らしい。ピンク映画がアナーキーで
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早春(1956年製作の映画)

2.5

小津安二郎特有の演出スタイルが、完成へと近づきつつある作品。カット割り、アングル、セリフ回しにそれを感じられる。特に釣りのシーンは、完璧な小津スタイル!
しかし、物語がいまひとつ。脚本は上手いんですよ
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父ありき(1942年製作の映画)

2.5

序盤、信じられないほどにテンポが早い。いや、「早い」というより「すっ飛ばしている」という感じか。だからといって、基本ラインが分からないということにはならない。きちんと最小限の描写で分かる。
小津特有の
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ファンシイダンス(1989年製作の映画)

4.0

脚本の展開ぎ見事。出だしのテンポは特によく、一気に引き込まれる。
『変態家族 兄貴の嫁さん』で観せた小津安二郎のパロディは、本作でも所々に見出せる。特に飛行機内のシーンは、大杉漣も出演し笑ってしまいそ
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12人の優しい日本人(1991年製作の映画)

4.0

中原俊監督は、『櫻の園』にしても脚本に恵まれたときに本領を発揮する。純粋な演出家タイプなのであろう。
本作も演出家・中原俊の力が発揮されている。撮影などの技術パートも、閉鎖空間での芝居をきっちり支えて
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豚と軍艦(1961年製作の映画)

4.0

痛烈なる戦後日本論。
アメリカの尻に下に敷かれ、そこから這いあがろうともがく日本。豚のように強く生きる人々の姿を、どこかユーモラスに描いている、今村昌平の真骨頂。
ラストに訪れる解放よ!

Shall we ダンス?(1996年製作の映画)

2.5

劇場公開時以来に観たが、これは中年男性向けのスポ根映画であり、夢の結晶なんだな。だから中年男性からウケて、中年男性メインの映画評論界で評価された。
逆に言えば、それだけでしかない。手堅くまとめてはいる
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「無頼」より 大幹部(1968年製作の映画)

5.0

なぜ、いままで観なかったのか!こんな大傑作だとは思わなかった!
物語自体は通俗的とも言えるが、作り込みが見事。ラストに向かう道が見事なのだ。そして、ラストの殴りこみの素晴らしさ!舛田監督の油が乗り切っ
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櫻の園(1990年製作の映画)

4.0

脚本がとにかく素晴らしい!自然な言葉が散りばめられ、その中で物語が進行する。中原監督の演出は、その脚本を見事に映像に落とし込んでいる。
10年以上ぶりに観直したが、特機を凄く使っている。出だし数分は、
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正義だ!味方だ!全員集合!!(1975年製作の映画)

2.5

瀬川監督の人情喜劇路線は、嫌いではない。『8時だよ全員集合』と変わらぬコント路線に行っていたシリーズを、新しい方向へと促した功績もある。
が、評価が伸びないのは、いまひとつ物語が作り込めていないのと、
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ザ・ドリフターズのカモだ!!御用だ!!(1975年製作の映画)

3.0

瀬川監督に代わり、人情喜劇路線となったのは正解。ラストのファンサービスかと思えるドタバタが、少し浮いてしまうほどの人情喜劇。
同時に、はたしてドリフ映画である必要があったかの疑問も。
歌のシーンが、ゲ
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脳天パラダイス(2019年製作の映画)

5.0

「頭おかしいんじゃね〜の?」と絶賛してしまう作品。
真面目に観に来たら、腰を抜かしてしまうだろう。脳天がイカれてしまうこと確実である。子どもは枝になり、ネコは話し、豆は血を吸い、銅像は目からビームであ
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VIDEOPHOBIA(2019年製作の映画)

3.0

凄く考えて組み立てられている。親切に伝えてくれる作品ではない。組み立てられた映像から、自らが感じていく作品である。
面白い試みは評価するが、前半はもっと刈り込んで普通に観せた方が良かったかと。観客を手
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タイトル、拒絶(2019年製作の映画)

5.0

始まったところで、いかにも演劇出身の監督らしい演出に心配になる。その演劇的な部分は、ラストまでセリフに感じられる。
そのような部分はありながらも、やはり自分は絶賛したい。東京の「そこ」に生きる人々の姿
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ストックホルム・ケース(2018年製作の映画)

2.5

場所が1箇所で展開する脚本は、本当に難しい。本作は穴に落ちてしまった感じ。
犯人へと同調していく過程が雑。場所が移動できない分、心理的部分を掘り下げるべきなのだが、まったくそれが出来ていない。
ラスト
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スパイの妻(2020年製作の映画)

5.0

最近の黒沢清作品は、何か違和感があった。自分の感覚から、遠いところに行ってしまったような……。
セリフの多さは気になる点ではあった。しかし、全体から見たら些細な点。いまの時代に絶対に作られるべき作品で
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滑走路(2020年製作の映画)

1.5

演出も脚本も、狙い過ぎている。狙いがあるのはいいのだが、カット割りやアングルからまで滲みだしてしまうのは、痛々しく感じる。
特に撮影が気になった。1ショット、観ていて気持ち悪くなるような処理を加えてい
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キーパー ある兵士の奇跡(2018年製作の映画)

4.5

憎しむことは簡単だ。しかし、許すことは難しい。だから人は簡単に憎むことを選ぶ。
本作で語られていた、いまの時代にとって最も大切な事柄である。
少し省略し過ぎな部分があり混乱する部分があった。分かるには
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泣く子はいねぇが(2020年製作の映画)

1.5

とにかく脚本が悪い。発想はアリだとは思うのだが、脚本として組み立てる際に物語の展開を一考すべきであったであろう。
映画で1番大切なものは何か?それを考えた作品。