tさんの映画レビュー・感想・評価 - 56ページ目

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赤い靴(1948年製作の映画)

3.8

アンデルセン「赤い靴」をベースとしたバレエを取り巻く、芸術と恋愛の相克。
テクニカラーの過剰なまでの色彩と豪勢な舞台美術の中で、本物のプリマドンナが演じるバレエシーンは、サイレント期から続く映画特有の
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桜桃の味(1997年製作の映画)

4.5

静かで慎ましい生への賛歌。車内における人物横からの切り返し、渇いた大地と車を捉えるロングショット、とてもシンプルに撮っているのにどの構図も完成されてる感がある。
「衝撃のラスト」とはこういう事を言うの
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クローズ・アップ(1990年製作の映画)

4.3

映画を愛するあまり尊敬する監督(=モフセン・マフマルバフ)になりきってしまう男の物語を、当事者たち自身が再生する。
単なるフェイク・ドキュメンタリーを超えた「演じる」ということの魔法を目撃した気分。蹴
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牯嶺街少年殺人事件(1991年製作の映画)

4.8

問答無用の超絶大傑作。
明かりが点く/消えると共に、登場人物たちの微妙な心情も明滅していく。4時間の世界の中であらゆる感情が喚起させられるが、最終的に到達するのは得体の知れぬ感動。
クライテリオン版で
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一晩中(1982年製作の映画)

3.9

愛を求め愛に飽きた男女が夜更けに街を徘徊する。そして彼らにも当然のごとく朝がやって来る。
男女が衝動的に抱き合って踊り始めるだけで、それは映画になる

ザ・フライ(1986年製作の映画)

3.9

エスプレッソ、チーズバーガー、ステーキ、麻婆茄子とワイン、チョコレート、ドーナツ。
妙なせな毛には御用心

宇宙戦争(2005年製作の映画)

4.2

謎の地球外生命体の襲来によるパニックの中、トム・クルーズが父性を取り戻していく。
恐怖や混乱の演出も一流だが、目撃する、見られる、見せないといった視線の演出も一流。怪物が鏡を覗き込んで自身の奇怪な眼を
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ロケーション(1984年製作の映画)

5.0

オールタイムベスト入り。
ピンク映画版「アメリカの夜」。低予算早撮りの制約に想定外の苦難が重なり、強行ロケから強行ロケへ渡る旅へ出る一行。更には、ひょんな事から主演女優となった少女自身の人生が、映画に
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(1971年製作の映画)

3.8

友人の姉に淡い恋心を抱く少年が、皮肉にも恋文の「配達人」に任命され、大人の恋愛世界を垣間見る。
近景/遠景の切り替え、次のシーンへ繋ぐ際の音の処理法がとても良い。牧歌的な画面に終始不安が影を落とす。
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リリオム(1934年製作の映画)

4.4

寄り添う2人の後ろで遠鳴りする遊園地の喧騒はいつまでも終わらない。
リリオムの空中浮遊シーンの美しさと、彼の特別な一日の過ごし方に泣く。
酒場での横移動シーンは清水宏みたい。
生死と時空を超えた恋愛映
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(1989年製作の映画)

4.1

今の彼の作風を考えるとポップで驚く。青春の香りにはカラックス「ボーイ・ミーツ・ガール」を、幻想的な夜の情景にはロートン「狩人の夜」を思い出し、様々な作品との関連を指摘できそうだが、何にも回収され得ない>>続きを読む

美しき諍い女(いさかいめ)(1991年製作の映画)

4.0

老画家とモデル、2人の全存在を賭けた創造への闘い。形態を超えた描線の本質へ迫ろうとするミシェル・ピコリとエマニュエル・ベアールの対峙から浮かび上がる、奇妙な関係性に宙吊りにされ続ける4時間。
ベルナー
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ミスター・ミセス・ミス・ロンリー(1980年製作の映画)

3.7

安易な感情移入を拒み、孤独を振りまく原田美枝子。得体の知れない女が家に住み着き始めるのは「時代屋の女房」のようで、時代性かなと思いながら観ていた。神代というより彼女とATGの映画という感じで、結局話は>>続きを読む

ニュー・ジャック・アンド・ヴェティ(1969年製作の映画)

3.8

上辺を繕った大人たちが酒席で本能を露わにし出し、狂乱の大団円へと到る。
田中絹代のような貞淑な母親が身を崩していく様は笑えると同時に何とも恐ろしい。
妄想シーンのみカラーになる。結婚行進曲から童謡まで
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緑色の髪の少年(1948年製作の映画)

3.8

何故家出少年はスキンヘッドにならねばならなかったのか?を回想と共に明らかにして行く。
反戦の主張を強く感じるもののそこまで明示される訳でもない。
女教師の問いかけ、森の中での不思議な出会い、眼鏡を落と
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ガルシアの首(1974年製作の映画)

4.1

死んだ友人の生首を売って金儲けしよう、という変な話ながら、やりたい放題やっている分非常に面白い。これぞペキンパーの思う「男」像に肉薄している気がする。ただ墓探しに行かず呑気なラブロマンス・ロードムービ>>続きを読む

彼女たちの舞台(1988年製作の映画)

4.3

何だかすごく好き。
舞台と日常の間に立ちこめる活劇の仄かな予感。
ビュル・オジエが退場することで彼女達のリハーサルはこれからも永続していく。
イネス・デ・メディロス最高である。

修道女(1966年製作の映画)

-

アンナ・カリーナの波瀾万丈修道院日記。「修道女だけにはなりたくない!」退屈を嫌い、解放に向かって自我をむき出しにする彼女と、勝手に身を堕としていく取り巻き。要所で挿入される無調音楽。公開禁止も納得であ>>続きを読む

カメラのための振付けの研究(1945年製作の映画)

3.4

自然と舞踊そしてガニ股。
宮殿のような空間で、顔面のクロースアップと後ろに配置される多面の銅像が並ぶ瞬間が何と無く好き。

おなかすいた、寒い(1984年製作の映画)

4.4

本能に赴くまま行動する女子2人。語彙と所作と展開とを極限まで削ぎ落とし、三大欲求に向かって爆速で突き進む様はめちゃくちゃ面白い。そのリズムはもはや音楽的とも言える。
構図も相変わらず良くて、カフェに座
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街をぶっ飛ばせ(1968年製作の映画)

4.1

とんでもなくアナーキーなものを目撃してしまった気分。
「気狂いピエロ」に触発されアケルマンが18歳で撮った処女作。鼻歌と生活音がアケルマンの行動と一致していなかったりするのは確かにゴダールっぽい?皮膚
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部屋(1972年製作の映画)

3.6

カメラ目線でベッドに横たわっているのはシャンタル・アケルマン自身だが、撮影者と被写体の関係性を想像させるプライベートビデオのような短編。
カメラがパンしていき彼女に到達するまでの間、やたらドキドキする
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汚名(1946年製作の映画)

4.0

イングリッド・バーグマン版マタ・ハリ。しかし国家機密でさえメロドラマの前では添え物でしかない。
パーティ、競馬場、貯蔵庫で、敵陣の視線を受け止めながらの逢引は何ともスリリング。それもあってか諸キスシー
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ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

4.2

主婦の日常を固定カメラで200分延々と窃視する。ドキュメンタリーかのような何気なさの中に実はドラマが内包されており、個々の動作は厳密に振り付けられたものだと知る。アンディ・ウォーホルのミニマルな映像作>>続きを読む

赤線玉の井 ぬけられます(1974年製作の映画)

4.5

以前映画館で観た印象が忘れられずBlu-rayにて再鑑賞。改めて素晴らしかった。5人の娼婦達のあけすけな生き様は喜劇、ペーソスを超えて女性賛歌、人間賛歌にまで至っている。
色っぽい赤線建築を見事に再現
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シン・ゴジラ(2016年製作の映画)

2.7

庵野リテラシーもゴジラに対する造詣も無いせいだろうか、詩情を排した速すぎる編集、説明過多な字幕や恥ずかしい台詞回し、更には愛国プロパガンダ風味で全く好きになれなかった。
生身の人間がマンガを演じている
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我が家の楽園(1938年製作の映画)

4.0

「好きなことで、生きていく」フリーダム一族と仕事命な社長一族の出逢い。ジェームズ・スチュアートというよりエドワード・アーノルドの物語だな。登場人物が全員キャラ立ちしているのが楽しい。
キャプラの映画は
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キートンの恋愛三代記/滑稽恋愛三代記(1923年製作の映画)

3.8

石器時代、ローマ帝国期、現代における恋愛と格差。
キートンのアクロバット芸は控えめながらも、ビルから転落したり自ら飛び石となったり要所で活きる。棒を利用したアクションはマッドマックスにも受け継がれてい
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春のソナタ(1989年製作の映画)

3.7

音大生と哲学教師のガールミーツガール小話。誰しも勝手に他人との居心地良い関係を求め続けてすれ違っていく。そんな不和は些細な発見がきっかけで氷解するものである。
父親の恋人、あからさまに性格悪くてイラつ
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ジャズ大名(1986年製作の映画)

3.8

「音楽は国境も時代も超える」というフレーズの正しい映像化。ラストセッションはもはやファンタジーであり、それまで丹念に積み上げてきた時代背景をぶち壊していく痛快さがある。
襖の連続や窓から覗く原色の背景
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浜辺の女(1946年製作の映画)

3.7

冒頭からマヤ・デレンばりの超現実的イメージが表すように(そういえば「狩人の夜」でも美しい水中シーンがあった)、これは男の過去を起点とした妄執の物語であると推察する。
婚約者と浜辺の女、二人の女性はその
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わらの犬(1971年製作の映画)

4.5

面白過ぎて引いた。
ダスティン・ホフマン漢の意地。あんなにヤケクソなウィンクは見たことがない。
編集とはこういうことだ、と言いたくなる素晴らしさ。異様に矢継ぎ早なカット割で錯乱を盛り上げるリズム感に心
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