てつじさんの映画レビュー・感想・評価 - 32ページ目

座頭市あばれ凧(1964年製作の映画)

3.5

闇夜に映しだされた市の影、光を封じ闇に引き摺り込む蝋燭斬り。狭い路地、立ち回りの光と影のコントラストが、市の狂気を効果的に反映していて、鬼神と化した暗殺者のラストシーンへと見事に結実する。

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.0

韓国の格差社会を痛烈に皮肉った内容になっていて、観る側の捉え方の違いでコメディにもホラーにも見えてしまう不思議な作品になっている。比喩が直接的で、少々短絡的にも感じ同時に物足りなさも感じてしまった。良>>続きを読む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト(1968年製作の映画)

4.8

荒涼とした西部の駅舎。乾いた風車、ハエの羽音、滴る水音、3人のガンマン。グランドキャニオンの陰影とカルディナーレの馬車。新時代の象徴である鉄道と滅び去るアウトローの時代を対比させながら描く壮大な叙事詩>>続きを読む

サバイバー(2015年製作の映画)

2.5

沈着冷静で緻密、豊富な経験に基づく正確な判断力を持つ非情の仕事人"時計屋"ピアース・ブロスナンの孤高。疑問だらけの作品なのだが、"時計屋"の振り切れたキャラクターを嬉々として演じたブロスナンの怪演に救>>続きを読む

アルジャーノンに花束を/まごころを君に(1968年製作の映画)

3.4

主人公チャーリーの複雑な人間像を、振り幅の広い確かな演技力で別人のように演じきったクリフ・ロバートソンのポテンシャルの高さ。原作小説名を映画タイトルにしても意味が伝わらないな、そのタイトルで作品を作っ>>続きを読む

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(2019年製作の映画)

3.9

これぞ大団円だ。エピソード7〜8部で張り巡らせた伏線を見事に回収して、全シリーズ9部作の大河ドラマに相応しい決着を示した、まさに"スカイウォーカーの夜明け"なのだ。

スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2017年製作の映画)

3.4

ダース・ベイダーはマスクをつけて威圧する、カイロ・レンはマスクを外して揺れ動く。アダム・ドライバーにマスクはいらない、高熱を放つ真っ赤なライトセイバーを捌く男っぷりの良さ!

青春の蹉跌(1974年製作の映画)

5.0

若いスタッフとキャスト、個々の才能と野心が満ち溢れギラギラと輝く。萩原健一と桃井かおりの強烈な個性、束ねる神代辰巳の粘り強い演出と姫田真佐久のカメラ。未成熟な幼児性の悲劇として結実した長谷川和彦の脚本>>続きを読む

劇場版ポケットモンスター キミにきめた!(2017年製作の映画)

2.5

今回劇場版で登場する、レアなポケモンは伝説のホウオウ。レア度が高いか低いかは小さな子供たちが敏感に察知して評価している。キャラクターの魅力は二の次、ポケモンの評価はレア度の数値で測り、決まるのだ。

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)

4.7

果てしなく広がる真っ直ぐな庭園は彫刻と石で造型された無機質な世界、無限の時間を具象化した景色。唯一生命を感じさせた人間達も世界の果てのホテルの不条理な既視感を持った幻影として存在する。レネ監督が時間を>>続きを読む

昭和残侠伝 唐獅子牡丹(1966年製作の映画)

3.3

渡世のしがらみと義理人情の板挟み。慚愧の念に苛まれ、耐えに耐えた堪忍袋の緒が切れた。番傘に降り積もる白い雪、白刃を携えた男のけじめ、決意の道行。花田秀次郎、仁俠道に生きた男の花道。

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)

4.0

超能力の封印と覚醒、力の解放。脳内を巡る神経戦の静寂な緊張感。想像を遥かに超えた続編の展開は『シャイニング』のスピンオフの様相を呈したサイキックバトルの秀作になっていた。レベッカ・ファーガソンの冷笑の>>続きを読む

ゾンビランド(2009年製作の映画)

3.3

窮屈な心をリセットするには丁度良く、肩肘張らずに笑い飛ばせばいい。目くじら立てて批判などせずに作品に心を委ねて同期して爽快感を味わいましょう。この作品はビル・マーレイの温度ですからね。

さよならくちびる(2019年製作の映画)

3.3

三者三様の演技の質を見極めたキャスティングや、作品を手堅くまとめた演出は、期待を裏切らなかったが、同時にまとまり過ぎていて物足りなさも感じた。同じ曲を何度も聴かせる演出は芸がないと思う。

荒野にて(2017年製作の映画)

3.7

過酷な社会の渦にいきなり投げ込まれた少年の人生。眼前に途方もなく広がる荒野の前には進むべき方向すら見失う無情感が漂う。愛馬に父の姿を重ねながら、漂うように歩き続ける荒野の果てしなさが、少年の孤独の人生>>続きを読む

続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(1966年製作の映画)

4.0

サッドヒル墓地三つ巴の決斗。左右の敵交差する顔と手のクローズアップ、ギラつく視線滴る汗、畳み掛ける短いショットの連続とモリコーネの旋律。緊張感の鼓動をケレン味たっぷり色濃く描いたレオーネの傑作。メタリ>>続きを読む

怪物はささやく(2016年製作の映画)

3.6

手を離す…。少年が語る事の出来ない真実。悲しさと寂しさの心の奥にしまい込んだもうひとつの感情。決断と行動を迫られる誰にでも訪れる人生の分岐点は、少年には残酷であった、まだ幼すぎた。だから、人生を語る怪>>続きを読む

重犯罪特捜班/ザ・セブン・アップス(1973年製作の映画)

3.8

70年代カーチェイスの最高峰はこの作品であると強く薦められていながら、今更の初見。なるほど!押し上げるスピード感と、カーアクションの臨場感は噂に違わず傑出していた。ロイ・シャイダー演じる、刑事バディは>>続きを読む

電送人間(1960年製作の映画)

2.5

映画前半の電送人間の人間味をまったく感じさせない無機質な描写が秀逸。怪奇色の雰囲気も良く出ていて期待値が大いに膨らんだが、後半で一気に失速していき無理矢理作品を終わりにしたかのようなラストシーンは勿体>>続きを読む

ターミネーター ニュー・フェイト(2019年製作の映画)

2.6

マッケンジー・ディヴィスの鍛え上げられた肉体美と、「マッドマックス2」を彷彿とさせたカーアクションに惹きつけられたが、物語にサラとT-800登場の必要性を感じられなかったのが残念。世界観の軌道修正には>>続きを読む

ひとよ(2019年製作の映画)

4.0

家族の再生に繋がる道筋と光明がきちんと描かれていて、深く暖かな印象を残す秀作になっていた。疑似家族のようなタクシー会社の従業員たちの優しい眼差しが、途切れた家族の絆をゆっくりと紡いでいくのだろう。

侠客列伝(1968年製作の映画)

3.5

吉良上野介のような河津清三郎と、浅野内匠頭のような菅原謙次。東映オールスター総出演の中でも、この二人の掛け合いが面白い、忠臣蔵なのかと思った。桜木健一が本名で出ていた。

日本女侠伝 侠客芸者(1969年製作の映画)

3.8

凛として涼やか、秘めた情熱の熱さ、芯の強さと儚さを併せ持つ可憐さ、全ての所作が粋でした。藤純子はこの作品で芸妓で仁義と啖呵を切る。高倉健との共に迎えた全盛期、二人のツーショットの凄まじい熱量。

大列車強盗団(1967年製作の映画)

3.8

冒頭のカーチェイスにこの作品の骨格が緻密に描かれていた。この犯罪チームの組織力の強さや、鍛え上げられた結束力、スキルの高さ、全ての脈絡に意味を持たせた見事なカーチェイスだった。『ブリット』の監督依頼は>>続きを読む

楽園(2019年製作の映画)

3.8

Y字路の運命、左右に分かれた道の先には、どちらにも楽園には無縁の深い闇が潜んでいる。村の閉塞感が、差別と強制排除の排他的な空気感を生み、他人の人生を狂わせ、奪って行く。人間の根本に潜む暴力性を鮮やかに>>続きを読む

Wet(1994年製作の映画)

2.8

ボブ・ラフェルソンの短編。「悪魔のレッスン」に収録されている3話目。ほんわかとしたショートコメディをそつなくこなすラフェルソン作品に出会えた喜び。これはレアですね。

悪魔のレッスン(1994年製作の映画)

3.7

草原に立つ少女の姿は、神々しさを纏いながら、美しく光輝いていた。レナタ・ダンツェヴィチの健康美の眩しさと、草原の花々が風で柔らかく揺れる陽光の暖かさ。「悪魔のレッスン」短編集3話中2話目、収録最上の出>>続きを読む

カーシュ夫人の欲望(1994年製作の映画)

2.0

ケン・ラッセルの短編。官能を達観した下品さなので、ラッセルらしいとは思いますが、かつての神通力は感じられませんでした。「悪魔のレッスン」に収録されているオムニバスの一編。

アストラル・アブノーマル鈴木さん(2018年製作の映画)

2.0

YouTuberに隔世の感ありを実感している世代には、この作品は、竹中直人監督「無能の人」が近いかな?の印象です。松本穂香の無茶苦茶なダンスのシャットアウト感が良いですね。

黒蜥蜴(1962年製作の映画)

3.8

名探偵明智小五郎vs.女盗賊黒蜥蜴の宿命の対決。完全犯罪をめぐる知能戦に心ときめき、江戸川乱歩のシュールな世界観をモダンなミュージカル仕立てで構成した野心に心踊った。京マチ子の七変化は必見!

私が棄てた女(1969年製作の映画)

3.7

集団就職者の純真無垢な一途な純愛を見事に体現した小林トシエの魅力に尽きるだろう。私が棄てた私、浦山監督の社会格差を鋭く描く的確な手腕は流石。ただ、カラーパートはこの作品に必要だったのだろうか?

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)

4.0

海の沖合いの遠雷の音を聴き分け、蜜蜂のように軽やかに指先で表現する繊細な闘い。神に愛され、世界に祝福される天才達の人間模様。国際ピアノコンクール、孤高の天才達の闘いの場所。迷える天才松岡茉優に外れナシ>>続きを読む

ジョーカー(2019年製作の映画)

4.1

ジョーカーになる必然。狂気の闇に取り憑かれた一人の男の転落を描く。ホアキン・フェニックスは神格化されたヴィランであるジョーカーを、ひたすら人間臭く演じている。アメコミの世界観など微塵もない、それが素晴>>続きを読む

巴里祭(1932年製作の映画)

5.0

1932年の作品が、瑞々しく最高の状態で蘇りました。花束を抱えたアンナ(アナベラ)、雨宿りの喧嘩とキス、酔いどれ紳士と拳銃、巴里祭前夜のダンス。流れるような名シーンの連続です。名曲 "巴里祭〜巴里恋し>>続きを読む

リラの門(1957年製作の映画)

4.1

お人好しジュジュの底抜けの優しさ、リラの街角の住人達の人情の厚さに触れさせながら、凶悪犯罪者バルビエをその街に投げ込み人々の行動と反応を見極める。ルネ・クレールの俯瞰の視線が冴え渡った文句なしの名作。

亜人(2017年製作の映画)

2.1

不死身の掘り下げ方が足らなかった。亜人を描くのであれば、もっと綾野剛側に重心を置いた方が良かったのでは…。