ホリグチさんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

ホリグチ

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大樹は風を招く(2016年製作の映画)

3.5

3人の監督で一つの作品をつくる試みは刺激的。監督の個性と調和を育てる企画となっている。

苦い銭(2016年製作の映画)

3.5

いままで時代を先取りしてきたワン・ビン監督だが、どうやら時代は彼に追いついてきたようだ。

エグジール(2016年製作の映画)

4.0

室内劇とは思えないリアルな音響空間は、この映画の肝となっている。フランス移民として、生まれ故郷を想像するしかなかった監督のイマジネーション。
移民が多く集まる欧州で、こういった作品はまだ多くない。だが
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恋物語(2015年製作の映画)

4.0

監督が罪に問われたため、自然に評価するのが難しくなってしまった。どのような芸術作品であれ、完成後は、作者の手を離れ、受け手に委ねて評価されるべきで、この映画自体が素晴らしいことに変わりはない。

ティクン〜世界の修復(2015年製作の映画)

3.5

深淵なユダヤ教の精神世界というべきなのだろうが、ひとくくりにするのは危うく、難解で咀嚼することが難しい。わからないゆえに、いつまでも魔術にかかるように、記憶として残り続ける。

山<モンテ>(2016年製作の映画)

5.0

アミール・ナデリ監督は詩人である。雲を突き破って聳え立つ山を崩そうと
、無謀に槌を振るう男を見ていて、涙が止まらなかった。目の前に大きな山があると感じた時、私はこの映画を思い出すだろう。

台北ストーリー(1985年製作の映画)

4.0

世の中の風潮が変われば、人々も生活を合わせる。若い世代ほど積極的にそのシャワーを浴びるのは、いつの世も同じだ。エドワード・ヤン監督は、親と子の価値観のずれを、家を通してくっきりと相対化している。これは>>続きを読む

普通の家族(2016年製作の映画)

4.0

国際映画祭で評価されるフィリピン映画の傾向として”リアリズム”というキーワードをあげたい。この映画のように社会問題を飾ることなく描けるところがパワフルな描写に繋がっている。ストリートチルドレン、幼子の>>続きを読む

ザーヤンデルードの夜(2016年製作の映画)

3.5

イラン政府に検閲された映画の断片であっても、反骨の闘士マフバルバフ監督の意図を損なうところがない。

仁光の受難(2016年製作の映画)

3.5

踊念仏というか日本的なミュージカルもありだと思った。できることなら俳優を大勢使っている映画を見てみたい。

わたしたち(2016年製作の映画)

4.0

この映画の素晴らしさは子どもたちの”伸びやかさ”である。というのも、物語はいじめや家族の問題と向き合わなくてはならない子どもたちの心の動きを追ったものであるが、デリケートな問題にありがちな”暗さ”を感>>続きを読む

山のかなたに(2016年製作の映画)

4.0

イスラエルで暮らす家族が、どういう緊張感に身を置いているかよくわかる。建国から70年も経つと、その地で生を受けたものも出てくる。偏見を持たず、隣人であるパレスチナ人と接したいと願う、そんなイスラエル人>>続きを読む

オリーブの山(2015年製作の映画)

3.5

イスラエルのユダヤ教コミュニティは階層によって分かれているのだそう。聖書の時代から名前のあるエルサレムの”オリーブ山”。その、歴史ある墓地を舞台に選び、人の欲望と宗教的束縛、イスラエルとパレスチナ、そ>>続きを読む

よみがえりの樹(2016年製作の映画)

4.0

一見すると古くから伝わる中国の寓話を現代劇にしたようだが、背景にはピラミッド型の山々と寒村にそぐわない機械音のノイズ。その対比に現代中国への鋭い批判がある。

マンダレーへの道(2016年製作の映画)

3.5

ミャンマーから興味深い監督が現れた。しっかりとした問題意識を消化した作家性は今後を期待させる。暗闇や光、雨や炎など、自然を使った描写に反逆的な力強さを感じる。人は経済の豊かさを求めて移動する。ミャンマ>>続きを読む

神水の中のナイフ(2016年製作の映画)

3.5

中国のムスリムの生活を描く。どこの国であろうと、イスラム教徒の清潔さを大事にする心がけは変わらない。この老人は、心に葛藤を抱えながら、毎日同じように身体を清め祈りを捧げる。彼らのように、決まった習慣を>>続きを読む

バーニング・バード(2016年製作の映画)

4.5

祖国スリランカの痛みを一身に受ける女性の姿は「西鶴一代女」を彷彿とさせる。切っ先鋭い怒りを女性に委ね、前作「フライング・フィッシュ」と比べ、表現が明確で力強くなった。

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)

3.5

美談で終わらせてはいけない。人工知能に委ねる、未来の司法の姿はこうなるだろう。もしコンピュータシミュレーションが正しいと判断した時、それは間違いであると根拠をもって証明することができるだろうか。人間に>>続きを読む

エヴォリューション(2015年製作の映画)

3.5

5千年後の未来を覗いているようだ。種の存続のためか、無機質に感情を殺し、身体に触れ感じられるはずの海から遠く離れてゆく。生き残るための海辺の漁村での実験。もはやその営みこそがもっとも人間的本能に近い。

ネクター(2014年製作の映画)

3.5

フランス人は昆虫そのものに興味を持たないが、社会性昆虫には関心があると、荒俣さんも書いていた。題材にもなりやすい蜜蜂。典型的な人間社会の投影。

メーヌ・オセアン(1985年製作の映画)

4.5

ジャック・ロジェ監督の、俳優を操るための糸が目に見えるようだ。それでいて画面の内で愉快に遊びまわる男女は自由奔放でもある。女性弁護士は監督自身を体現する。

アデュー・フィリピーヌ(1962年製作の映画)

4.0

出会いも恋も嫉妬も、監督の意のままに起こされているかのようにみえる。映画とはそういうものであるけれど、この監督の映画はなにか違う。「人間蒸発」を思わせる。

ハート・オブ・ドッグ〜犬が教えてくれた人生の練習〜(2015年製作の映画)

3.5

冒頭の3.11の衝撃。アメリカは大きな傷を負い、以後世界が変わってしまった。監視を強める、それはデータを集める経済の始まりでもある。

鳥類学者(2016年製作の映画)

4.5

キリスト教の聖人伝説を扱いながら土着的。表現の豊かさが目を見張る。ジョアン・ペドロ・ロドリゲス監督はひとつ階段を上った。泉鏡花や澁澤龍彦もかくやの幻想奇譚。

護送車の中で/クラッシュ(2016年製作の映画)

3.5

社会的文化的に多様な背景を持つ人々が集まるとき、お互いに協調し合うためには、各々の日常に寄り添った言葉を使うしかない。議論は詰まるところ押し売りになってしまう。

痛ましき謎への子守唄(2016年製作の映画)

4.0

ラヴ・ディアス監督の描こうとしている作風は興味深い。フィリピン革命期をイリアスまたは平家物語のように物語る。テオ・アンゲロプロスとも共通する視点。

笑う故郷(2016年製作の映画)

4.0

自身の作品を朗読している場面を観る限り、この主人公も幻想文学を描くようだ。この映画は風刺の効いたコメディではあるが、きっとボルヘスも祝福してくれるだろう。

Emma' マザー(2016年製作の映画)

3.5

インドネシアの一夫多妻制がまだ残る地域で、母は家族を団結させようと知恵を巡らせる。世間的に立派な夫の存在が、釈迦の手のひらで踊らされているようだ。

バードショット(2016年製作の映画)

4.0

フィリピン映画で警察官が出てくれば、悪人と相場は決まっている。新聞記事で知るフィリピンの警察と、映画に登場する典型的な悪役としてのフィリピン警察官の姿を照らし合わせてみると、信じたくはないけれど、映画>>続きを読む

タクシードライバー日誌(2013年製作の映画)

4.0

彼女のヒーローになりたいと願いながら、冷たい現実に跳ね返されて逆走していく。

オペレーション・メコン(2016年製作の映画)

3.5

うねりたゆたうメコン川も、銃弾飛び交うコロッセオに変貌する。

ダイ・ビューティフル(2016年製作の映画)

4.0

この映画を制作したのはLGBTに対する差別意識が発端であるという。こういった問題意識を、笑いと涙が交錯するエンターテインメント性に高めて作品にする。これは映画の役割として、最高の仕事だと思う。
きっと
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キアロスタミとの76分15秒(2016年製作の映画)

3.5

キアロスタミ監督のイランでの日常を収めたドキュメンタリー。雨の日に、車に乗りながら、フロントガラスに落ちる雨のしずくに向けて、熱心にカメラのシャッターを切るキアロスタミ監督。そういう美意識をもった方だ>>続きを読む

Take Me Home(2016年製作の映画)

4.0

キアロスタミ監督の遺作。襟を正して見届けようとしてしまうけれど、もちろんご本人はそれを望んでいないだろう。初期の作品と呼応するような瑞々しい仕上がりになっていた。サッカーボールがぽん、ぽん、とイタリア>>続きを読む

ヘヴン・ウィル・ウェイト(2016年製作の映画)

4.5

子を持つ親であれば、恐ろしさは他人事ではないだろう。狂気に落ちてゆく少女と狂気に冒された少女の物語。二人の物語を同時に進行する構成が見事で、ぐるぐると渦へ吸い込まれていくような場面の展開に、感情を揺さ>>続きを読む

サファリ(2016年製作の映画)

3.5

このドキュメンタリーは観ている観客まで試されているように感じる。競技のように、強力な武器で罪悪感を覚えずに動物を殺すことには、誰もが苦い思いを感じるだろう。しかし、彼らの中に自分と似たなにかを発見した>>続きを読む