戦争とメロドラマは相性が合う。戦争によって翻弄され、愛し合っていた筈の男女が引き裂かれていく。『シェルブールの雨傘』や『ドクトル・ジバゴ』等、名作が多い。今作もその1本だ。
第二次世界大戦下の>>続きを読む
騎士道精神を謳っているが、描かれているのは野蛮で醜悪だ。冒頭から血生臭いシーンから始まっている時点でそれを物語っている。リドリー・スコットの『最後の決闘裁判』はこの部分をなぞったのではないだろうか。>>続きを読む
しらけ世代を描いた映画だと思った。学生運動が下火になり、政治に無関心になった若者たち。環境破壊にも見向きもしない。
主人公のシャルルもその1人だ。裕福な両親の下に生まれ育ったが、何事にも興味をも>>続きを読む
主人公が少女時代の母と出逢う。これだけ聞くと、タイムトラベルやファンタジーを連想するが、大掛かりな仕掛けは皆無だ。寧ろ、話の構造はシンプルだ。
8歳の少女ネリーは両親と共に森の中にある祖母の家を>>続きを読む
冒頭からすぐに引き込まれた。だが、気まずい場面が延々と続く。どうして観客を奈落の底へ突き落とすのかと訝しげた。かといって退屈なわけではない。5時間17分という長尺ながら、濃密な時間だった。
舞台>>続きを読む
原作は『アメリカの悲劇』という小説だ。これは、1906年に起こった実際の殺人事件を基に物質的な豊かさや成功を求めるアメリカン・ドリームを批判した社会派のベストセラーだ。但し、映画は社会派よりもメロド>>続きを読む
『トップガン』や『ミッション:インポッシブル』シリーズなどでトム・クルーズは輝く笑顔を見せていた。今作はそんな彼が初の悪役に挑んだ作品だ。
クルーズが扮するのはヴィンセントという一匹狼の殺し屋だ>>続きを読む
繊細な映画だ。心根が優しい映画だ。これほど優しさに包み込まれた作品は『バグダッド・カフェ』以来、観たことがない。
ハリウッド俳優のジョニー・マルコは高級ホテル"シャトー・マーモント"で暮らしてい>>続きを読む
邦題にもある「神経衰弱」とは疲労によって神経が過敏になる病気のことを意味する。本作の登場人物の多くは崖っぷちの状況だ。だが、監督のアルモドバルは重苦しい方向には舵を取らない。
舞台はマドリード。>>続きを読む
中年たちのアフターファイブを描いた映画かと思った。夜の場面や自宅やバーの室内での出来事が多い。
結婚してから14年が過ぎたリチャードとマリアの夫婦。リチャードはビジネスマンで何不自由ない生活を送>>続きを読む
ロードムービーというよりは、迷子映画に近い。目的地に向かっている筈が、いつの間にか自分たちが道に迷っている感覚。しかも、肉体だけでなく精神も同じ状態だ。
ヴィンターはドイツの紀行作家だが、スラン>>続きを読む
1通の手紙によって、それまで良好だった人間関係が変化する。人々の中に疑心暗鬼が募り、周囲から白い目で見られるようになる。これが、田舎町なら尚更その傾向は強くなる。
ジェルマンはフランスの田舎町に>>続きを読む
戦後映画であるが、主軸はラブストーリーだ。それも、女性同士の恋模様。
1945年、第二次世界大戦が終結したソ連のレニングラード。当時のソ連では100万を超える女性兵士が第二次世界大戦に従軍してい>>続きを読む
残酷な運命劇だと思った。また、壮大なオペラを観ているような感覚に陥った。チェコ映画界では、『七人の侍』や『アンドレイ・ルブリョフ』と並ぶ傑作だと評されているが、私はロベール・ブレッソンの『少女ムシェ>>続きを読む
PTA(ポール・トーマス・アンダーソン)版ボーイ・ミーツ・ガールというべきか。だが、今作はPTA監督作なので、一筋縄ではいかない。
時代は1970年代のロサンゼルス、サンフェルナンド・バレー。子>>続きを読む
30歳は人生の節目だという謳い文句がある。それまでに人生の道筋を決めておこうということなのだろう。一方で、ルイ・マルの『鬼火』の主人公のように人生を終わらせる者もいる。では、今作の主人公ユリヤの場合>>続きを読む
又吉直樹の『人間』という作品で「ハウス」という共同住宅が出てくる。そこでは、美術系の学生の何人かが住んでいる。
この設定を聞いて、私はトキワ荘を思い出した。トキワ荘は1952年から30年間存在し>>続きを読む
旅を通して、自己を見つめ直していくというのはロードムービーの定石だ。では、『ベイビー・ブローカー』の場合はどうだろうか。今作は、赤ん坊の売り買いを通して奇妙な人間関係を紡いでいる。
古びたクリー>>続きを読む
題材からして、スキャンダラスな内容やエゴのぶつかり合いを連想していた。監督がロマン・ポランスキーだから、そう思ってしまうのも無理はない。だが、出来上がった作品は手堅いスリラーに落ち着いていた。
>>続きを読む
今作の主人公ロジャー・ソーンヒルはジェームズ・ボンドに影響を与えているのではないか。そんな感想を抱いた。何しろ、ロジャーに扮したケーリー・グラントは初代ボンドの候補でもあった。
誤解を恐れずに言>>続きを読む
ドキュメンタリーとアニメの組み合わせは珍しい。だが、これが見事に相性が良い。社会派という近寄りがたさを解消し、衝撃を緩和してくれる作用がある。
アフガニスタンで生まれ育ったアミンは父親がタリバン>>続きを読む
静寂が画面を覆っている。だが、その背後には死の影が忍び寄っている。『息子の面影』にはそんな印象を抱いた。
マグダレーナはメキシコの貧しい村で暮らしている。彼女の息子は貧困から抜け出す為に友人と共>>続きを読む