平田一

キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Seriesの平田一のレビュー・感想・評価

4.1
“時雨沢恵一による不朽の名作が、再びTVアニメ化!”

時雨沢恵一さん原作の同名ライトノベルシリーズを、スタッフ・キャストを一新した新布陣で再アニメ化。不思議な乗り物モトラドに乗って旅する主人公が様々な国で過ごすひとときが描かれる。旧アニメに出演していた声優・悠木碧さんが新たに主人公キノ役に抜擢されて命を吹き込む。監督はこの夏に「BLEACH 千年血戦篇」の第2クールも控えている田口智久さん。

旅人キノは相棒のモトラド(正式名称はモトラート。ドイツ語で二輪車だとか)のエルメスと様々な国に赴き、三日間だけ滞在する。二人はそこで様々な人や文化に触れて行き―――。

旧アニメは「(Serial Experiments )rain」を手掛けた故・中村隆太郎さんの作風が良くも悪くも発揮されてた作品で、話によっては見ごたえあったり、退屈したりがまちまちでした。2003年当時の空気に触れれる意味では価値アリですが、作品としてはどうにもボクは残念だったです。

今回は基本的にメリハリが効いていて、各話における面白さもそれぞれ溢れてる作りになって、総合的に完成度がかなり高いと思います。特に「コロシアム」の完成度は新旧両方高いです。どちらが優れているではなくて、それぞれ異なるアプローチで掘り下げられた話でいて、そこでしか表現できない味が非常に出てました。新バージョン「コロシアム」は1話の中で完結してて(旧シリーズは前後編に分けて描いていました)、しかし見事な濃厚圧縮ぶりが炸裂する一方、アベンジャーとしてのキノの無念さが際立って、終わった後に残った余韻はかなりビターになっています。

一方で旧作には無かった話も素晴らしく、例えば6話の「雲の中で」のフォトとソウは微笑ましくて、けれど本編は滑稽さと哀れさに溢れてます。第4話の「船の国」でのシズ達は不憫だし、11話の「大人の国」は旧作以上に“大人”に怒り、最終話「羊たちの草原」は皮肉に満ちて……新シリーズだからこその新たなドラマも見応えあって、どれだけ原作豊かなお話なんだと驚くばかりです。

個人的にはもっともっと他の話が見てみたいし、なんで未だに新作アニメが決まらないのか謎ですね。これほどまで時を経ても不変性が保たれているアニメーションは嬉しいですし、ライトノベルは侮れない! 未だに原作続いているって言うのも非常に驚きです✨
平田一

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