平田一

メタリックルージュの平田一のレビュー・感想・評価

メタリックルージュ(2024年製作のアニメ)
3.6
ここ数年のオリジナルテレビアニメの在り方を、それも連続2クールオリジナルアニメーションの在り方を考えてしまう作品でしたね。

何を以て2クールオリジナルアニメーションは価値があると投資家に証明を出来るのか、シザーハンズの魔の手からどう回避できるのか? 恐らくすべてのクリエイターがこれから更に直面し、対峙の度に選択を迫られるんでしょうね。

少なくとも「星合の空」における一件からより深刻な状況になっている気がします。2クールで掘り下げるべきと感じた作品が1クール以内で語れと要請をされた結果、粗末な出来と判を押されることには納得出来ないし、現場で頑張るスタッフたちは何にしがみつけばいい?

重宝するのは人気の高い作品しか許されず?
そんなことを考えてしまうばっかりですね。

長々と言いましたが、「メタリックルージュ」には光るものしかなかった(このアニメは1クールオリジナルアニメですが)。世界観もそうだけど、差別や偏見の横行。その中で世界の傀儡に成り下がって思考を断つか、苦悩も孤立も承知の上で、名のある自分として居るか? 『ブレードランナー』の頃よりもリアルが如実に追いついて、虐殺がまかり通り、正義と吹聴されていく、この時代に作られたことには意義がありますし、真の敵が有害な家父長制というのも良い。正直国が敵というのは、もはやピンと来ませんし、大好きなマイケル・ベイも自作(『6アンダーグラウンド』)で描いていましたし。

ですが語尾を強くして、どうしても伝えたい。エピソードの一つひとつを丁寧に見せてほしい。1話1話が2,3話分の内容量だと思ったし、ムリに圧縮しすぎたせいでツギハギだらけに思った。これじゃあフランケンシュタインの怪物だってずっこける。黒幕の自己陶酔を反映させたのだとしたら、ニ度目の視聴で試したいが、ある意味理には叶ってる。けれど語りが自己陶酔に全部汚染されてたら、それは流石に元も子もないと言わざるを得ない。1クール(13話分)増やしてでも、最低で趣味の悪い自己陶酔の舞台劇をルジュたちが壊す姿を突き詰めて欲しかった。そうすれば、黒幕から、無価値の産物として見られ、見下され嘲笑された、インモータルナインたちに自分を重ねて苦しくなったり、応援したりも出来たはず。

物語に触れてるときは、気持ちが動いていたいから。

長々と書いたので、そろそろ締めといきますが、クオリティの高さに反し、語り口に納得できず、しかし好きな気持ちの方が僅かに勝った作品です。間違いなくお金を溜めてBlu-rayは買いますし、いつかこういう物語を、オリジナルを長大に語れる土壌を作るための道を作っていきたいです。

作品は“生き物”だとボクは思っていますので。
平田一

平田一