いめーじ

デカダンスのいめーじのネタバレレビュー・内容・結末

デカダンス(2020年製作のアニメ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

1話の時点では既視感だらけのチグハグな世界観が何とも言えん印象を与えてくるが、その感覚は早くも2話で覆される。普通なら引っ張っていきそうな世界設定の情報をまったく引っ張ることがなく、5話のラストでカブラギさんがハッキリと作品の答えを出してしまうなど、一切もったいぶることがない。先が読めないようでいて、実は早い段階で真っ直ぐな道を築いて迷いなく突き進んでいる作品なのだ。
全力で夢を追いかける少女と人生を諦めてる達観したオッサンというシンプルなコンビだが、人生観だけでなくゲーム内で生きる者とゲームプレイヤーという決定的な違いの対比も効いていて、一筋縄ではいかない見応えがある。
乙女ゲームアニメでよくある、主人公の何気ないセリフでイケメンが「ハッ!」となって歌が流れるようなノリでオッサンが救われている。
余計なセクシー描写なんかは一切無いから純粋な気持ちで物語と向き合えた気がする。

革命の始まりとなる5話では、負け確イベントをクリアして未完成のラスボスを引きずり出すという痛快な展開や、全プレイヤーが初見の敵に挑む恐怖とワクワク感のバランスはオンラインゲームらしさが強く感じられて凄いもんだった。

カブラギさんがバグ矯正施設に送られてからも秀逸。ガドルのクソ処理やオキソン注入などは汚い絵面だったけど、そこはサイボーグ達のキャラデザのおかげで不快感は無かったし、かつて共に戦った元ランカーであるボス囚人との決闘で、デカダンスへの裏口が開かれた流れは特殊なムショモノとしておもしろかった。素体奪還作戦はスパイアクションって感じのスリル。
ハッカーポジションのジルは役立ちすぎだし素体もかなり好き。ドナテロは最強でひたすらおもしろいキャラだし、ジルとのガタガタな関係が微笑ましかった。でも悪者ポジションになったターキーの扱いはいかにもすぎたし、サルコジが劇的に散ったけど彼が役に立つ方法は自爆させるしかなかったのかなぁ…ってモヤモヤした。極端な描き方が良さではあるけど、こういう場合は少し引っかかってしまうのよね。

7話でフェイがナツメにぶつけていたセリフは、ネガティブながら弱者の気持ちの本質を突いている鋭いもので良かったけど、仲直りがめっちゃ早かったな!親方やフェイは情けなくても気持ちを吐き出すことが必要だったのかもしれない。
最後のナツメの涙で吹っ切れるカブさんはオタクっぽくて最高。

ガドルを消してからのナツメは世界の真実を知ったショックでカブラギさんを一時的に突き放していたが、結果的にパイプを切り捨てる行動を取ってしまったカブラギさんを責めないどころか、パイプについて触れることもなく1話分過ぎたのは違和感ありすぎてどうかと思ったよ。後に2人が素早く仲直りしたのは別にいいんだけど、その時にガッツリな回想を2回もやっててダルかったな。工場にいた青髪オペレーターさんの退場もショックだった。

終盤は小っ恥ずかしいくらいの王道展開だったけど、なんだかんだ俺は王道に弱いので泣きそうになっちゃった。カブラギさんとミナトの関係がバカ熱い。オメガを倒してからは運営にジルやミナトが加わったようで、すっかり平和なMMOと化していて微笑ましい。ナツメの右手は戦うためのモノではあったので、最終話で作り直す意味は大きいと思うし、髪も伸ばして女の子らしくなった姿は嬉しいもんですね。
個人的にはカブラギさんが戻ってこないほうが好みだったなと思うけど、まぁ嬉しくないわけがないから良しとしましょう。
この作品で云うシステムのように、どうしようもない大きな流れの中にいることは受け入れるしかないけれど、もしそれが理不尽だった時には、容赦なくチートを使ってデカダンスキャノンでブン殴ってやろうぜ!的な話だったと受け取っておく。
文句は出るが結果的に気に入った要素は多かったので良作!

OPは曲も映像も良いし、作品のテーマを反映しまくっている歌詞と力強いボーカルがアニソンとして素晴らしい。EDも好き。