YasujiOshiba

ゴジラ S.P <シンギュラポイント>のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

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ネトフリ。既視感のある設定がよい。ぱっと思い浮かぶだけで『ゴーストバスターズ』とか『パシフィックリム』とか『ストレンジシングス』。そしてもちろんゴジラ・シリーズへのオマージュ、とくに音楽、これには抗えない。

ゴジラのアニメには2017〜18年の『GODZILLA』(第1章:怪獣惑星、第2章:決戦機動増殖都市、第3章:星を喰う者)とかもあったけど、ちょっとスケールが大きすぎて乗れなかったのを覚えている。SFに引き込まれるには、まず日常があってそこに裂け目ができないと、ぼくなんかはどうもついてゆけない。

その点、ジブリ出身の高橋敦史と、東北大学で物理をやった円城塔、そしてボンズのプロデューサーたちが打ち出した構想はよい。たしかにふたりの天才が出てくるのだけれど、天才がどういうものかよく知っている。どこか人間的にボケているのだけど、一度集中するとリテラシーとヌメラシーをこえるようなイマージュの世界に入ってゆく。そんな描写を、そこらにいる大人たちとうまくバランスをとりながら成立させるのだから、楽しくないはずがない。

この『ゴジラ』の「ゴジラ」や怪獣たちは、どこかレッドヘリングのようなところがある。ほんとうの主人公は「紅塵」だよね。世界を赤く染めてゆく塵芥が、あくまでも人間的な知覚なかでとらえられる範囲で、日常的な知覚世界を引き裂き、物理学的にとらえられる多元宇宙への扉になる。これってノーランが『テネット』(2021)でやろうとした時間の映像化の変奏曲とい考えることもできるんじゃないかな。

なんて思いながら12話まで一気に見た。続きが待ち遠しいぜ。

PS
それにしても物理ノートにホイットマンの一節が入っているなんて、楽しいよね。

PS2 6/19
「破局点」の回避の理屈が『TENET』みたいだったな。過去と未来が流れ込み生成する「今このとき」、そしてあの「パレーシャ」(包み隠さずすべてを言うこと)という概念が重なってくる。でも、物語は終わらない。ついにメカゴジラ登場ってか?
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