渡邉ホマレ

ゴジラ S.P <シンギュラポイント>の渡邉ホマレのレビュー・感想・評価

3.8
「『シン・ゴジラ』に似てる」と語られがちだが『シン・ゴジラ』よりも不シン切な超ハードハイ・クオリティSFアニメ。

似ている様で全然真逆のチャレンジだ。

『シン・ゴジラ』が物凄かったのは、難解な専門用語が飛び交う台詞の応酬の後に、「…というわけか!」と持ってくることで、「提示された含意のみ繋いでしまえば、一通りの意味や展開は理解できる」という点にあった。
これはもう、庵野監督が長年かけて培った話芸の様なもので、おいそれと真似できるものではない…。

本作はまさしく真逆。

全編を難解な専門用語で覆い尽くし、徹頭徹尾何言ってんだか何やってんだかさっぱり1ミリもわかんなくさせることで、最後の最後まで「謎」と疑問符を視聴者の頭の中に浮かばせる。それを最後まで興味を持続させるための推進剤にするという荒技だ。あ!あとタイトルもその要素の一つだし、それそのものが答えでもあるというなかなかのもの。

また、「オモチロいオモチロい」とは言うけれど、何がオモチロかったのかは説明できない。逆に「オモチロくなかった」と言うと自分が馬鹿になった様な嫌な気持ちに…と、そこまでは言わないが、何となくオモチロかったと言っておきたくなる…そんな名作の気配がする理由は、ポップで美しく可愛らしいキャラクター造形と、先のCGアニメ版の様に「」つけすぎない、しっかり動きまくるアニメーション。これが文句なしのハイ・クオリティだったからだろう。

例えばもしもこれが『シン・ゴジラ』として、実写CG作品として公開されていたら、これほど多くの賛辞を得られただろうか。どうかなあ…。まあ、比べる様なものではないのかもしれないが。