渡邉ホマレ

GAMERA -Rebirth-の渡邉ホマレのネタバレレビュー・内容・結末

GAMERA -Rebirth-(2023年製作のアニメ)
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このレビューはネタバレを含みます

コレはとんでもなくヤバい。
ナメててごめんなさい!
このガメラは最高だ。

『ゴジラ』の新作予告で盛り上がってるヒマがあったら、この『ガメラ』を観た方がいい。

『ゴジラ』に対抗すべく1965年に旧大映が制作した『大怪獣ガメラ』は、第一作こそゴジラ的恐怖の象徴として出現したが、二作目以降は基本的に「子供の味方」として描かれた。これがゴジラとの最大の違いだ。

1995年〜1999年に制作された平成三部作では「子供の味方」というよりも「地球の守護者」に変化したが、子供と意思を通わせる、子供を救うという大切な要素はしっかりと残していた。そして伊藤和典氏による徹底したSF的設定、「怪獣はなぜ日本に上陸するのか」という疑問への回答。「対怪獣シミュレーションとしてのガメラ」などなど、とにかく意欲的な決定版だ。

平成三部作後の2006年には『小さき勇者たち〜ガメラ〜』が制作されたが、こちらは旧大映時代への原点回帰…というか、「子供好きなガメラ」といったところだが、あまり上手くは行かなかった様に思う。

さて、そしてようやく本作の話だ。

本作の素晴らしいところは、「上記全シリーズへの愛」に溢れた絶妙なバランスにある。

物語のベースは、旧大映時代の「子供の味方」がベースとして敷かれており、登場怪獣も旧大映時代に活躍したやつらがワイワイ登場。
しかも、そのデザインは実に意欲的。
特にある怪獣のデザインは秀逸で、元は「イカ」なのだが、コレにクトゥルフ的アレンジを加えてより凶悪で機能的にデザインしており、特にあの触手がもう…『ミスト』のアイツじゃん!と思わず歓喜してしまった(ガレージのアイツの全身を見せてくれたような気がして、ネ)。

さらにガメラ自身のデザインは、平成三部作がベース。あの超カッコいいガメラが再び動く、しかもあの技もあの技も…めちゃくちゃカッコいい!
ガメラ登場時のテーマ曲も否応なくアガる。

さらにさらに、『小さき勇者たち』にまでしっかりとリスペクトを捧げている事にも恐れ入った。

旧大映時代をベースにしているとはいえ、もちろん現代の物語。主人公は4人の少年たちだ。
ここで注目してほしいのが、外国人の少年。
コレは旧大映時代のお約束でもあり、この辺りのリスペクトも心憎い。
…しかし何しろ普通の小6の少年たちである。
ぶっちゃけ、『小さき〜』的子供向けの作品になるんじゃないの?…と、鑑賞以前はかなりナメていたのは事実だ。
しかしまさか、ここまでこの子供たちにやられるとは…!
本作は「小学生時代の最後の夏休み」を描いたジュヴナイル作品である事にも一切の妥協がない。
あらゆる場面で提示されるのは、「子供対大人」の構図。
本作には数多くの「大人」が登場するが、彼らは「大人の思考・ルール」で行動する。
しかしそれを翻弄し打ち破るのは、普段大人が軽視する、子供たちならではの思考と感情、そして勇気だ。

…いやあ、本作の大人は本当にダメだ。
ダメでダメでしようがない。
何か訳知り顔でいて何も知らず、私利私欲に走り、偉そうに振る舞うけれど役には立たず…本当に「使えない」。
だが彼ら「大人」は最後の最後に本領を発揮する。まさに面目躍如である。それをウェットにしすぎない様絶妙に描いているところにも好感が持てた。
そう、このバランスが大切なのだ。

…いやあ、ガメラはいい。
ガメラは言葉を発しない。決して発しないけれども…何か、何か固い意思のみを感じる事ができる様な気がする。
だが実際にそれを受け止められるのは、ガメラを信じ、通じ合うことのできる子供たちだけなのだ。その事に少し寂しさを感じつつも、アニメーションを通じてガメラの気持ちを察することはできる。
これもバランスゆえ。
兎に角加減、バランス。
本作はバランスの塊だ。

エンディングで流れたあの曲でグッと来て、エンディング後のあのシーンで爆笑し、さらにその後に涙する…。
夏の終わりの週末に、ピッタリの傑作だと思う。