夏藤涼太

ゴジラ S.P <シンギュラポイント>の夏藤涼太のネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

#1話

ボンズ×オレンジ×円城塔×ゴジラと、事前情報的にはかなり期待大で、やはり力入れてるからか1話は導入って感じだったね。SFオカルトミステリー?路線的には大好物なので期待。
新しい感じとキモいラドンに驚かされつつ、音楽や鳴き声でハズさないのがいい。ジェットジャガーは笑ったが。

あとやっぱりオレンジの3DCGは他のTVアニメの3Dとは格別のクオリティ。

しかし改めて思うのが、平成ガメラの先駆性だな。どういう話になるかはわからんけど、SFオカルトミステリと怪獣の組み合わせはまんま平成ガメラだし、シンゴジラの「現代日本社会に怪獣が現れたらどうなるのか?」という シミュレーション路線も平成ガメラで一通りはやったし、防衛出動ネタとかね。そしてギャレゴジの「生物としての怪獣」「人間ではなく地球の守護神」というコンセプトもまんま平成ガメラ。時代を先取りしすぎたな…
というか現代で怪獣やるなら、ある程度リアル路線にせざるを得ないんだろうな。

でも、1話アバンを見た感じ、最後は幼年期の終わりというか、2001年宇宙の旅というか、オーバーロード的なハードSFな話になるのだろうか。

#2話
ぶっちゃけストーリーは今のところ平成ガメラ123を足して3で割って深夜アニメのノリを加えたって感じで目新しさはないが、作画すげぇ!
やっぱりオレンジは凄えよ…建物挟んで怪獣を写すとことか、ボンネットにラドンが落ちてくるとことか、完全に3DCGアニメで特撮演出を再現してた。

3DCGアニメで特撮を再現するのはシンエヴァでもあったけど、ハッキリ言ってオレンジの圧勝ですわ…いや庵野だって手描きアニメでの特撮再現はめちゃくちゃ上手かったんだけどね…
やっぱりオレンジと組んだシンエヴァが見たかった…でもそうしたらファフナーTBが見れないというジレンマ

#4話
今までは平成ガメラをアニゴジでやってるって感じだったけど、やっと円城塔らしくSFしてきて面白くなってきた。
1話アバンとか、今回の「進化」、そして可能性その4の神的存在の示唆から、やっぱり幼年期の終わりというか2001年宇宙の旅的な話になるのでは?

今まで当たり前に描かれてきた「エネルギー保存則を無視したエネルギー増幅」を、未来の時間軸に反射させて光子を集めてるってのは面白い仮説だった。乱反射させてるだけなら未来から引っ張っても悪影響はないと。
円城塔のオリジナル理論なのかは知らんけど。

しかしジェットジャガー、ラドンの次がアンギラスは渋すぎるわ……

#9話
話のテンションは高いし、活劇はハラハラするので時間がすぐに過ぎるという意味では面白いけど、メイがただの謎解き人形なのが残念。

怪獣映画に人間ドラマ不要論はあるし、実際シンゴジラは人間ドラマを排したからこそ面白かった。でもあれは国を守る人間達の話だから成り立つのであって、ただの一学生であって、世界の終末を防ぐ動機がない。
スタートは巻き込まれでも、そろそろ個人的なドラマや葛藤と結びつけてくれないとメイパートが楽しめない。
せめて銀さんの方はまだ生存の危機という生理的な動機があるからまだいいんだが…

そもそもメイが他の天才を圧倒して天才すぎるのも違和感。せめて空想生物学がヒントになってるならまだしもただの超天才だし…

あと8話では破局は異なる観測次元を用いた計算機の個性差による計算結果の違いによるエラーみたいな話だったはず、それはSF的には面白かったから、9話でただの現実の未来の破局になってしまったのは残念だった。
まぁこっちの方が話的にはわかりやすく盛り上がるか?
とはいえこれまでさんざん理論展開しといて今更わかりやすさ優先するのも今更感はある

#10話
伊福部BGMとオレンジの熱線CGが最高。ただやっぱりゴジラのデザインはイマイチだな。かっこよくない。

10話にして話進まないなと思ったが、逆に尺余ってるのかな?

とりあえずキングギドラとモスラの登場は絶望的か?12話もあるんだしだしてほしかったけどな。
サルンガがイマイチなのもあいまってね……それともサルンガもまだ最終形態ではなかったりするのかな?

ODが出てハードSFから一気にファンタジー化して萎えてたが、チャットが本当に暗号になってたら凄いな。だいぶ凝ったミステリだ。

#12話
最終話1つ前にしてまさかの溜め回。何も謎は明かされなかったな。サルンガもいるしモスラが出るのは確定的。次回で全てまとめられるのか…?
ビオランテはサービスだろうけどね

今回はとにかくペロ2の映像表現が面白かった。あとゴジラのテーマの弦楽器を使った静かなアレンジが超クール。

ところで、今回急に戦闘がグロくなったのは紅塵のおかげ?
ぶっちゃけ紅塵があると画面見づらいんだけど、やっぱりCGを楽にするためとか、修正を減らすためみたいなメタ的な意味があるんだろうか……

#最終話

うーん、残念でした!
中途半端というか…ゴジラとSFの煮詰め方が足りなかった感。

これゴジラシリーズ(怪獣アニメ)じゃなくて、モンスターパニックSFアニメなんだよね。
怪獣のSF的な解釈は、円城塔だから流石に面白いんだけど、13話も引っ張る話じゃない。中編だったら素直に楽しめてたと思う。

ゴジラ対メガロの踏襲とか、登場怪獣の渋さやジェットジャガーをメインに据えた点やODのオマージュ、ミニラとシンゴジラの熱戦、あえての昭和メカゴジラとか…
東宝が全面協力してるから一見ゴジラファンに向けたサービスは満載だし、例の音楽は問答無用で高まるし、オレンジの映像は特撮のオマージュもあって素晴らしい。
でもこれ、ただゴジラ(怪獣映画)のガワを借りてるだけで全くの別物。
いや設定を踏襲しろとは言わないけど、これじゃあ新解釈じゃなくて新モンスターじゃん。ゴジラには負の影もなければ怪獣王でもない、ただのイチ怪獣の1体でありただの舞台装置。ゴジラである必要性がなにもない。

これならゴジラ無関係の怪獣アニメとして作るべきでしょ。 KoMの方も不満はあったけど、よっぽど怪獣映画してたよ。
じゃあなぜゴジラシリーズでやったかっていうと、そりゃあ売るためだよね……でも、こんな中途半端な形に結実するくらいなら、中途半端なシリーズファンへのファンサはやめて制約なしの円城塔のSFアニメが見たかった。

かといって、ゴジラ観抜きにしても問題は多かったと思う。
13話ならやっぱり魅力的なキャラや人間ドラマは必須でしょ。円城塔の脚本がテレビアニメ向きじゃないわ。その欠点をわかってるから、円城塔自身も長編を書いてないんだと思うし。
シンゴジラも人間ドラマはなかったけど、生存戦争という本能のドラマがあった。ゴジラSPもモンスターパニック要素とか、世界の破局で物語を進めているんだけど、人の死が描かれずに危機感がないから途中でダレる。雑に死ぬリー(完全に生きてる流れだと思ってたから続編に出すのか?)、雑に生きてるハベル。たぶん基本のノリに、シュールギャグSF短編的な雰囲気があるんだよね……

説明を全部セリフでやってるのもアニメとして不適切だし、破局のヤバさを知らしめるなら、破局のヤバさをちゃんと映像で描かないと危機感持てないでしょ。

本作の元ネタの1つは『メッセージ』と円城塔は明かしてたけど、納得すると同時に違和感が凄い。

原作の『あなたの人生の物語』と映画版『メッセージ』は話の流れが全然違う。原作の言語理論や目的論と因果論をこねくり回すような話をそのまま映画化なんてできるわけがない。だから映画版は話の展開や表現をかなり変えてるわけで……もちろん原作は傑作ハードSFなんだが、それは小説だからこそ。

でもゴジラSPは、『あなたの人生の物語』をそのままアニメ化した感じなんだよな……映像表現を捨てて台詞で理論を説明してるだけで、アニメ用ににコンバートされてない。

とはいえ、SFとしては面白かったが、SFとしては中編でやるべき話という評価。これも結局、『あなたの人生の物語』の原作中編をそのまま1クールのアニメに引き伸ばした感。

13話あるから、もっと壮大なオチを期待してしまった。いや話の広がり自体はデカイんだけど、結局ジェットジャガー1体に小さく収束してるからね……このデカい風呂敷から小さく収束させるって展開も、短編なら楽しい仕掛けとして読めるんだけど……うーん……

あと、続編前提のオチはやめろ。
伏線回収して完結させてから続編を作れ。もしくはちゃんと続編の発表を最後にしろ。正直これが一番ムカついたわ。メカゴジラを続編に使うのはいいけど、モスラやキングギドラ温存してんじゃねーよ。葦原教授や過去の絵について語れやボケ。

…と、文句ばっか書いちゃったけど、もちろん良いところもあったよ。
円城塔やSFに興味ない人の間口を広げただけでもやった価値はあったと思うし。

ジェットジャガーは最高だった。主人公でありヒーローでありヒロイン。
つーか特異点に到達したのはJJなんだし、タイトル『ジェットジャガーS.P』にしろよ。タイトル詐欺だろ。

最後に、OPとEDは最高だった。曲も映像も。
ポルカドットスティングレイもBiSHもこんなにアニソンにハマるとは思ってなかった。
あとオレンジの映像と音楽にはまったく文句ない。ぶっちゃけシンエヴァよりよっぽど3DCGで特撮のパロディできてた。
ただ紅塵で画面が真っ赤なのは惜しかった。予算の都合だろうし、やっぱり劇場版のが合ってたんじゃない?

ま、こんだけ文句言っても続編やったらどうせ見ちゃうんだけどね…
夏藤涼太

夏藤涼太