「ナイトキッズの中里って言やあ高橋兄弟と並んで有名な走り屋だからなあ」
「なあオヤジ、32って凄いのか?」「32か…そりゃまあ凄いだろ」「オヤジなら勝てるか?下りで32に」「勝つね。32だろうがなんだろうが目じゃねえよ」「俺なら勝てるかな」「分かんねえなあ。まあギリギリ紙一重の勝負ってとこかな。なんでそんなこと聞く?やるのか?32と」「別に。ただ、聞いてみただけさ。行ってくる」「次は32か…ハチロクのセッティング、ちょっといじるかな」
★「ナイトキッズの中里がお前を名指しで挑戦してきたんだろ。受けて立ちゃいいじゃねえかよ。奴をぶっちぎってみろ。お前にはできるはずだ」「なんでそこまで言うんだ。あんたには関係ないことなのに」「関係なくはねえ。お前は俺に勝ったんだからな!お前を負かすのは、このレッドサンズの高橋兄弟しかいねえってことさ。それまで絶対に負けんじゃねえぞ。たとえ32が相手だろうとな」「俺はやらないって言ってんだろ!第一、やる理由がない」「理由?なんだそりゃ。走り屋がバトルすんのに理由なんかあんのかよ」「俺、別に走り屋じゃないし」「ふざけんなよ!そりゃ嫌味で言ってんのか?あれだけのテクニックを身につけるために、よほどの走り屋込みをしてるはずだ!走り屋じゃねえ奴がなんで走り込みなんかやるんだよ!」「好きで走り込んでるわけじゃない。家の手伝いで仕方なしにやってるだけだ」「ふん、嘘つくんじゃねえ。いやいや走っててあんな凄い技が身につくわけねえだろ!」「そうじゃない!分かってないよ…」「分かってねえのはお前の方だろ!走ることが嫌いな奴がドリフトなんかマスターするか?好きじゃなきゃ絶対身につかない技だぜあんなの!お前は自分でも気づいてねえかも知れねえけど、本心は車の運転が好きに決まってんだ。いいか、車を走らせることが好きなら、それで十分走り屋なんだよ。走り屋なら自分が走り込んで身につけた技術にプライド持てよな。挑戦されたら受けるのが走り屋のプライドってもんだ。わざわざ会いにきてガッカリしたぜ」
「あいつは誰かに物事を強制されたり、命令されたりするの凄く嫌がるんですよ。おとなしそうな顔してるけど、一度言い出すと頑固で譲らないし…」〈そっくりだぜオヤジに、そういう性格〉
★「あのなあ、ちょっと小耳に挟んだんだけど、今夜32とバトルするそうじゃないか」「え、俺は…」「やめた方がいいぞ。相手が悪すぎる」「いえ、その話なら…」「言うなって。その先は言わなくても分かってんだよ。俺にはすべてお見通しさ。自分がやりたくて引き受けたバトルじゃないのは分かるよ。イツキが調子に乗って受けちまったんだろ?だけど、お前も人が良すぎるぜ。友達の顔を立てるのもほどほどにしないとなあ。悪いことは言わん。32だけはやめとけ。お前クルマのこと詳しくないから32がどんなクルマかよく分かってないだろ」「32ってそんなに凄いんですか?」「〈しめた、食いついてきた〉凄いなんてもんじゃないぞ。アレだけは別格だ。FRと四駆のいいとこだけ合わせたような駆動システムだからなあ。ほとんど反則だよ。ハチロクとGTRじゃ違い過ぎる。下手なドライバーならともかく、相手もそうとう有名な走り屋なんだろ?」「〈オヤジが言っていたことと違うなあ。ギリギリで紙一重の勝負になるって言ってたのに…〉」「おい、聞いてるか?せっかく赤城のチームとの交流戦に勝って名前を上げたんだからもっと大事にした方がいいぞ。勝ち目のない相手と勝負するのは頭のいいやり方じゃない。なあ拓海、相手は32だし、やめても誰も逃げたなんて思いやしないさ」「〈逃げる?〉…店長、せっかく忠告してもらったのに悪いんですけど俺、走り屋として名前を売ることなんか別に大事なことだなんて思ってませんから」「…どうしてもやめない気か?」「やめないっすよ。そこまで凄い凄いって言われると、どれくらい凄いクルマなのかどうしても見たくなるんですよ。俺は別に32なんて怖くないですよ。失礼します」「…ふう。見事なくらい父親とそっくりなリアクションだぜ」
BGM - SAVE ME
「バカオヤジー!ハチロク返せー!」
RIE
Drone
8823peメモ
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三三二
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MANA
(C)しげの秀一/講談社・エイベックス・ピクチャーズ・オービー企画