頭文字D Fifth Stageの5の情報・感想・評価

エピソード05
ACT.5 藤原ゾーン
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あらすじ
大方の予想を裏切って、バトル中盤から拓海とカイの差は少しずつ開いていった。涼介が密かに見抜いた拓海の才能--特定の条件が揃うとハチロクの特性と完全にシンクロし、カタログスペックからは考えられない潜在能力を引き出す--が覚醒したのだ。人車一体となったハチロクは4WDマシンのような挙動でコーナーを駆け抜けていき、限界を超えたオーバーステア勝負にすっかりペースを乱されたカイは敗北を認めるしかなかった。
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8823peメモ

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BGM - CODE:D ★「これは現実だ…明らかにペースアップしてる。俺はガキになりきれてないんじゃねえのか?ガムシャラに攻めきれてないんじゃねえのか?ミスをしないとか、2本目を考えてタイヤを温存するとか、そういう計算が俺にジジ臭え走りをさせてんじゃねえのか!冗談じゃねえ…俺は、誰よりも速いと信じてレースをやってるんだ!」 「ぶつけた!ガードレールに!何が起こってる!レーシングドライバーが素人のハチロク相手に本気で勝負にいってるよ!」 「なんだそれ、ありえねえ!やっぱプロはすげえ…俺は余裕なかった…あれ以上は突っ込めない。正攻法でバトルしてたら分が悪いってことか…」 「藤原が追いあげられてる」「いよいよ最終局面か…」 ★「このバトルに勝つには、ガキになりきらなきゃダメなんだ!」 「なあ藤原、お前はいつまで自分の息子にあんな無意味なことをさせておくつもりなんだ?」「随分な言い草だなあ。自分だって若い頃は散々公道で暴れてたくせに」「あの頃とは時代が違うんだ。サーキットを走らなきゃ始まらんぞ。いくら峠で鍛えても、ある程度から上のレベルには行けない。お前の息子には才能がある。もったいないと思うから言うんだ」 「こうなると苦しいよな…逆に追い詰められた気分だよ」「いや、アイツはお前が考えているよりもずっと進化しているんだぜ、フミヒロ」「そうなのか?」「先行になった場合は1本目から勝負に行く作戦だった。細かい指示は昨日の時点で藤原に伝えてある。本当の仕掛けはこの先にあるのさ」「ええ?」「アイツの集中力は、切れていないはずだ」 ★「峠を超えるとか超えないとか、そんな言葉の意味が俺には分からないねえ」「なら断言してもいいぞ。今度ばかりは100%こっちの勝ちだ」「言っとくけど、勝負事に絶対はないんだぞ」 「涼介さんの読みが的確にきてる!ここは集中だ!一か八かやってみるしかないな」 「車をコントロールする懐の深さこそが藤原ゾーンの真骨頂なんだ。アイツがハチロクという車を操る時、プロでも追従できない領域が存在する。それにかけたトラップのつもりだったが、こっちの狙いは今頃相手にも読まれているだろう」「ええ?それじゃあ作戦は成功しないってことなのか?」「いや、違う。技術の勝負をプロが逃げると思うか?プライドにかけても真正面から受けて立つはずだ。少なくとも今日の相手はそんな男だ。コイントスでポジションを決めたがるほど一本気で真っ直ぐな相手なら見え見えのトラップにあえて勝負をしてくると読んでのゴーサインさ」 ★「ましてや舞台は峠…アイツは峠の職人だからなあ」 BGM - LIMOUSINE ★「ゴールは近い…限界を超えたオーバースピードでの突っ込み勝負!」「これこそ峠の勝負だよなあ!そのスピードでお前がクリアできるなら俺にだってできねえはずがねえ!受けて立ってやらあ!」 「藤原とハチロクのパフォーマンスはプロが曲がり切れないと判断するスピードからでも曲がれてしまう。そんなことが現実に起こりうる。すべてをひっくるめても藤原ゾーンなんだ」 ★「同じ速度で、同じラインで、しかもこっちはFRよりも限界の高いMRなんだ!冗談…だろ!」 ★「負けたよ。何を言っても言い訳になっちまうだろうが、こっちはミッドエンジンだし、ウイングもある。フルブレーキングなら絶対負けないと思ってたんだが…あんな状況になる半歩手前でコントロールするのがプロなんだ。それでもお前は最後までコントロールしきったし、俺は逃げちまった。あれは逃げのスピンだ。俺が一番悔やんでるのはそのことさ。あのまま突っ張っていればクリアできたのか、あるいは立木に激突するはめになっていたのか…それは分からないけど、コースアウトの恐怖感に俺の闘争心が負けたんだ。同時に俺はお前に負けた。俺はお前をサーキットの世界に誘うつもりでいたけど、戦ってみてちょっと気が変わったよ。お前独特の感覚はこっちの世界に来ても活かせないだろう。それはなんだがもったいないような気がするんだ。お前はそっちの世界で極めてみろ。唯一無二の存在になれるはずだ。これは俺からのアドバイスだ」 「お、待ってろよ。勝利の連絡だ。もしもし、俺だ。なにい…そ、そんなバカな!」「そうか、拓海の奴買っちまったか…」「そんなことがあるはずが…あー、クソッ!」「たかが峠の追いかけっこじゃねえかよ」「気休めはよせ!お前に俺の悔しさが分かってたまるか!」 ★「皆川だ」「俺は高橋啓介」「お前、速いんだってな。4WD相手に連勝中だそうだが、俺から逃げられたら大したものだ。見せてもらおうか、自慢のスプリントを」「俺に先行しろってことか?…了解だ。アンタ俺に着いてこられるかい?」「フン、ほざいてろ」 「なあケンタ…」「はい」「このバトル、俺には特別な意味があるんだ。分かるか」「分かってますよ…俺」「見てな、絶対勝つからな」 「妙にイライラするというか…残酷な気分になっていくのは何故かな。完膚なきまでに叩きのめしてやりたい気分だ」 「俺には分かる。啓介さんが特別だと言った意味が。それは、今日の相手がプロだということなんだ。プロを相手に自分の技術が何処まで通用するのかを試そうとしているんだ」 「素人の4WDにどれだけ勝てたところで初戦素人には車の限界を引き出せない。タイヤの状態が一番いいところでスパートをかければガタイの重いこの80スープラでも余裕で交わせる。同じFR同士のこのバトル、リアタイヤの消耗戦に尽きる。本当のタイヤマネージメントはレースというフィールドに身を置いた者でなきゃ絶対に身につかない。1本目でせいぜい頑張ってリアタイヤを終わらせるこったな。スピードが自慢の峠の兄ちゃんはそこでおしまいだろ」 景勝日本一・長尾峠 富士見茶屋 「藤原は峠に特化したスペシャリストで、ある意味変則派…それはまさしく、その通りになってると思う。一方、啓介の方は、モータースポーツの技術を峠に応用していく正統派スタイルだと。同じ正統派同士ならプロ相手に勝ち目はない…そのための藤原の起用だったと…」「確かにそう言ったな」「だったら今日のバトルはどうなるんだ?今日の相手はそれこそトップレベルの正統派なんだぞ」 「皆川という男は自信家だから素人相手に負けるとは思っちゃいない」 「先行はFD!皆川め、後ろを選んだか。1本目のこのポジションが勝敗そのものを決する鍵になる」 「確かに、今回の相手は超一流の正統派だろうな。コンペテションで鍛え抜かれた技術に隙はない。タイムを削り取る時計のセンス、限界領域での精神的な余裕、それにスタミナ…どれをとっても公道の走り屋が辿り着けるレベルにはない。直球勝負ではなく、チェンジアップで交わしに行くのが正解だろうが、啓介にはそんな選択肢はないからな。それでも俺は自信を持って啓介を送り出している。何故なら、今の啓介は成長しているんだ」 ★「スペシャルメニュー?つまりは特訓ってこと?」「そうだ。後輪駆動のFD3Sで強力な4WDを相手に勝ち抜いて行くことは至難の業だ。重要なのはどれだけ効率よくタイヤを使えるかということだろう。これは、そのための練習なんだ。1日5往復でいい。上りと下りの10本のタイムをなるべく誤差なく俺が設定したタイムに揃える。これをすべてノートに記録して毎日俺に見せること。設定したタイムと大きく誤差が出たら理由を自分で考えてなるべく具体的にレポートしておくこと。それだけだ」「それはいいけど、兄貴の設定したこのタイム、赤城道路のレコードタイムにはほど遠いっていうか…こんなの簡単すぎねえか?」「クリアすればいいとは言ってないぜ。早すぎても、遅すぎてもNGなんだ」「え?」「上りでも下りでも、雨が降っていても、遅い車に捕まった時でも…例外なく目指すタイムはひとつだ。楽だと思ったら大間違いだぜ。どれだけ難しいかすぐに分かる。栃木で館智幸の相手に指名されなかったことが悔しいならこのメニューを秋まで毎日続けてみろ。それが神奈川まで勝ち抜くための絶対条件だ」 ★「あの練習はいくらかは啓介用に改良してあるが基本的には俺が昔、自分でやってきたメニューと同じだ」「涼介と同じ?」「闇雲に全開で走り込みをするだけなら車に負担がかかるだけで技術の進歩は望めない。限界に近いペースで走っていればタイムは自然と揃っていくものだ。中途半端に抑えてタイムを揃える方が難しい。上にも下にも誤差が出てしまう。ただ気合いで踏み込むだけのアクセルワークでは通用しない。理性的に開度をコントロールする技術が必要になっていく。それだけじゃないぜ。雨が降れば刻々と変化する路面のミューに対応したペース作りを工夫しなければいけないし、遅い車に追いついてしまった時の対応もまた大変なんだ。追い抜くまで4秒ロスしたとすれば、その4秒を正確にリカバーしなければいけない。ストップウォッチを見ないで身体の中の感覚だけでそれをやる」「あ…そんなこと、できるものなのか?」「すぐにはできない。だけど、トレーニング次第ではできるようになるんだ。走り込みというのは本来そういうものだ。単調な練習の積み重ねの中で、膨大な量のデータを体の中に蓄積していき、タイムの変動に敏感なセンサーが養われていくんだ」 「アクセルペダルの踏み加減を細かく分けてコントロールするんだ。スピードを思い通りコントロールすることは精一杯速く走るよりずっと難しい」 ★「啓介の凄いところは、やると決めたらトコトン妥協せずにやり抜くところだろう。プロジェクトDの遠征の日以外は毎日欠かさず走っているんだ」「毎日か…」「走り込んで自分の感覚と実際のタイムとのズレが修正されていくにつれて何がタイムを悪くし、何がタイムを良くするのかが理解できるようになっていくし、レポートすることによって常に分析することが習慣になってくれば感覚重視だった啓介の走りに理論の裏付けが構築されていくんだ。多分アイツはもう気がついているだろう。あの練習がもたらしてくれる意外な副産物を…」 ★「神奈川の初戦を思い出してみろ、フミヒロ」「チーム246のランエボか。中盤すぎに一気にスパートをかけて振り切って買った」「前半のタイヤを温存するマネージメントも鮮やかだったが、ここ一発のスプリントに磨きが掛かっていることの方に俺は注目している。俺が言う副産物というのは…つまり、スピードなんだ。峠に特化したタイヤマネージメントと時計のセンス、その二つを高いレベルで身につけさせることがあの練習を啓介にさせている本来の狙いだ。だけど不思議なことにメニューそのものは速さを抑えて走る練習であるにも関わらず、結果的に飛び切りの速さを身につけるということになってしまう。そして今日のバトルには、その副産物を全面に押し出して戦う作戦だ」「つ、つまり…レーシングドライバーを相手にガチンコのスプリント勝負で行くってのか!?」 BGM - ROCKIN' HARDCORE 「藤原ばかりにいいところは持っていかせねえからな。関東最強最速、プロジェクトDの伝説は俺が作る!」 「小癪だな、コーナー脱出時のアクセル開度を毎回少しずつ変えながら俺を牽制してやがる。85から90%くらいの間をランダムに移動しつつ車間を測りながら飛び出すタイミングを探ってやがるのか…これだけの芸当ができる奴とはな。俺が考えてたよりもコイツは上手い」 「ヒルクライムもそろそろ中盤に差し掛かる頃かな…藤原から見て、今回の相手はどうなんだ?実際に戦ってみた感触は?」「速いということにかけては、本当に速いと思うな。レースをやる人たちは。俺の時は一旦は引き離すことには成功したんですよ。このまま逃げ切るしかないと思って本当に必死に100%のスパートを掛けたんだけど、逆に追いつかれて、追い詰められて…めちゃくちゃ動揺しますよ。ここぞというところでスピード負けするのは」「まあ、そうだろうな」「だけど、啓介さんは俺とは違う気がする」「え?」「なんて言うのかなあ…この頃、啓介さんは雰囲気が出てるんですよ。この人と勝負するのはヤだなあ、味方で良かったなあっていう…速い相手はいっぱいいるけれど、啓介さんと勝負する方がキツいんじゃないかって」 「始まったか…任せたぞ、啓介。俺のチームに二人の天才が揃ってくれない限り、神奈川エリアの全勝は無理だ。プロジェクトDの完成もないんだぜ」