鈴木パンナコッタ

美少女戦士セーラームーンセーラースターズの鈴木パンナコッタのレビュー・感想・評価

3.6
前半は酷かったけど、流石に最後は面白かった。銀河最強の戦士セーラーギャラクシアに対して、剣=武力で排除するのではなく、共感と理解をもって和解。諸悪の根源たるカオスは人々の心の中に返り、我々は清濁併せ呑むことでこの世界を生きていくのだ、と。
最終回はなかなか見ごたえがあり、イマイチと思っていたセーラースターソングが流れたときはグッと来た。最終決戦で主題歌は強い。
その上EDでムーンライト伝説が流れ、無印冒頭のうさぎの台詞がリフレインして、5年に渡るシリーズがきれいに終わった感。長期シリーズと円環構造の繰り返しも強い。

とはいえスターズ全体で見たときにはやはり酷くて、各エピソードのしょぼい作画や止め絵ばかりのアクション、話のつまらなさは言うに及ばず、尺の短さに由来する消化不良感が強い。設定はかなり面白いのに、全然生かせてない感じ。
ちびちびは超重要キャラなのに終始もてあまし気味で、最終話以外はいなくても同じ。ちびうさと似たパターンの登場だからって、いくらなんでも説明なさすぎでしょ。言葉を話せない+衛がいないから既存キャラとの関係に割り込んで自己主張する機会が無く、なし崩しで月野家に居座り、誰も触れない。

スターライツも転校してラブコメを始めたのは良し悪しで、転校してきてプライベートで馴れ合いすぎたために敵か味方かという緊張感が薄い。
Sのウラヌス・ネプチューンのほうが「本当に敵対するかも」という一線引いた関係だった。マンネリ感の打破という点では良かったが、そのくらいかなぁ。

そもそもスターライツの「火球皇女を探す」という行動目的は本質的にムーンたちと対立する理由にはならず、なんで敵対視しているのかよく分からなかった。そのため最終決戦でサクッと仲間になり、なら最初から仲良くしておけよと。対立する理由が感情だけだとバカに見える。
この点、太陽系外の侵略者と戦う使命を持つ外部太陽系戦士がスターライツを敵対視するのは自然。それだけにスターライツ側がムーンたちを適しする理由が弱かったのが残念。うさぎと星野のロミジュリ感も、「いやいやおたくらが仲間を説得しろよ」と。

セーラーアニマメイツはなんか惜しかったなぁ。デザインなどは魅力的なキャラだと思うけど、描写としては上っ面だった感じ。
アイアンマウスはわりと可愛かったと思うけど、それ以降は幹部同士の会話が軽かったな。セラムンの敵は幹部同士の会話が楽しいのに、スターズではテンプレ感が強かったような。
セーラーギャラクシアはラスボスの風格があって良かった。黄金の鎧に身を固めたツワモノ感といい、堀江美都子のドスの利いた演技といい、格上感がカッコよかった。
ただ、シャドウ・ギャラクティカの構成員がアニマメイツの4人だけというのは、組織として貧相。ストーリーの規模感と合ってないでしょ。

何はともあれセーラームーンのTVシリーズは完走(まだ劇場版SuperSと亜美ちゃんの初恋を見てないけど)。社会現象になるのも納得の面白さだった。
毎話の展開はほぼ定型だけど、絵とキャラの良さが半端ない。バトル物と壮大なストーリーの相性も良く、恋愛より友情のほうが若干比重が大きいのも良かった。