ポンコツ娘萌え萌え同盟

ISLANDのポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

ISLAND(2018年製作のアニメ)
1.0
この感想、アニメを見る前にまず原作をプレイして欲しい。まだ引き返せる。
vita、PS4、switchで出てるし、PC版はDLsiteで販売されてる。

誰もこのアニメ版脚本を止めることはできなかったのか!?
作画や演出自体は悪く無いがシナリオが苦行でストレスで憤死しかけた。
ぶらんくのーとの同人エロゲ「ひまわり」に感動して、ごぉさんの作品関連で「ISLAND」はアニメ化してたし、アニメで補完しようと試みた。だけどごぉさんがこんな雑な内容書くわけないと途中で違和感じて結局原作ゲームの方やった。
なので今回アニメ版に再チャレンジしたがあまりに辛い。これじゃあリンネの夢は何処に行った?

原作の「ISLAND」は面白かったです。伝承、SF、閉鎖的な島風土病、なにより三千界切那の冒険譚として。難解で複雑な話題含めてなお読み物としての奥行きを与えていた。なにより一部除いてほとんどの伏線が回収さたのも見事だった。
しかしアニメの脚本にはあまりに向かないとも感じた。何故ならアニメの物語が縦軸で展開するから。
元来美少女ゲーム(あるいはノベルゲーム)の面白さは横展開がしやすくそこで見せる・明かす要素も変わってくる。
一方で「ISLAND」は明確に縦軸が存在している。それが共通ルート→凛音ルート→冬編(NEVER ISLAND)→真夏編の一連の流れになります。
じゃあそれだけならアニメ化しやすいんじゃないの、となりますが他に横軸として夏蓮ルートや紗羅ルートがあります。
そして2つのルートを完了してからの凛音ルートなので、プレイヤーがタイトル画面で「はじめから」を選択し凛音ルートにつき進んだことで一種パラドックス的な楽しみ方も出てくる。

ですがアニメ版は基軸は凛音ルートを基にするより他にないですが、一方で夏蓮ルートと紗羅ルートの内容を拾わならない。なのでアニメ化する際に、原作の内容を再構築して原作改編も必要となってくる。そこに綻びが生じる。
そう、尺不足である。
元々原作ゲームの「ISLAND」が美少女ゲームの中でシナリオが長い方だが、アニメでは12話しかない。その制約された中で2つの要素を入れるのであれば”圧縮”しコミットする必要がある。
なので夏蓮ルートや紗羅ルートにあった彼女達自身の悩みや問題や描写不足を招きあまり薄い内容と化している。
原作にある夏蓮に言いくどくあの名場面も、紗羅の多数のバッドエンドを抱えた先に見れる真実も当たり前のようにない。まあこれらは分岐ありの美少女ゲームだからこそできたので縦軸のアニメだと仕方ないが。
原作に"人生は過程しかない"と名言があるが、本作の圧縮された物語には過程。肉薄にしてしまい結末も無感動なものだ。
そして尺不足の影響はまだ続く...。
後半の凛音ルートに至っては原作にはしっかり要因として効いていた「切那は死ななければならない」「誰か殺す」といった要素は1話に少しでただけで後は忘れたようにない。
なので切那の存在として揺らぎとかもあんまない。切那の存在や揺らぎも含めて面白いのに、アニメ版では無味で面白みのないキャラになってる。

そして本アニメで一番最悪なのは冬編(NEVER ISLAND)の出来である。
冬編に関しては原作は”一 本 動”。分岐がなくノベル色の要素が強く、まだアニメ化しやすい部分である。
閉塞的で暗い雰囲気、ポストアポカリプスで絶望的なシナリオが特に魅力的だった。
しかし前述にも書いた通り冬編のあとに真夏編も控えているし、完全に描き切る尺もない。なのでアニメ版だと実質途中の部分から唐突に始まった冬編は普通に見ていて置いてけぼりにされるような展開の数々。”過程”もあまりに薄く原作プレーしていても啞然とする。
そんな状況で当然ながら100%書けるはずもなく、内容も改変含めたのもあり冬編の内容をダイジェストとしてすら上手く出来ていない状態。

さて本作の再構築についてもう一つ避けられない要素がある。それが「原作改編」だ。自分自身が原作厨の要素が強いの認める。
ただこれは正直酷い。
物語を再構築する上で設定の出し方や見せ方が変わるのは仕方ない。
ただISLANDの設定の根幹となる”煤紋病”と”浦島伝説”、なによりミスリード的な仕掛けの面白さが何一つとして描けてない。
"煤紋病"に関してはアニメ版だと有馬雨蘭が不在のためその正体が明かされずじまい。
”浦島伝説”に関してはそれこそ上述した冬編が滅茶苦茶内容になってしまったため、何のための立ち位置かおかしなことになっている。
だからこそ、真夏編にも根幹にある"煤紋病"、”浦島伝説”の歯車が生きてなければ、上手く”ミスリード”としての要素が描けるはずがなかった。
だがあろうことかトゥールエンドの”Re:”の内容を一部汲み取って完結させようとした結果、出来上がったのがただの安っぽいメロドラマにしかならない。
それじゃあ、リンネの願いは?三千界切那のやるべき仕事は?それらはエンディングという虚無に消えていく。
このエンディングが彼女の救いとするなら、カレンもサラもネハンも浮かばれないしNEVER ISLANDの存在意義自体が消失する。

もしかしてアニメ版スタッフはNEVER ISLANDが嫌いなのだろうか?