ゴンベ

SSSS.DYNAZENONのゴンベのネタバレレビュー・内容・結末

SSSS.DYNAZENON(2021年製作のアニメ)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

「怪獣優生思想」の面々は、それぞれが現代人の(5000年前の人間なのに)悪いところを煮詰めたような極まったエゴイストだった。その彼らが操る怪獣を「恩義に厚い」主人公とその仲間たちがぶっ倒し、最終的に各キャラクターを「社会(ないし「国」なるもの)と折り合いをつけること」へ着地させるという流れは、ともすると「怪獣は人間の役に立つならこの世にいてもいいが、それができずに迷惑を掛けるようであれば追い出してしまえ」というメッセージとして受け取られかねない所がある。

事実幾つか読んだレビューの中には、市民プールや映画館で楽しそうにはしゃいでおきながら人間を殺そうとする「怪獣優生思想」のエゴイズムを指摘し、彼らを人間文明にフリーライドする「社会の寄生虫」と呼んでいるものがあった。

自分なんかより相当アニメを見慣れているんだろうなという見事な分析だったし、論旨自体は至極真っ当だったのだけど、主人公より終始「怪獣優生思想」に共感しながらこの作品を見た者としては、終盤の描写を挙げながら少しだけ彼らのフォローをしておきたい。

蓬たちガウマ隊はそれぞれ「怪獣優生思想」の面々と通じ合うところを持っていて、ともすれば彼らと同じ道を辿りかねないものとして描かれている。ガウマも敵対姿勢はとっていても、確かに彼らの過去と痛みを(殴っても「悲しいぐらい痛くない」ほどに)共有していて、怪獣との繋がりを「切り捨てた」ことによってやはり同じく滅びることになる。

10話の回想において、ガウマの頬にある傷は彼が「怪獣優生思想」を「裏切って」袂を分かった時にできたものであることが描かれる。11話以降彼が弱っていく過程で、この傷は1つに繋がって「S」の字のようになり、最終回の最後にはガウマから蓬と夢芽へ受け継がれたことが分かる。

グリッドマンの世界において、あくまで人の心から生まれる怪獣が「切り捨てられるもの」であるはずはない。そう描くつもりならビルの下敷きになる人を描くだろうし、オニジャは警官殺しを遂げただろう。言わばこの字は、世界に「怪獣優生思想」の面々が、ガウマが、そして怪獣が確かに存在したという証なのだ。蓬たちは彼らの身勝手さも浅はかさも、存在に付いて回る迷惑さをも分け持ちながら生きていくのだろう。

ちなみに最終話をざっと見返した限りでは、ラストバトル後の暦の身体に「S」字のアザがある描写はない。見落としたのでなければ、おそらく4つ目のSは、ちせが新しく彫ったタトゥーの龍ということになる。響裕太に大きなものを一手に引き受けさせながら「Special Signature to Save a Soul」たる単一のヒーローの在り方を見つめた前作に対し、複数性・相補性の物語の帰結としての「Scarred Souls Shine like Stars」を地上から見届けたちせ。怪獣を利用するでも退けるでもなく友達にした彼女が、前作のアンチ枠として「GRIDMAN×DYNAZENON」に登場する可能性はかなり高いと見たが、果たしてどうだろうか。
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