つるつるの壺

機動戦士ガンダムSEED DESTINYのつるつるの壺のネタバレレビュー・内容・結末

機動戦士ガンダムSEED DESTINY(2004年製作のアニメ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

久しぶりに鑑賞。言われているほど酷い作品だとは思わず。

前作の「想いだけでも力だけでも」の地続きとして、ある程度の地位になった前作のキャラクターたちが戦争の中で自分が正しいと思った道を進み、それが間違いだと気づいてまた別の道を模索する話だと解釈。まだ10代の青年たちには政局や戦争の複雑さを解決できるような聡明さもないので、間違っていくのは自然な事のように思う。劇中でも「まず決める。間違っていたら後悔し、また考える」みたいな話をしていたので、キャラクターたちがフラフラしているのはある程度脚本家の狙いかもしれない。

今作の主役であるはずのシンは後半からキラとアスランに敵対することとなり、それがSEEDファンにとってはウザく思えたというのは分かる。自分も放送当時はそう思ったから。これはキャラの描き方に問題があって、戦績を上げるにつれ、アスランに対して煽りムーブを取るようになり、嫌な奴の側面が強化されていく。恐らく作り手が考えたリアルな若者像を投影したキャラクターだったと思うが、これでは視聴者の共感を得るのは難しい。態度だけデカくなってて成長してねえんだもん。
そういえば夜回り先生がテレビで取り上げられ始めたのってこの頃だっけか?その影響もあるかもしれん。
シンというキャラは、心に傷を抱え、反抗的に振舞ってしまう自分を認めてくれる大人にホイホイ付いて行ったら悪行に加担させられそうになって苦悩するが、ここ以外の居場所を知らないのでやらざるを得なくなり破滅していくという悲哀のあるキャラクターなんだが、勿体ないことをしたなと思う。

デスティニープラン云々は話のペース配分をミスったが為に駆け足で説明だけしてその内実はすっ飛ばしているのでイマイチ納得出来ない。遺伝子情報をもとに、その個人の資質に合った職業に振り分けるというわけだが、これが戦争根絶に結びつかない。お前の人生の最適解はこれだからと個人の選択を規制して人々がそれを受け入れて無気力になるかというとそんなことはなく、結局遺伝子レベルで優位に立てるコーディネーターとそうではないナチュラルの軋轢は増すんじゃねえの?
というか、もうコズミックイラはコーディネーターを生み出してしまったことで詰んでるんだよ。

最近SEED劇場版に向けて監督がXで投稿している内容を見ると、放送当時SNSがなくてよかったなと思う。絶対要らんこと言って炎上するでしょ。