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機動戦士Vガンダムのおはうちのレビュー・感想・評価

機動戦士Vガンダム(1993年製作のアニメ)
5.0
キャラクターの死に様が鮮烈で記憶に残る作品のラストで、まさか生きている姿に驚くとは。最大の敵が失明して見窄らしく、故郷を求めて生きている姿を映して終わるのが何とも言えない余韻を残してくれた。ガンダムシリーズで主人公が元居た故郷に帰還して収まっていくのが新鮮。

ここんところは漫画原作アニメの鬼滅とか進撃ばっか観てたせいなのかな、原作に囚われない映像こそ原作であるVガンダムの反射神経の速さに驚くんだよね。どうしても前者は台詞を聞かせるだけの時間が生じて絵の連続性の長所を自ら損なっていたのが目立つ、体感時間が長い。

アニメの、いまここ作画すごいから見せ場ですってシーンはVガンダムには無いんだよね、映像の見せ場は全体であると、全体のリズムこそが楽しいんだと、映像の連続性こそが快楽であると自覚していて、それを実現するために反射神経でアニメを作っている。ガンダムに比べると鬼滅や進撃はスローだ。

漫画原作アニメの体感時間は長過ぎる、鬼滅は駄目だ。例えば漫画を読んでる時の体感時間に比べると鬼滅の遊郭編のアニメは長過ぎた、私的には原作に忠実と褒め称えられる出来とは言い難いのだ。読んでる体感はもっとライトに速かったのにアニメは鈍重だ。漫画とアニメでは埋められない体感時間がある。

Vガンダムではクレしんのひまわり以前の、こおろぎさとみの赤ちゃん演技を沢山拝めていいね、初めから完成されてるし凄い。



1話『白いモビルスーツ』
始まってすぐに主人公が強奪したであろうロボットに乗って戦ってる時点で話数を間違えたかと思ったが正しかった。絶対に第一話ではやらない事のオンパレードの数々にビビる。平然とシリーズのお約束ありきで進行させてくる。ガンダム初登場と活躍を優先させた歪なスタート。

シレっと大量の死体が転がってるカットの異様さでヤバい物に手を出したと思わされた。カテジナさん初めからヤバみあったな。平然と子供達が戦争に放り込まれている現実はガンダムに馴染みのある人ならば受け入れられるが、余りにも初めから戦っているから戸惑う、戸惑う。


2話『マシンと会った日』
本来なら1話になるはずの2話だ。カテジナさんにメール送ったらFAXで届く描写で時代を感じた。ウッソがメール送る前に表示されるカテジナさんの画像はあれなんだろうか、PCの壁紙か?プロフの画像?たまたまとはいえ、空飛ぶモビルスーツを二機も落としているウッソやるな。

3話『ウッソの戦い』
ロシアがウクライナ侵略しているタイミングで市街地戦を観るとキツい。人の死が低体温で、F91だと愉快痛快、バグなんてオモロい兵器も出しちゃって楽しいんだけど、Vガンはサラッと死んじゃうね。あまりにもディテール細かく悲惨に死ぬのもキツいけど、ちゃちゃっと死ぬのもキツい。

4話『戦いは誰のために』
戦場に子供達ばかり、更には赤ん坊を背負ったままのシチュエーションに晒されて大分ハラハラさせられる。ウッソの乗るモビルスーツが巨大なガトリング砲を担ぎ上げて戦争にのめり込んでいると不安がりながら見守るシャクティの構図が印象的。

5話『ゴッゾーラの反撃』
MSがやられても敵兵が生身でガンダムに立ち向かう執念や恐怖に当てられてダウナーになっちゃう主人公とか、なかなかですよ。

6話『戦士のかがやき』
あらすじの淡々とした箇条書きとか困っちゃうわ。3対1の劣勢がなんと敵側の騎士道精神ゆえに生じた同士討ちにより一人にまで減っていき、最後の一人は子供が戦っている事実に号泣して絶望して自害を選択するハードさ、本気で戦争の現実に打ちひしがれていく様子がヤバイ。

7話『ギロチンの音』
トレーラーを襲撃する巨大金田バイク集団とかチェイスシーンの作画カッコいい。子供に見せしめギロチン処刑の中継を見るように勧めるマーベットさんとかヤバいな、トラウマになって当然過ぎる。首が落とされる先にあ?藁のカゴの異様な存在感が凄い。流石に首コロリは無かったな。伯爵さんはギロチン処刑の為に用意されたキャラだと思うと病んでるな。

8話『激闘!波状攻撃』
ギロチンがトラウマになるなんて当たり前を真面目にやってる。ウッソ自身がギロチンにかけられる夢を見てしまうのが不憫。ウッソは戦場から逃げるが一話以内で復帰するスピード感覚に驚く。絶体絶命時にギロチンにかけられるイメージを想起し、ギロチンのように振り下ろされるビームトマホークのハラハラ感がヤバい。

漁師の爺さんがボケてるのか分からないままザンスカール兵に射殺される寸前まで息子を助けるようにウッソを逃してやるのが中々ですよね。あくまでもストーリーの中核でも無いし、死んでフェードアウトするのが何とも言えん。ラストカットで溜息を吐く。魚でギロチンの威力見せつけて◎

10話〜14話
シュラク隊が頼もしく仲間入りして賑やかになった!!が、怒涛の新キャラを順番に戦死させる展開の畳み掛けを少年のウッソに容赦なく叩き込んできて凄いね、同隊内で仇討ちに走って不味い事態に陥ったりで人間臭い。極め付けがマスドライバーを支えたまま殺される展開には仰天。

Vガンダムのシュラク隊は口紅を賭けたり、口紅を使ってウォーペイントを顔に描いたり、葬儀の死化粧で口紅を塗ってあげるとか、女性らしい情緒ある描写に溢れていた。

例えばF91のバグで皆殺しにするのはガジェット感や、お遊びでやっていて微笑ましくて無邪気で楽しいんですよね。しかし、Vガンダムになると衒いなく悪意が現れてヤバいよね、善意を踏みにじって殺してるからヤバいし、冷血だよね。

17話『帝国の女王』
総集編の体裁を使った恣意的な印象操作をやっていて抜け目ない。女王に街を襲撃した際には住民は避難していたと虚偽を話すが、総集編で使われる過去の映像ではハッキリと住民が虐殺されている様子を見せつける。実際に起こった殺戮を都合よく歴史修正してから女王に伝える印象操作。

21話『戦略衛生を叩け』
艦隊戦が面白い。艦が衝突し合い白兵戦に突入する流れの連続は見応えあり。艦の動力が核爆発しそうになって敵味方関係無く阻止しようとする勢いをサラッとやるのが凄い。宇宙ではぐれたシャクティ側は赤ちゃんや犬や少女が固まって危機に陥るから冷や汗をかくし、突然の死が怖い。

22話『宇宙の虎』
15話でいい感じに別れた敵兵との再会からの本気で殺し合っていく転落ぶり、戦場での良い話を反転させて牙を剥いてくる。やらなければ殺される圧力圧迫、ウッソに向けられた大人からの通過儀礼が多すぎて怖い。当たり前ではあるけど改めて子供が戦争に参加する異常性を丁寧に見せる。

24話『首都攻防』
絵がいい、作画が良い、作画回って言うほど派手じゃない部分のメカやキャラが魅力的だったので気になり作画監督のクレジットをちゃんと確認したら村瀬修巧で納得した。

26話『マリアとウッソ』
前回の次回予告で〇〇が戦死すると言った通りに戦死するが、俺の屍を越えてゆけ展開だから今迄で一番死んだ理由を見つけやすいが、ウッソとマーベットはべそをかくからダウナーにならざる得ない。負けた責任を取らされる為にギロチンにかけられるそうになる敵将校とか中々ですよ。

27話『宇宙を走る閃光』
とうとうカテジナさんがMSに乗りながらイデオロギーのぶつかり合いを仕掛けるようになって、ギロチンを必要悪と主張する相当ヤベー奴に。ジュンコさんは取り付けられた爆弾を安易に触ってしまうと爆発に巻き込まれる当然さを見せる。突然死する瞬間は前触れも無くて怖い。

29話『新しいスーツV2』
ウッソを懐柔する為に何故か一緒に風呂に入って説得するルペ・シノお姉さんから逃亡する活劇を楽しんだ。裸のまま追いかけっこする可笑しみと、走りながら部下が着替えを持ってきて着替える躍動感。後継機のV2に乗り換える件より目立ったアクションだった。

31話『モトラッド発進』
タイヤ付きのモビルスーツや、戦艦にタイヤが取り付いているデザインのユニークさ威圧感、暴力的で話しても無駄な敵。タイヤ戦艦を止めようとするゲリラ部隊の勢い、特攻の性急さ、そして核爆発。何もかもが突然。

32話『ドッゴーラ激進』
新人パイロットのオデロとトマーシュが何度も死にそうになる度にVガンダムならサクッと死ぬだろう意識から絶体絶命の迫力が違う。死にそうになる度、マーベットがフォローに入って死地をくぐりぬけてホッとする連続。ドッゴーラの面白デザインに相反して戦闘そのものはシビア過ぎる。

34話『巨大ローラー作戦』
うっわ、進撃の巨人の地鳴らしやんけ。巨大なタイヤを装着させた戦艦のビジュアルもインパクト大だし、ガンガン市街地を踏み潰していって話が通じなさ過ぎてヤバい。MSを核爆発しないと進行を止められないまで追い詰められて実行しちゃうし、地球がボッコボコだ。

36話『母よ大地にかえれ』
ギロチンの恐怖との戦いで母親の首が落とされて息子の手に収まる構図に仕上げてしまうのはスゴイ。36話全体の作画や演出はそこまででは無いのだが、最後の首を抱いてシリアスになる場面における影の落とし方や、日傘を差して悼んであげる丁寧な演出には泣かされる、見事だった。

ヘルメットの中身を見せないで腕に乗っかった重さで頭部の存在感と生命の重さを描写してきてスゴイ。

37話『逆襲のツインラッド』
「死」についての台詞のやり取りがエヴァっぽかったな。戦争のせいで地球は汚染された為にちゃんと死ねない。寿命を全うしないまま死んでしまって、本来なら一生懸命に生きて死ねるはずなのに戦争のせいで、きれいに死ねないのだから戦う。ちゃんと生きて、きれいに死ぬため。

38話『北海を炎にそめて』
戦死した直後にバイク乗りが自分達の理想郷を目指して浮遊しながらバイクに乗っている絵面には泣かされてしまった。シュールすれすれ、このグッとくる瞬間はマジック。バイク乗りの理想郷を作る為にバイク戦艦を発案して街を潰してしまうモチベーションは意味不明な狂人だったけどね。

40話『超高空攻撃の下』
前話で殺めてしまった軍人の妻と子供が登場して、ウッソが墓参りさせてやって和解するストーリーのクソ真面目さよ。この頃の富野監督ってクソ真面目だからこそ、戦争で人が死んで当然である描写を積極的にやってたんかな。子供が死と向き合う描写を念入りに入れる。しかし負荷が強い。

41『父の作った戦場』
後半から再登場するファラ・グリフォンのアクの強さ、額にも腰にも全身に鈴をジャラジャラと鳴らす狂人。やっつけ感がありながらもドロドロしながら場を引っ掻き回す強キャラは観ていて楽しい。こんなキャラが好き。

42話『鮮血は光の渦に』
ルペ・シノがピピニーデンに取り入るためキスをしてやった後、口を拭って捨ててやったハンカチに付いた赤色が印象的。ウッソに固執するルペ・シノの誇張されてるが故の生々しさ、歪さ。

43『戦場の彗星ファラ』
その場で使えない部下を射殺するファラの即断即決ぶり、頭がいろんな意味でキレてて良い。前回で初登場した新型シールドがさっさと壊れる流れも流石に読めないよね。沢山の脚部パーツ(ブーツ)の物量攻撃で撃破してきてバリエーションが豊か。

44『愛は光の果てに』
リアリティがあるようなのだが、どう考えても非現実的な展開なんだよな。何でこんなに魅力的なんだろうか。衆人環視でプロポーズをした男女が、ウッソと子供達と別れてから抱きしめ合ってキスをするカットのパワーは凄まじかったな。馴れ初めから結ばれるまでを最短で描写していた。

45『幻覚に踊るウッソ』
ここら辺が人類補完計画っぽさある訳ですね。数々の登場人物の戦死場面を繋ぎ合わせてウッソを精神的に痛めつける展開、本シリーズのグロテスクさで思いっきり殴ってきて凄い。とにかく死んできたシリーズでやったら効力が高いエピソードだった。

47『女たちの戦場』
幾らなんでもファラの鈴が揺れまくって笑いましたよね。今までの流れ的にマーベットは殺されてもおかしくなかったのだが、流石に子供を身篭った母親を戦死させるのは不味いと常識回路が働いたみたいで安心した。

48話『消える命 咲く命』
マーベットのお腹に宿る命を子供達が手を添えて感じ取っているショットが素晴らしかった。赤ん坊から手を添え始める流れが良い、ここでウッソが率先してやると性的なニュアンスを多少は感じ取れてしまうから初めは無垢な赤ん坊だからいい。

49話『天使の輪の上で』
カテジナさんが考案した少年ウッソに対抗する術が、お姉さん達を布面積が小さいビキニの格好にさせて迎え撃つとは、発想が馬鹿で姑息で阿保なんだけどもMSで生身の人間と戦う忌避感を与えるから上手いこと考えられている。しかし、一部は遠慮なく殺しちゃってるんで、むしろヤバかった。

カテジナさん考案のビキニお姉さん作戦の説明中に、何故だかパイスーをグイッと脱いで胸元を出すのか分からないが熱意は伝わるよね、何それ。

50話『憎しみが呼ぶ対決』
カテジナが抱える内面のドロドロや欲望をここまで書き起こして堂々と台詞にして突き抜けると、むしろ嫌いになれないな。よくここまで吹っ切れた女性を描けたよ凄い。マスクキャラのライバルポジのクロノクルはとことんつまらないがカテジナの存在で輝く訳ですね。

51話(最終回)『天使たちの昇天』
クロノクルの縦パン落下死は凄いな、見たことないフェードアウトしたよ。死んですぐにアイキャッチ流して流れを一気に断ち切るし素っ気ない。

ウッソの父親は戦艦が特攻するのを決めたら逃げ出そうとしている最中で戦艦内で死んでたって事かな。それだと改めて戦艦が特攻している時にウッソの父親の勇ましい幻影で登場するのおかしいんだよな。なんなんこれ。

たくさん人が死にましたけどオデロさんが一番ショックでしたね。戦死する主要人物の大半は大人だし、死ぬ覚悟は全員にあったろうと思うが、子供が戦死するのは悲し過ぎた。子供の戦死は境界を越えてるから、これはやり過ぎだよね。

シュラク隊の全滅は意地悪だったね、カテジナの生々しさもあって流石に女性嫌悪に罹ってると思わざる得ないなぁ。だからこそ長所なんだろうけどさ、まぁ凄かったよ。
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