あらゆる選択の可能性から自分を見つめてみても、今の自分が1番惨めに思う主人公。
ではそんな自分を他の可能性の自分が見たらどう思うか。
いつだって今の自分を取り巻く環境は他の誰かにとっては貴重で輝きのある環境だ。その環境を自分が生かすも殺すも自分次第なのだ。
自分から湧き出る感情に蓋をすることなかれ。殻に籠る自分をこれで良しと満足することなかれ。
そうして自分だけに許された今の可能性を最大限に謳歌してやることが、人生にバラ色を挿す唯一の手段なのだ。
そう[好気はいつも、そこにぶら下がっている]のだから。
このアニメから学んだバイタリティというか、心の持ちよう。みたいなところはこんなところか。
周りの環境に振り回され最後の最後まで自分の環境を呪う主人公の願い、[あの時の選択さえ間違ってなければもっと違う薔薇色の人生が自分にもあっただろう]という思いをことごとく砕いていく11話だった。
結局どんな選択をしても自分から指針を示し行動する力がなければ同じ結末に収束してしまうもんなんだ。ってことを嫌と言うほど思い知らされる。逆にどんな世界であれ自分に興味関心を示しバラ色の生活へと導いてくれる人がいるというのもこの作品の良さだった。
つまりはどのタイミングをとったって自分とは無数の選択を日々迫られていて、その選択肢ごとに幸福度のようなものを決めがちだが、重要なのはそこではないのだ。
あらゆる選択肢は自分の頑張り方を決めるだけで、その選択肢が合っていたのか間違っていたのか、はたまた幸せなのか不幸せなのかは、選択肢を選んだ後自分が作り上げていくものなのだ。
そういったメッセージがこの作品にはある気がする。
とにもかくにも11話の間同じ人物のパラレルワールドを見せられる視聴者の気持ちはいささか退屈である。一気見しようとするならなおのこと。
1〜10話の自分を一気に振り返る11話の話は多少見応えがあったものの、構想自体は10話までと全く同じものだ。
さて、ではこの作品の人気を支えたものは何か。それは[言葉]だ。これでもかと敷き詰められる言葉の羅列、その早口になぜか脳が反応させられる。ともすればオタク口調と言われるこの早口がスラスラと頭に入ってくるのだ。そしてこの言葉のなんと噛みやすく咀嚼しやすいことか。圧倒的文字量で脳がパンクになるかと思いきや、脳出力80%でギリギリ咀嚼できるような、気持ちいいところで作品を鑑賞できる。これがアニメで表現できるのだから湯浅政明監督は末恐ろしい。
原作は小説ということだが、自分のペースで読むのと強制的に早いペースで頭にぶち込まれるのと、どちらに軍配が上がるかみものだ。
総評
同じ系列の作品で夜は短し歩けよ乙女という作品がある。圧倒的にこの[四畳半神話大系]を視聴してから観ることをお勧めする。
四畳半神話大系で描かれた主人公とヒロイン。これをヒロイン視点で楽しむことができる作品が夜は短し歩けよ乙女だ。この作品はパラレルワールドをいくつも渡るという性質上、キャラクターのバックボーンを事細かに知ることができる。夜は短し歩けよ乙女はそういったキャラごとのバックボーンを知った状態で見ることが良い。
さて総評だが、絵柄は新規性抜群。夜は短し歩けよ乙女と同様、キャラクターの感情がそのまま絵に現れるような工夫があり良い。それにパラレルワールドを繰り返すことでキャラクターのバックボーンが次々に明かされていき作品の厚みが増していく構造も面白い。シュタインズゲートなどにも全く同じことが言える。
だがしかし、退屈だ。
主人公の成長が10話まで一切見られないことが致命的すぎる。
まるで涼宮ハルヒの憂鬱[エンドレス8]を彷彿とさせる内容だ。
早口口調による多少強引だが頭に差さる言葉がこの作品の生命線を支えてしまっている。本来言葉はストーリーを飾りつけるものであるべきなのに、、、
よく言えばあらゆる側面からキャラクターを観ることで、同じ話を見ているのに厚みが出てきて面白い作品。
悪く言えば種まきに時間を使い過ぎてしまった作品。
3.4点