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バッド・バッチのTenKasSのレビュー・感想・評価

バッド・バッチ(2021年製作のアニメ)
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クローンウォーズSeason8ではなくバッドバッチ。
遺伝子的に改良されたクローントルーパー小隊「クローン・フォース99」の「戦後」のお話で、観る前はスターウォーズ版の『攻殻機動隊』みたいになるのかな?と勝手に思ってたけど特にそんなこともなく。

登場人物はそれぞれ個性的で親しみやすく、アニメーションの質も非常に高いし、スピンオフとしてのファンサービス的楽しさにも、気の利いているものが多い。
1話のアバンタイトルからの気合の入り方は嬉しい。

ディズニーのシークェル惨敗後、評価がうなぎ登りのデイブ・フィローニだが、どの作品でも似たようなモチーフ使いと引用、物語の進め方をしている印象なので、どこかでもっとラディカルなものを観てみたくはある。
(恐らく、スターウォーズとして最低限のトンマナを、登場人物の師弟または疑似親子関係、時代劇、西部劇はじめジャンル映画の引用という部分に設定しているのだろう。今回のキャド・ベインとハンターの早撃ち対決は、実現しなかったシーズン6の雪辱戦の趣が強いが、またこれ?とも思った。)

共和国が帝国に成り代わり、クローントルーパーからストームトルーパーに置き換わる経緯が一応語られるが、帝国の政治的判断がどう為されているのかという詳細な描写はそれほどないので、その理由はあまり判然としてこなかったように思う。
クローン製造開始から、たかだか10数年でオリジナルの遺伝子データは劣化してしまったようで、コストはかかるし、銀河全土の統治をまかなうには、数的にもクローンでは不十分らしい。
製造過程次第で何でも言うことをきかせられるうえ、ジェダイさえ虐殺できる優秀な兵士を無尽蔵に作れるのなら、いきなり切って捨てずとも、いくらでも利用価値があるように思える。
途中から徴兵されたトルーパーが出てくるので、劇中時間はかなり経っているようではあるけど…
とはいえカミーノアンからクローン技術だけを奪いたいという皇帝陛下のお考えなのでしょう…(これこのまま『夜明け』に繋がりますか…?)

ただ、この帝国の理不尽さをちょっとメタ的な視点で読むのなら、ディズニーのルーカスフィルム買収で成り代わった新たな上司によって、問答無用でクローンウォーズ含めその後の計画が停止させられたという経緯を、作劇に盛り込んだのだとも解釈できそう。

これからも新たなトルーパーたち(作品)を作ろうと思っていた工場(スタジオ)が理不尽にも占領、破壊され、党首(シークェルにアイデアを出し大筋で採用されると言われたのに蚊帳の外に置かれたジョージ・ルーカス)もろとも排除された末、帝国(ディズニー)に技術だけを奪われるカミーノの顛末には、有無を言わさずレジェンズとされ、一方的に搾取された過去の小説等の創作の姿はじめ、買収後にごたつくルーカスフィルムの内情を思わずにはいられなかった。

ただとりあえずこのシリーズはまだ続くらしい。

MVPはどの言語も吹き替え版はもともとトルーパー役の人であることは間違いない。日本版は金田明夫氏の名前がエンドロール一画面全部という回もあるくらいで、スターウォーズファンは彼に足を向けては寝られない状態。
次も『ブック・オブ・ボバ・フェット』で長丁場だと思うので、どうか無理をしないでほしい。
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