ひろくん

平家物語のひろくんのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
2.5
非常に残念な作品だった。要所要所を抑えつつストレートに結末に向かい、その端々でそれなりに魅力的な画作りをする。これだけのことにどれだけの意味があるのだろうか。丁寧に人物造形をするような意図も感じられず、終盤にかけて特に出てくる意味の感じられないキャラクターが頻出し、スピーディに、しかし全くエレガントでなく物語が進み終わった、という印象。
重盛が死ぬまでは良かった。というかここまでをこれだけの尺で描くなら最低でも2クールはこの後には要しただろう。一つ一つの人物の描写が不十分で、そのため得られる感慨も平板になっている。特に気になるのは最終話での後白河法皇に対する徳子の態度。息子が死ぬ遠因となった人物が目の前にいてその人間にあのような対応を行うというにはそれなりの説明が必要だろう。徳子がこの状況を受け入れるに至る説得的な何かが全く示されていない。少なくともそれを納得させるには短すぎる。後白河法皇はただ終盤のキーパーソンだからという程度の役割でここに来て徳子と話をし、彼らの淡泊さの背景には仏教の教えがあることが示唆され、大衆に平家の勃興を教える琵琶が描かれ……確かに最低限のロジックはある、が、まるで納得感はない。むしろ「その後」についてなど何も言わず、琵琶が弾き語りをする、それだけのほうが良い。
最低でも2クールはかけて描くべきだっただろう。まさか五本の弦にかけて登場人物たちの声を重ねるだけでは、尺の短さに起因する決定的な説得力の欠如の埋め合わせにはならない。山田尚子の監督作品で一番つまらなかった。やらない方が良かった。
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