塔の上のカバンツェル

平家物語の塔の上のカバンツェルのネタバレレビュー・内容・結末

平家物語(2021年製作のアニメ)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

最終話を経てボロボロ泣いた。
大河ドラマ「鎌倉殿」と交互に観ていたので、週が変わるごとに平家許さねぇ…源氏許さん…と、心理状況がジェットコースターだった

鉛筆のようなタッチのアニメーションと、版画のような背景画は好みが振り切れてる。本当に好ましい。
フランスアニメのパリッとした絵本のようなタッチと対を成す日本的な表現として、これは一種の正解よなぁ…などと。


オープニングも個人的には大変に好き。
羊文学の「光るとき」をしばらく聴いている。

【追記】元カノに教えてもらったけど、「光るとき」のコード進行が575調(?)になってるんだとか。和歌…"祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。"のリズムに合わせているのかな?羊文学凄い。

本作にとって、人の生き死にのメタファーである"花"。
ナツツバキ…沙羅双樹の白い花が落ちていくことで人々の死を象徴していたわけだけど、最終話で散った花々の時間が戻っていく。想い出される平家の人々の平和な日々の想い出。

公式ファンブック『わたしたちが描いたアニメーション「平家物語」』内で、山田尚子監督が企画スタート後にキャラクター原案となる高野文子先生に手紙を送った際に、白い椿の花を添えたという。
この作品にとっての花というモチーフを象徴するエピソードだと思う。

最終話の白い彼岸花の花言葉は、「また会う日を楽しみに」。

そして、生き残った彼らが呟く、"祇園精舎の鐘の声"。

殺し殺され、許し赦された人々とびわが呟くその言葉が、"平家物語"の最初の一節に繋がっていく。

消えいく人々への無常感と、それでも生きた彼らの痕跡が紡がれていく、この作品に永遠に泣いている。

ずっと泣いている。



【参考文献】
「わたしたちが描いたアニメーション『平家物語』」株式会社河出書房新社